ロールモデルインタビュー

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深く考えすぎず一歩踏み出してみると案外なんとかなるもの

お名前:加来 祐子(かく ゆうこ)氏
家族構成:夫、長男(8歳)、次男(4歳)
所属・職位:株式会社ニッピ バイオマトリックス研究所 課長
研究内容:CHO細胞における組換え蛋白質生産性の向上に関する研究

インタビュー:2016年1月27日

研究者になろうと思ったきっかけをお聞かせください。

高校生のとき、白衣を着た研究者が出ている科学番組を偶然見て、「おもしろそう!」と思ったことがきっかけでした。そのときは「研究者になる」とまではイメージできていませんでしたが、農学部に入学後、研究の道があることを知り、自然とその道にも興味が湧いてきたように思います。

でも博士課程までは進まず、修士課程修了後、今も務める株式会社ニッピに入社しました。アカデミックに仕事を進めるよりも、商品開発のように技術を具体的な「物」にするほうが、自分には合っているのではと思ったからです。

加来 祐子(かく ゆうこ)氏

入社してからどんな仕事に携わったのですか?

1995年に入社後すぐに動物衛生研究所に出向し、狂牛病(BSE)の病原体に対する抗体を作る仕事に携わることになりました。当時の日本ではまだBSEが話題になることはなかったのですが、その頃からすでにBSEを心配している人たちが社内におり、BSEの数少ない研究機関でもあった動物衛生研究所に行って勉強してこいと言われたわけです。

その後、2001年に日本でもBSEの疑いのある牛が発見されます。そこで、私たちが行っていた基礎研究の中でとれた抗体を使って、検査キットを作りましょうという話になり、会社と研究所を行ったり来たりしながら「ニッピブルBSE検査キット®」を開発しました。開発に至るまでは苦労もたくさんありましたが、2012年に「産学官連携功労者表彰」の農林水産大臣賞をいただけたことは、今でも大きな財産となっています。

現在は、CHO細胞について3年ほど研究を続けています。

加来 祐子(かく ゆうこ)氏

34歳でご結婚されていますが、もともとイメージはありましたか?

「まあ、そのうちに」と呑気なことを言っていたら、周りがあれよあれよと結婚していって、もうそういう年齢なのかとハッと気がついた節があります。

夫とはもともと知り合いで、同じ研究者ということもあり意気投合しました。たまたま自分の家族の海外赴任が決まり、結婚するならその前にという話になるなどタイミングが重なったのも後押しになりましたね。

出産に関しても割と呑気に構えていたのですが、婦人科で「あなたの年齢では急がないとダメ」と言われたことが現実的に考えるきっかけにもなりました。ちょうどその時期はキットの開発が落ち着いた頃だったので、出産にも前向きな気持ちになれたのもあります。

結婚、出産、介護などのライフイベントと研究の両立は、どのようなところが大変ですか。
また、その両立の難しさをどのように乗り越えましたか。

子どもは自分でどんどん成長してくれるのですが、病気になると親の出番となるので、家族の健康維持が一番大切だと思います。気をつけていても突発的な病気は避けられないので、その対応がやはり大変ですね。

次男が約1カ月入院しなくてはならなくなったときには、会社に介護休暇を認めていただきました。周囲の方々のたくさんの助けがあってこそ、仕事を続けられていると思います。

また、私も主人も早くに母を亡くしていて、互いの両親の助けが得られないという前提があり、夫婦二人でやっていくしかありませんでした。「何かあれば自分も休まなくてはいけない」という覚悟は、私よりも夫のほうが強かったと思います。夫の協力なしではとても仕事は続けらなかったですね。

それから、保育園が急な延長などに柔軟に対応してくださるので、本当に助かっています。そういった意味では、保育園選びは本当に重要です。子どもが通う保育園は認可外ですが、学童も併設されています。小学校にお迎えに行ってくださるので、お迎えが一度で済むのはありがたいですね。

組織内の支援制度は使いましたか?

社内では、産休、育休はもちろん、復帰後の短縮勤務や子の看病のための介護休暇を認めていただきました。研究所のスタッフで出産・育児中の方はそれまでに1人しかおらず、ロールモデルが少なかったのは少し大変だったかもしれません。ただ聞いた話だと、その先輩は前例がなかったため特例的な形で認められたりなどさらに大変だったようです。そう考えると、社会の制度は整ってきていますし、女性にとって働きやすくなってきていると思います。

研究をあきらめず、続けてよかったと感じるのはどんなときですか。

正直なところ、1人目の育休が明ける寸前は、ずっとこのまま子どもと一緒にいたいとも思っていました。ちょうど1歳で歩き始めて、これからいろんなことができるようになる瞬間に立ち会えないなんて、とすごくブルーになったのです。でも、いざ会社に来ると自分の時間があり、研究ができるってやっぱり素敵だと思い、すぐにそのブルーな気持ちも吹っ飛びました。もちろん、子育てに真剣に向き合って専業でやっているお母さんもすごいなと思いますが、自分は、子どもと一緒にいる時間だけでなく、仕事をしている時間もないとバランスが保てなかったかなと思います。

両立を続けて変わったことはどんなことですか?

仕事の仕方が変わりましたね。産前は「今日はここまでやろう」と残業もいとわずやっていましたが、今はお迎えがあるから残業はできません。細切れにしか仕事を進められないことに、復帰当初はかなりストレスを感じました。でもその分、効率的に仕事を進めるようになったかなと思います。無駄なことをしないようになったのはよかったですね。

今後の目標をお聞かせください。

私はDDユニットの「女性研究者支援制度」を利用させていただいており、研究を続けています。こういった制度を通して女性研究者の活躍の場が広がればうれしいですね。

私自身、長男を出産して3年ほど経った後、ありがたいことに課長を拝命しまして、これまでとはまた違った形での仕事もさせていただくようになりました。今は日々を回すので精一杯というのも正直なところですが、少しでも余裕を持って仕事も家のこともやり、女性研究者の育成のためにも自分の経験を還元していけたらと思っています。

両立を考えている研究者、研究者を目指している方へメッセージをお願いします。

結婚、出産を考えていても、「この仕事の山場を乗り越えてからじゃないと…」と先送りにしている方もいらっしゃるのではないでしょうか。たしかに家事をして子育てをして、今まで通りの働き方を続ける、というのは大変です。おそらく「今まで通り」は無理ですが、やってみればなんとかなるものです。あまり考え過ぎず、「とりあえずやってみる!」のをオススメしたいと思います。

そして、組織内の支援制度などもよく確認してみてください。当社でも、安心して両立できるような体制を少しずつ整えているところです。私も1ユーザーとして、今後もいろいろ活用させていただきたいなと思っています。

1日のタイムスケジュール

6:00 起床
7:30 長男小学校へ
8:00 次男と一緒に家を出て、保育園へ
9:00 出社
17:30 退社
18:00 保育園へお迎え
19:00 帰宅
20:00 夕食
21:00 お風呂
21:30〜 子ども寝かしつけ 余裕があれば、起きて家事。そのまま一緒に寝てしまうことも。

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