分野長ご挨拶
脳神経病態学分野(脳神経内科)は、ヒトにとってそのアイデンティティを決定する最も大切な脳を含む神経・筋の疾患を扱う分野です。 その診療は問診と全身の神経診察からの情報が診断の中心となる内科の中でも最も内科らしい診療科です。
神経内科は頭痛・めまい・しびれ・ふらつき・物忘れなどの日常よくある症状の初期診療を行い、脳卒中(脳血管障害)、認知症、てんかんなどの頻度の多い疾患(コモンディジーズ)から、多発性硬化症などの神経免疫疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳変性症などの神経変性疾患を含む神経難病や、筋ジストロフィー症などの筋疾患など多岐に渡る疾患を担当しています。今後もこれらの神経内科の多種・多様な疾患を広くカバーし 、バランスのとれた良質の診療を提供していきます。
当科は初代塚越廣教授、2代目宮武正教授、3代目水澤英洋教授の時代を通じて臨床の充実を何よりも重視し、その研究は臨床から見出した問題点を解決する臨床問題解決型の研究を行って参りました。その結果、数々の世界トップクラスの研究成果を発信すると共に優れた人材を輩出してきました。今後もその姿勢を堅持していきつつ、さらに新時代の研究理念として、分子生物学・化学・神経科学などの基礎科学を出発点として疾患の病因究明・根本治療を目指す科学解決型の研究も併せて行っていきたいと思います。
研究科としては最も複雑で高度に分化した臓器である脳を対象とした神経科学を研究する一方、「リサーチユニバーシティ」として認定された東京医科歯科大学の中核として、研究成果を臨床へ応用するトランスレーショナルリサーチを実践していきます。21世紀は基礎科学と臨床医学が融合し、革新的治療の生まれる「治療の世紀」になるものと予測されます。内科の研究の最終目標の1つは創薬であり、次世代の治療戦略は単一分子を標的としたバイオ医薬の開発と細胞治療を含む再生医療であることは間違いありません。私どもは、次世代バイオ医薬開発を含めた神経疾患の新規治療でも社会に貢献していきたいと考えております。
本格的な少子高齢化社会を迎え、アルツハイマー病や脳卒中の診療の担い手となる神経内科医への期待はますます高まっております。時代の要請に応えるべく、「神経疾患の克服」を教室の目標として神経内科学を発展させていきたいと思います。
脳神経病態学分野(脳神経内科)教授
横田隆徳(よこたたかのり)