教授からのメッセージ

教授からのメッセージ

はじめに

発生発達病態学分野(小児科学教室)水谷 修紀 教授
21世紀を迎え、日本における少子化は深刻さを増してきています。当然のことながら少ない子供を大切に育てることへの社会的要請はさらにいっそう高まることでしょう。このような新しい時代の流れのなかで東京医科歯科大学小児科はその社会的価値をますます高めつつあります。
本学小児科学教室は充実した連携病院との間で「御茶ノ水子ども医療総合ネットワーク」を形成し、日常的な小児医療から難病の高度で先端的な医療に至るまで幅広く小児医療に対応するとともに、臨床の中で生じる複雑な問題を生命科学の立場から深く掘り下げ、根本的に解決することをめざしています。ひとり一人の教室員が高い診療能力を身につけ、臨床医として立派に成長するとともに病気の本質を掘り下げ、その奥に潜む問題を根本的に解決する能力を培うことを最重要課題と考えています。

小児科医の育成、教育の環境と「御茶ノ水子ども医療総合ネットワーク」

本教室においては小児科医としての基本的な診療能力の育成とそれを切磋琢磨し、教室員一人一人の能力を存分に引き出すことができる環境作りを大切だと考えています。

幸い院内における教育スタッフは大変優秀で、人間的にも魅力の溢れる人材を揃えています。

近年小児医療の高度化や国民ニーズの高まりから小児科医への負担の増加が懸念されています。我々は小児科の常勤枠として10名規模の定員を有する10の小児医療施設と連携し「御茶ノ水子ども医療総合ネットワーク」を形成しています。これらの施設には熟練した小児科専門医、指導医を配置し、その医療内容の充実がはかられています。また、これによってお互いの教育機能の強化を実現することも可能になりました。ネットワークに参加できる施設は質の高い医療内容を誇り、勤務医へも十分な配慮を払う施設であり、適切な労働環境を提供することを重視しています。若い小児科医は大学病院と「御茶ノ水子ども医療総合ネットワーク」の中を循環することで多くの指導者にめぐり会い、数多くの経験をつむことができ、このことは優秀な小児科医を輩出する原動力になっています。本ネットワークに属するたくさんの病院において若い教室員が充実した教育を受けているのです。

この医療ネットワークを更に充実させるために定期的なネットワーク部医長会議を開催し、その中で各病院の特色を生かし、また教室員の希望と目標をどのようにして保証するかを議論し、それに基づいた研修プログラム等も作成されています。

医師・研究者の育成 ―人生をかけて問い続けることの大切さを学ぶ―

現代医学の一つの大きな流れとして単なる経験主義から根拠に基づく医学、父権的な医療から患者中心の医療があげられるかと思います。根拠に基づく医学の展開においては単に個々人の経験の中にとどまることなくさらにそれを演繹する形で大きな臨床研究を組みあげそこに参加し、その成果をまた個々人の経験の中に還元していくことが大切です。

連携病院間ネットワークとともに疾患を中心テーマとした全国規模のスタディーグループネットワークの構築とそれへの参加が求められます。これは父権的な医療から脱却し、受療者が最善で十分な根拠に基づいた医療を受ける権利を保証するための新しい動きとして注目されています。私たちは現状に満足することなく、常によりよい医療を提供しなければならない立場に置かれているのです。

その一方で医学における画期的な発見は個々人の個人的な疑問や発想の展開によってなされて来たことは歴史を振り返ると明らかです。Lesch-Nyhan病は医学生であったLesch先生のふとした疑問から発見されました。このように個々人の経験の中で巡り会った幾つかの重要な疑問を“人生をかけて”問い続ける姿勢を非常に大切なものと考えています。この目的に向けて本教室では「生命研究室」においてお互いのオリジナリティーを尊重しながら生命現象の解明と疾患治療への応用をめざした研究を進めています。

小児医療を取り巻く社会状況と多様な医師像

小児医療を取り巻く日本の社会の状況は必ずしも良好とは言えません。私達が本当に子どものいのちや生活の大切さを考えるなら、そのような考えをもった医師や研究者が幅広くいろんな分野で活躍することが大切です。臨床の第一線で活躍する医師、その経験をもとに研究会等を組織しリーダー的な役割を果たす医師、子どもの難病治療のために生命現象の謎に挑戦する研究者、また医療のあり方を厚生行政の立場からよりよいものに変えていこうとする医師、これらはすべて子どものいのちや幸せを守る上で必要な人たちです。このように子どものいのちと生活を何よりも大切に思う気持ちを共有する人たちが幅広い分野で活躍することが大切です。このような多様な人材を輩出することが医科歯科大学小児科ならびに「御茶ノ水子ども医療総合ネットワーク」の目標であり、社会的、歴史的使命であると考えています。

一人の人間として

人を愛する心、お互いの人生を認め、大切にする心、困った人がいたら助けてあげようと思う気持ち、これらはすべからく人生において大切なものです。一人の人間としてその基本的なものをいつまでも忘れなければ、皆さんの医師/医学研究者としての人生もすばらしいものになると思います。建設的な生き方を大切に患者様ならびに医療従事者や医学研究者が互いの命の輝きを分かち合える場を創出することが何より大切だと思います。

多くの皆さんが若さと叡知を結集する場として東京医科歯科大学小児科とそれを中心とした「御茶ノ水子ども医療総合ネットワーク」に集うこと、それはとりもなおさず日本の小児医療の発展に大きく寄与するものであることを疑いません。多くの方々の参加を歓迎いたします。

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