得意とする分野

顔面骨骨折

「骨折」と言うと整形外科を思い浮かべる方が多いですが、顔の骨折は形成外科で診断・治療を行います。骨折の部位により治療方針が異なり、①鼻骨骨折・鼻篩骨骨折、②頬骨骨折・頬骨弓骨折、③眼窩底骨折、④上顎骨骨折、⑤下顎骨骨折、⑥前頭骨骨折に分類されます。これらが複数組み合わさる場合もあります。また顔面・頭蓋(ずがい、とうがい)は多くの骨の組み合わせからなるため、骨折の部位・症状によって眼科・耳鼻科・脳外科・歯科と協力して治療を行うことがあります。診断は問診・診察と検査(レントゲン写真、CT、MRI)を組み合わせて行います。

治療の中心は手術による整復・固定(ずれた骨を戻して固定すること)で、骨折による症状(「口が開けにくい」「物がだぶって見える」等)や見た目の変化が受け入れがたい場合や、治療を行わないと症状に改善の見込みがない場合に、手術の対象となります。逆に骨折があってもずれが小さかったり、症状がなければ、手術しないこともあります。多くの場合、ずれた骨が再癒合し始める前(受傷後4-10日前後)に手術を行います。手術は一部の軽症例を除いて全身麻酔で行います。入院期間は骨折の種類・程度によるので、各項目を参照して下さい。

手術の際の皮膚切開には出来るだけ傷跡が残りにくい切開線を選ぶよう、工夫しています。多くの場合、骨の固定のためにプレートとネジを使用します。通常、金属製(チタン)を用いますが、最近では数か月で体内に吸収される吸収性プレートを使用することも可能です。チタン製プレートはトラブルや希望がない限り、原則的に抜去不要です。通常の使用量では空港の金属探知機に反応することはありません。また、チタンは非磁性金属なのでMRIの撮影自体は可能ですが、アーチファクト(ノイズのようなもの)を起こすためプレート周辺の組織の評価が難しくなることがあります。

骨折ごとの症状、診断・治療方針、手術方法

鼻骨骨折・鼻篩骨骨折

鼻骨骨折(びこつ)

鼻の骨は薄いため「鼻を殴られた」等、比較的弱い力でも骨折します。①鼻血、②鼻すじが曲がる(斜鼻、しゃび)、③鼻が低くなる(鞍鼻、あんび)、④鼻が詰まる(鼻閉、びへい)といった症状が現れます。骨折の診断自体はレントゲン写真で可能ですが、折れ方を評価するためにCTを撮影する場合があります。

鼻血や鼻閉は腫れが引けば治まるので、手術するかどうかは鼻の変形の程度で決まります。逆に見た目を気にしない場合は手術の対象になりません。鼻骨は薄く再癒合しやすいので、受傷後4-10日前後に手術を行います。手術では皮膚を切らず(表面に傷を残しません)、鼻の穴に器械を入れてずれた骨を元に戻します。手術時間は10分程度です。通常は全身麻酔で行い、入院期間は3-7日前後です。受傷後すぐに受診した場合や、入院できない場合は局所麻酔で手術することも可能ですが、整復が不十分になる可能性があります。術後は数日間、ガーゼで出来た鼻栓を入れ、2週間程度、専用のギプスを当てておきます。

鼻篩骨骨折(びしこつ)

鼻骨と同時に眉間やその奥の骨が折れた場合は、症状・治療方針・手術方法が異なります。「顔をハンドルで強打した」等、強い力が加わった時に起こります。鼻骨骨折の症状に加えて、①目がくぼむ(眼球陥没、がんきゅうかんぼつ)、②両目の距離が離れる(眼角隔離、がんかくかくり)、③涙が止まらない(流涙、りゅうるい)といった症状が現れます。場合によっては頭蓋底(ずがいてい、脳を支える骨)に骨折が及ぶこともあります。治療方針・手術方法は骨折の部位、症状によって異なりますので、ご相談下さい。

頬骨骨折・頬骨弓骨折

頬骨骨折(きょうこつ)

