公募研究班員
A01  応答ゾーン、連携ゾーンの解析

人工リンカータンパク質を利用した小胞体-ミトコンドリア繋留分子の同定と機能解析

山本真寿
熊本大学大学院 生命科学研究部 がん生物学分野

研究概要

真核細胞内に存在するオルガネラ(細胞内小器官)の多くは、生体膜によって細胞質から区切られ、それぞれの機能に特化したコンパートメントとして区画化されています。これらオルガネラはそれぞれが独立して機能するだけでなく、互いに物質や情報をやり取りし、協調的に機能して細胞を維持しています。このようにオルガネラがコンパートメントとしての独自性を維持しつつ、オルガネラ間の物質や情報の伝達を効率的に行うための「場」として、オルガネラ膜同士の近接領域(Membrane Contact Site)の重要性が明らかにされてきましたが、オルガネラ間近接領域を形成する分子メカニズムには依然として不明な点が多く残されています。
本研究では、我々が構築した小胞体とミトコンドリアの近接領域へ特異的な局在を示す人工タンパク質を応用し、小胞体-ミトコンドリアの接触領域に存在するタンパク質の網羅的な解析を進めています。この研究により、小胞体-ミトコンドリアの接触領域を形成する分子メカニズムを明らかにするとともに、個体レベルでの生理的な意義や、がん等の疾患との関係についてもアプローチしていきたいと考えています。

代表的な原著論文

  1. Yamamoto M*, Ohsawa S*, Kunimasa K and Igaki T. (2017) The ligand Sas and its receptor PTP10D drive tumor-suppressive cell competition. Nature 542; 246-250. (*: equally contributed)
  2. Kato U, Inadome H, Yamamoto M, Emoto K, Kobayashi T and Umeda M. (2013) Role for Phospholipid Flippase Complex of ATP8A1 and CDC50A Proteins in Cell Migration. J. Biol. Chem. 288, 4922-4934.

総説

  1. 山本真寿、井垣達吏 (2016) 上皮の恒常性維持と細胞競合における機械的な力の役割. 医学のあゆみ 257, 992~998
  2. 山本真寿、従二直人、加藤詩子、梅田真郷 (2013) ショウジョウバエと脂質研究. 遺伝子医学MOOK, 24, 117~123
  3. 山本真寿、加藤詩子、梅田真郷 (2010) リン脂質フリッパーゼによる「脂質場」の形成と細胞膜ダイナミクス. 実験医学 28, 3292~3299