得意とする分野

褥瘡

担当医師 田中顕太郎、森 弘樹
外来日 金曜日、火曜日

褥瘡とは

褥瘡とは主に身体の骨が突出した部位に「きず」を生じたもので、昔から「床ずれ」とも呼ばれ寝たきりの方によくみられます。

原因

長時間にわたって皮膚や皮下組織が自分の体の重さで圧迫されてしまい、局所の血流が遮断されて壊死してしまうことにあります。つまり同じ姿勢でずっといると圧迫されて血液が巡らなくなって皮膚がダメになってしまうということです。通常、局所の圧迫継続時間が2時間を超えると褥瘡が発生するとされています。仰向けの姿勢で長時間過ごしていると背中(肩甲骨)やお尻(仙骨)、踵などの骨突出部に生じます。また不適切な体位変換では腰や太もも(腸骨・大転子)にも多くみられます。脊髄損傷などの方で車椅子での生活時間が長い場合には、座っている姿勢のときに当たる坐骨部に発生します。老人性精神障害、老衰、脳血管障害、悪性腫瘍の終末期などに合併症としてよく見られますが、その他にもアルコール中毒や薬物中毒など意識を喪失して自分自身で体位変換が不可能な場合にはできる可能性がありますので、決して高齢者に限ったものではありません。

分類

傷の部分にスポンジを置き、専用の医療機器を用いて吸引します

褥瘡は深さによって表現されます。これにはいくつかの分類がありますが、以下の4型に分けると分かりやすいでしょう。

1度:皮膚の紅斑と硬結
2度:真皮におよぶ浅い潰瘍
3度:皮下組織におよぶ潰瘍
4度:筋を通過し骨突出部に達する深い潰瘍

比較的早期なものでは保存的に治癒しますが、進行したものでは筋肉や骨が露出し、なかなか治らない傷となります。しかし褥瘡の重症度は深さだけで決まるものではなく、大きさ、感染の有無、ポケット形成などの要素も関係します。そのため各項目による重症度の点数化の試みも行われています。

治療

  • 手術前

  • 手術後

一般的に1,2度までの浅い傷では、手術をすることなく局所の圧迫を除去して外用剤で治療します。しかしそれ以上の深い傷でも、原因となっている病気が進行性な場合、全身の状態が良くなくて手術に耐えられない場合、また手術後に十分な介護が受けられず再発が容易に予測される場合などにも保存的治療を選択します。

保存的治療を行う場合には様々な外用薬剤および創傷被覆材を使用します。これらの薬剤は種類も多くまたそれぞれの薬効も異なり、各時点での傷の状態に応じて最適なものを使い分けていく必要があります。形成外科医は創傷治療のスペシャリストであり、これらの薬剤の使用方法に習熟しています。

近年では、褥瘡などの難治性潰瘍に対して陰圧閉鎖療法という方法が注目されています。これは傷に常に陰圧をかけ続けることで創部の治癒能力を促進させるものです。以前は様々な医療材料を組み合わせることで持続吸引装置を作成してきましたが、2010年4月より専用の医療機器V.A.C.systemが我が国でも保険診療内で使用可能となりました。当院でもこれを導入し治療に活用しています。

3度以上の深さの褥瘡は患者さんの状態が許せば外科的治療を行います。つまり手術によって体の他の部分から組織を移動してきて傷をふさぐという方法です(下図)。

現在までに仙骨部、大転子部、坐骨部などの部位別に多くの手術方法が開発されています。当科ではこれらの手術手技に精通しておりますので、患者さんそれぞれの状態を総合的に判断して、最適と思われる手術方法を選択します。手術後も必要に応じてエアーフローティングベッドなどの特殊な医療機器を使用し、万全の術後管理を行っています。

保存的治療でも外科的治療でも、常に傷そのものだけを診るのではなく、全身状態や療養環境など大きな視点にたって治療を続けることが大切です。そのため合併症の治療や栄養状態の改善、日常ケアにも注意する必要があります。

また褥瘡は予防が大切です。例えば、2時間毎に規則的な体位変換を行うことや、エアーマットなどの適切な寝具を選択したりすることは重要です。このためには職種を超えた医療従事者間の連携が必要となります。当院では形成外科を中心として、皮膚科医師、看護師、栄養士、リハビリ療法士などによる褥瘡対策チームを作り、褥瘡発生予防、発生時の管理・評価、院内スタッフへの教育などを行っています。

主な業績

  • 田中顕太郎, 岡崎 睦. partⅠ老年症候群 9褥瘡. 病棟レジデント、病棟医のための高齢患者診療マニュアル. メディカルサイエンスインターナショナル. 2013, 69-78
  • 秦 維郎. 褥瘡「2」. 医学書院 医学大辞典. 医学書院 2003; 1196