ほおの高まりを形成する骨の骨折で「転倒した」等、比較的強い力で起こります。通常、2-3か所が同時に折れて骨がずれます。①ほおの平坦化、②口が開けにくい(開口障害)、③物がだぶって見える(複視、ふくし)、④目がくぼむ(眼球陥没、がんきゅうかんぼつ)、⑤ほお・上唇・歯茎のしびれといった症状が現れます。レントゲン写真とCTで診断を行います。

手術するかどうかは症状の程度で決まります。受傷後4-10日前後に手術を行います。手術は全身麻酔で行い、下まぶた・眉毛部・口内の3か所(もしくはそのうち1-2か所)を切開してずれた骨を整復し、プレートで固定します。手術時間は2時間程度で、入院期間は1週間前後です。複視・しびれの回復には数週間~数か月かかります。

頬骨弓骨折(きょうこつきゅう)

頬骨骨折のうち、頬骨弓と呼ばれる部分だけが折れた場合は症状・治療方針・手術方法が異なります。主な症状は①口が開けにくい(開口障害)ことで、その他、②耳の前のへこみが生じます。レントゲン写真やCTで診断を行います。

手術するかどうかは症状の程度で決まります。受傷後4-10日前後に手術を行います。手術は全身麻酔・局所麻酔どちらでも行えます。頭髪内を1-2cm切開して器械を挿入し、落ち込んだ骨を下から持ち上げます。プレート固定は行いません。手術時間は30分程度です。入院期間は3-7日前後です。目立つ部分に傷跡を残さず手術できますが、プレートで固定しないので比較的弱い力で再骨折を起こす可能性があります。

眼窩底骨折(がんかてい)

「ブローアウト骨折」とも呼ばれます。眼を下から支える薄い骨の骨折で「眼を殴られた」等、眼球に衝撃が加わることで起こります。眼の周りの脂肪や眼を動かす筋肉が下にある上顎洞(じょうがくどう)という空間に落ち込むため、①物がだぶって見える(複視、ふくし)、②目がくぼむ(眼球陥没、がんきゅうかんぼつ)、③ほお・上唇・歯茎のしびれといった症状が現れます。CTやMRIで診断を行います。

手術するかどうかは眼球陥没の有無と複視の程度で判断します。眼球陥没がある場合は原則的に手術の対象になります。複視は腫れが引くに従って改善する場合も多いので、数週間様子を見てから、改善がない場合に手術を行います。例外的に骨折部に眼を動かす筋肉が挟み込まれてしまった場合は緊急手術になります。手術は全身麻酔で行い、下まぶたや口内を切開して骨折線を確認し、落ち込んだ眼の周りの組織を元の場所に戻します。眼窩底の骨の欠損が大きい場合は再び眼窩内容が落ち込まないように、自分の骨や軟骨を移植して、眼窩底を作り直します。眼窩底の骨は粉々になっていることが多く、折れた骨どうしをプレートで固定することは困難です。手術時間は骨や軟骨の移植が必要な場合、3-4時間です。入院期間は1週間前後です。複視の改善には数週間~数か月かかります。

上顎骨骨折(じょうがくこつ)

「上アゴ」の骨の骨折で「バイクで走行中に転倒する」等、かなり強い力で起こります。多くの場合、上アゴを左右に横断するように骨折線が生じます。①かみ合わせのずれ(咬合不全、こうごうふぜん)、②顔面の平坦化が主な症状ですが、骨折が頬骨に及ぶと、②口が開けにくい(開口障害)、③物がだぶって見える(複視、ふくし)、④目がくぼむ(眼球陥没、がんきゅうかんぼつ)、⑤ほお・上唇・歯茎のしびれといった症状が現れます。まれに骨折が頭蓋底(ずがいてい、脳を支える骨)に及ぶこともあります。レントゲン写真とCTで診断を行います。

手術するかどうかは症状の程度で決まります。治療の主な目的は元のかみ合わせに戻すことです。骨やかみ合わせのずれが小さい場合は手術を行わず、顎間固定(がっかんこてい、上アゴと下アゴをゴムやワイヤーで固定する)を行って骨の再癒合を数週間待ちます。ずれが大きい場合は手術の対象になります。可能なら手術前から顎間固定を行い、受傷後4-10日前後に手術を行います。手術は全身麻酔で行い、主に左右の下まぶた・口内を切開してずれた骨を整復し、プレートで固定します。手術時間は骨折の部位によりますが、3-4時間程度です。術後も骨が再癒合するまで1か月前後、顎間固定を行います。顎間固定中は口を開けられませんが、しゃべることは可能です。その間、食事は流動食です。顎間固定での生活に慣れたら退院できます。手術だけでかみ合わせが十分に戻らない場合は、歯科矯正を行うこともあります。

