研究活動

先端分子医学研究部門
Advanced Molecular Medicine

先端分子医学研究部門は、難治疾患の病因・病態形成解明の基礎ならびに診断・予防・治療法開発の基盤を築くため、 最先端の分子生物学的・細胞生物学的・発生工学的・電気生理学的・光学的手法を駆使した研究を推進している。生体の恒常性機構が破綻した状態と考えられる 難治疾患の克服のためには、生活習慣や生活環境の多様化が著しい現代において、遺伝的要因と環境因子の双方から多角的・複合的なアプローチが必要である。 部門内の各分野においては、種々の異なる視点から細胞、器官、あるいは個体の恒常性維持と修復の分子基盤について、遺伝子や蛋白質の構造・機能から、 多細胞集合体である器官、さらには日々適応を求められる個体に至るまでの様々なレベルで取り組んでいる。本部門の研究で得られた成果をもとに、 今後増加することが予想される生活習慣病、骨粗鬆症、免疫疾患、神経疾患、循環器疾患、悪性腫瘍などの病因解明や新規治療法・予防法の確立に寄与したいと考えている。                        (部門長 田賀 哲也)

分子代謝医学分野 Molecular Medicine and Metabolism

ライフスタイルの欧米化に伴って肥満症、糖尿病、高血圧症、高脂血症、動脈硬化性疾患等の生活習慣病の罹患率は増加の一途を辿り、これらの克服は国民医療の観点からも極めて重要な課題です。分子代謝医学分野では、肥満、特に内臓脂肪型肥満を基盤として発症し、動脈硬化性疾患の前駆段階と位置づけられている代謝症候群(メタボリックシンドローム)の成因の解明と新しい治療戦略の確立を目指しています。脂肪細胞の増殖・分化の分子機構、脂肪組織に由来する生理活性物質(アディポサイトカイン)、核内受容体や転写共役因子に関する基礎研究と医学応用を通して、従来には例のない高齢化社会を迎えつつある我が国において、国民の健康、医療、福祉の向上に貢献します。

分子薬理学分野 Molecular Pharmacology

骨形成ならびに骨吸収を主軸とするカルシウム代謝調節の分子機構の解明により、骨粗鬆症をはじめとするカルシウム代謝異常疾患の治療及び予防法の確立に寄与する事を目的とする研究を行っている。 骨格組織は生体内の最大のカルシウムのstorage siteであり、その代謝は骨を形成する骨芽細胞系や骨の吸収を行う破骨細胞系の細胞群に加え間質細胞や軟骨細胞系の細胞などから構成される複合細胞社会により営まれている。 本分野ではこれらの各々の系列の細胞の発生、分化、機能調節機序、各々の細胞群間または細胞と細胞外基質間の相互作用やこれを担うサイトカインなどのシグナル分子並びに細胞外基質の生化学的、薬理学的特性等を分子生物・細胞生物学的手法を用いて明らかにし、これらの異常に基づく疾患の分子病態について解析している。

分子細胞生物学分野 Molecular Cell Biology

脊椎動物の形態形成、器官形成は、さまざまなシグナル分子が時間的空間的に細胞を誘導することにより成立する。 また、これら多くのシグナル分子の破綻が疾患の発症にも結びついている。 したがって発生・分化の制御するシグナル分子によるシグナル伝達ネットワークの解明は形態形成、器官形成機構、さらには疾患の発症機構を明らかにする上で重要課題となる。 本研究分野では発生過程における形態形成、器官形成を制御するシグナル伝達ネットワークの制御機構を中心に分子生物学的解析を進めている。

分子神経科学分野 Molecular Neuroscience

本分野の最終目標は、記憶・学習などの脳高次機能の分子、細胞レベルでのメカニズムの解明である。 現在そのために、複数電極により多点同時計測や光学的測定法を用い、脳の活動を計測することが行われている。 しかし、現在の方法は時間・空間分解能に限界があり、細胞レベルで高次機能を解析するためには不十分である。 そこで我々の研究室では、様々な遺伝子改変動物を駆使し、脳の神経活動と記憶・学習の対応関係を解析し、脳高次機能の分子・細胞レベルでの解明をめざす。

生体防御学分野 Biodefense Research

本分野は、生体の防御と恒常性維持に焦点をあて、それらを担う免疫細胞の分化や機能発現機構を正常および疾患病態において明らかにすることを目標としています。主として、粘膜関連リンパ組織や樹状細胞を研究対象として、免疫寛容誘導とその破綻の分子基盤、樹状細胞の分化経路や機能の解明に取り組むことで目的達成を図ります。また免疫系による造血幹細胞恒常性維持と破綻機構の研究にも取り組んでいます。さらに、それら成果に基づき、免疫疾患の予防・治療法の開発へ繋がる応用研究への糸口が得られるよう研究を推進していきます。

生体情報薬理学分野 Bio-informational Pharmacology

イオンチャネル・トランスポーターは受容体と並んで頻度の高い薬物のターゲット分子であり、今後もこれらをターゲットとした薬物の開発が期待される。 生体情報薬理分野ではイオンチャネル・トランスポーターを電気生理学・光学・生化学・バイオインフォマティクス・構造分析など多角的なアプローチにより解析し、特に難治性循環器疾患(突然死・不整脈・心不全・動脈硬化など)の病態解明と新たな治療戦略を確立し、臨床応用を実現することを目指しています。

幹細胞制御分野 Stem Cell Regulation

本分野は、生体内各組織の形成・維持・再生に重要な役割を果たす幹細胞に焦点をあてて、増殖分化因子群等を介した細胞外来性シグナルと、エピジェネティック修飾等に基づく細胞内在性プログラムなど多角的観点から幹細胞制御の分子基盤を明らかにすることを目標としています。主として中枢神経系や造血系などの正常組織特異的幹細胞や、腫瘍における幹細胞様細胞を研究対象として、その特性解析と、自己複製・分化誘導・移動・成熟の機構解明により目標達成を図ります。それにより、広く生体内の正常組織幹細胞や病態における幹細胞の普遍的な理解と応用研究への糸口が得られるよう研究を推進します。

プロジェクト研究室