ロールモデルインタビュー

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立ち止まらず、走りながら考える癖をつけて

お名前:隈丸 加奈子(くままる かなこ)氏
家族構成:夫・子3人(6歳・4歳・2歳)
所属・職位:順天堂大学 医学部 放射線医学講座 准教授
研究内容:心臓CTと、ICT活用(診療支援システムなど)
上司:青木 茂樹 先生(研究支援員配備研究者)
所属・職位:順天堂大学 医学部 放射線医学講座 教授

インタビュー:2017年12月26日

隈丸 加奈子(くままる かなこ)氏

左:青木氏  右:隈丸氏

研究者になろうと思ったきっかけを教えてください。

隈丸)「研究者」より「医師」の意識が強いほうかと思いますが、日々の診療の中で疑問に思ったことを積極的に解決しようとする意味では、「研究者」というポジションでもあるように思えます。研修医のときから青木先生のご指導のもと、あたり前のように「研究」が近くにあり、自然と、新しいものや疑問があるものに対しては、解決に向けて自分で取り組む姿勢が身につきました。

隈丸 加奈子(くままる かなこ)氏

研究を続けてよかったと思う瞬間はどんなときですか。

隈丸)もっと医療がよくなるかも、と思えるテーマや結果に出会えた瞬間です。冠動脈は、今までは入院して動脈に太いカテーテルという管を入れなければ検査できませんでしたが、心臓CTの登場で圧倒的に簡便に検査できるようになりました。日進月歩である医療のなかで、もっと役に立つかもと思えることを考え、その結果が出た瞬間は喜びもひとしおです。

ワーク・ライフ・バランスをとるために、意識していることを教えてください。

隈丸)優先順位を明確にすることと、周囲への感謝を忘れないことです。

そして、よほど緊急でない限りは、家では仕事をしないと決めています。

逆に家で仕事をやろうとすると大変なことになってしまうので、やらないと決めたほうが気持ちも楽ですね。研究に関しては自分の中で完結することなので、遅れても仕方ないと割り切れますが、一方で臨床はほかの先生に迷惑をかけてしまうこともあるので、日々、周囲に感謝の気持ちを伝えるようにしています。

DDユニットの「研究支援員配備」と「ファミリーサポート」の支援を受けようと思ったきっかけを教えてください。

隈丸)3人目が妊娠8カ月のときに留学先から帰国しましたが、いまの職場に就職して1年経っておらず、制度上、育休が取れなかったんです。それもあり産後8週で復帰しましたが、はじめは支援がなかったので、研究を進めることはほとんどできませんでした。3人目が6カ月のときにDDユニットの支援を知り応募。2人の方に週8時間ずつ支援いただけるようになり、研究効率が格段に上がりました。

研究支援員配備について、今現在、支援をお願いしている内容をお聞かせください。

隈丸)これまで計3人の方に支援をお願いしましたが、それぞれの能力と興味に応じて内容を決めています。現在の研究支援員は、Rなどの統計ソフトウェアを使いこなせるデータ分析能力の高い人ですので、解析対象のビッグデータから必要な情報を切り出して整理して一つのファイルにし、ある程度の基礎統計分析までお願いしています。

ファミリーサポートはどのように利用していますか。

隈丸)週1回、長男に関して保育園から習い事先までの送迎をお願いしています。

DDユニットの支援を受けて、どのような効果があったと感じますか。

隈丸)研究の進み具合が圧倒的に早くなり、論文や学会報告等の成果も多く出せるようになりました。

また、この方にはどのように支援していただくのがよいかを考えて仕事を割り振るので、マネジメント能力も上がったと思います。

一方で、支援を受けると同時に、支援員の方には、研究の楽しさや、子育てとの両立ができるのだということを知ってほしいという思いがあります。ですから、なるべく楽しいと思えることを手伝ってもらうよう心がけています。これまで支援していただいた3人のうち2人はその後博士になり、研究を続けているのは、とてもうれしいことです。

上司である青木先生は、支援の効果をどのように感じていますか。

青木)隈丸先生は、研究支援員の配属を最大限に利用し、支援員の名前を入れた査読のある英文論文を複数発表しました。文献検索、資料整理などをうまく頼み、研究の効率が上がっているようです。一方で、支援員は私が教えていた修士の学生ですが、学生にとってもよい経験になったと思います。あまり難しいことをやらせようとすると、教えるより自分でやったほうが早い、となりますが、その辺は、隈丸先生がうまくマネジメントされていました。

隈丸 加奈子(くままる かなこ)氏

講座で行っている研究に関する効果的な取り組みなどがあれば教えてください。

青木)別途、研究補助員(他大学・大学院生含む)を複数雇用し、研究能力のある人を支援しています。医師免許がなくてもできることは、できるだけほかの人にサポートしてもらえる体制がよいと考えています。

放射線診断学講座としての女性研究者支援に関する特長や特色等、そして今後目指すあり方について教えてください。

青木)放射線診断の主な仕事であるCT、MRIの読影はどこでもできるので、場合によっては出勤時間の調整や自宅での読影が可能です。急な休みや、時間がないときにも対応しやすく、これから遠隔診療も広がっていく分野だと考えます。放射線学会としてはそれをうまく利用して、ICTを活用してどこでも読影できるよう、セキュリティ、法律面などクリアしながら環境を整えていきたいです。

できるだけ自由な働き方ができるようになれば、育児しながら働くという意味でも、メリットが大きいです。実際に自宅での読影も増えてきています。自宅でできる仕事があるというのは、とくに女性にとっては有効なのではと思います。

たとえば、10時から16時までは病院で勤務し、あとの2時間は自宅で作業するという人を常勤できたら、働き方の幅が大きく変わってくるのではないでしょうか。その時間の割合については、まだ厳しく規定されていて自由がききません。そのあたりがもう少し柔軟になれば、さらに働きやすくなるかなと思います。

放射線科は高性能な機械も増えたことで忙しくなってきています。忙しく、放射線科医を希望する人が少なくなるスパイラルから抜け出すためには、やはり遠隔診療を可能とすることが今後重要です。働き方を選べるというのはどんな仕事でも大きいですし、放射線科が先駆けて遠隔診療の一端として遠隔読影をやることで、今後きっとよりよい人材が入ってくるのではと期待しています。

後輩へのメッセージがありましたらお聞かせください。

隈丸)女性はマルチタスクで大変ですので、立ち止まってしまうと、重みに耐えきれず再び走りだせない、ということが多々あります。走りながら考えていける癖をつけるといいですね。未熟でも進みながらやっていくと、結果が後でついてきたり、実力がついてきたりするので、とりあえず止まらずにやるのが大事かなと思います。最近の若い女医の方の話を聞くと、女性が出産しながら働くのが大変だという話が先行しすぎていて、「将来は非常勤でいい」と早い段階で決めてしまっている方がいますが、早い段階から天井を決めてしまってはもったいないです。なんとかなる、ということをぜひ伝えたいですね。

青木)コツコツと研究を続けていくと必ずよいことがあるので、がんばってください。

1日のタイムスケジュール

6:30 起床
7:45〜8:00 家を出る
8:15 保育園へ
9:00 病院着
17:15 病院を出る
18:00 お迎え
18:30 帰宅
20:30〜21:00 子ども寝かしつけ、家事
23:00 就寝

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