下顎骨骨折(かがくこつ)

「下アゴ」の骨の骨折で「階段から転落する」等、比較的強い力で起こります。①かみ合わせのずれ(咬合不全、こうごうふぜん)、②口が開けにくい(開口障害)、③下アゴの変形、④唇や下アゴのしびれといった症状が現れます。レントゲン写真やCTで診断を行います。

手術するかどうかは症状の程度で決まります。治療の主な目的は元のかみ合わせに戻すことです。骨やかみ合わせのずれが小さい場合は手術を行わず、顎間固定(がっかんこてい、上アゴと下アゴをゴムやワイヤーで固定する)を行って骨の再癒合を数週間待ちます。ずれが大きい場合は手術の対象になります。可能なら手術前から顎間固定を行い、受傷後4-10日前後に手術を行います。手術は全身麻酔で行い、主に口内を切開してずれた骨を整復し、プレートで固定します。手術時間は骨折線の数によりますが、2-3時間程度です。術後も骨が再癒合するまで1か月前後、顎間固定を行います。顎間固定中は口を開けられませんが、しゃべることは可能です。その間、食事は流動食です。顎間固定での生活に慣れたら退院できます。手術だけでかみ合わせが十分に戻らない場合は、歯科矯正を行うこともあります。

前頭骨骨折(ぜんとうこつ)

おでこの骨の骨折です。①おでこの陥没が主な症状ですが、骨折が眼の周りに及ぶと、②物がだぶって見える(複視、ふくし)、③上まぶたが下がる(眼瞼下垂、がんけんかすい)といった症状が現れます。さらに骨折が頭蓋底(ずがいてい、脳を支える骨)に及ぶと、④髄液が鼻から垂れてくる、⑤臭いを感じなくなるといった症状も現れます。主にCTで診断を行います。

治療方針・手術方法は骨折の部位、症状によって大きく異なりますので、ご相談下さい。多くの場合、頭髪内を切開して手術を行います。頭蓋底に骨折線が及ぶ場合は脳外科と合同で手術を行います。

陳旧性顔面骨骨折(ちんきゅうせいがんめんこつこっせつ)

受傷後1か月以上経ったような骨折では、ずれたまま再癒合した骨を整復するため骨を切って(骨切り、こつきり)動かす必要が生じます。この場合、受傷後2週間以内の骨折に比べて治療が難しくなり、手術時間・入院期間が長くなる傾向にあります。

顎変形症

先天的、けが、もしくは原因不明の上あご、下あごの変形を総称したもので、かみ合わせの問題に加え、美容的な要素も必要となります。形成外科では矯正歯科と協力して治療にあたります。

手術を行う場合には上下顎の骨切りや骨延長により、骨を正しい位置に移動させ、形や咬み合わせを正常にします。骨の移動だけでは、咬み合わせが正常にならないため、矯正歯科により術前、術後の歯列矯正を行います。

骨切り手術では、骨を移動後、骨どうしを金属製もしくは吸収性のネジやプレートで固定します。術後はゴム牽引を行い、柔らかいものを食べていただきます。

機能的、整容的に問題があって外科矯正手術を行う場合、保険適用になります。また、外科手術を前提とした歯列矯正も保険適用になる場合があります。

主な業績

  • Okazaki M, Haramoto U, Akizuki T, Kurakata M, Ohura N, Ohmori K. Avoiding Ectropion by Using the Mitek Anchor System for Flap Fixation to the Facial Bones. Ann Plast Surg 1998; 40: 169-173
  • Okazaki M, Akizuki T, Ohmori K. Medial canthoplasty with Mitek Anchor System. Ann Plast Surg 1997; 38: 124-128
  • Hata Y, Hosokawa K, Yano K, Matsuka K.Further Application of Supratrochlear Vessels to Facial Repair. Annals of Plastic Surgery 20: 89-95, 1988