文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究 シナプス・ニューロサーキットパソロジーの創成

English

ホーム

研究領域【サーキットパソロジー】

計画研究

貫名グループ

研究課題名 選択的ニューロン病態解析法の開発・展開

神経疾患研究における重要な課題は病変の細胞特異性である。ネットワークを形成する神経系においてどの細胞がどのように障害されるのかが発症要因と関連し、また症状を決定する。この神経疾患における重要課題へアプローチするため、本研究は異なるプロモーターを用いて蛍光タンパク質を発現したトランスジェニックマウスを用いて、その病態における細胞特異的変化を解析する方法を確立する。この方法によってある遺伝子を特異的に発現する細胞群の特性を明らかにするとともに、ポリグルタミン病を疾患モデル系として細胞特異的解析を行う。本研究の目標は細胞特異的分子神経病理学の基礎をモデルマウスにおいて確立することである。これによりサーキットパソロジー創成の一翼をになう。

勝野グループ

研究課題名 運動ニューロン疾患におけるニューロサーキット変性の病態解明と治療法開発

成人発症の神経変性疾患である筋萎縮性側索硬化症( ALS )と球脊髄性筋萎縮症( SBMA )では、いずれも随意運動に関わるニューロサーキットが選択的に障害されるが、その分子基盤は明らかにされておらず、神経変性に対する根本治療法は見出されていない。本研究は、ALSとSBMAに共通する病態メカニズムを解明し、治療法を開発することを目的とする。とくにTGF-β・NFkB・JNKなどの細胞内シグナルや細胞周期調整に注目して分子生物学的解析を行い、両疾患に共通する選択的運動ニューロン変性の分子メカニズムを明らかにした上で、ニューロサーキットの機能回復を目的とした分子標的治療法を開発する。

公募研究(H25-26)

定方グループ

研究課題名 有芯小胞トラフィッキング異常による精神・神経疾患モデルマウスの解析

一部の自閉症患者で見られるexon 3がスキップしたCAPS2(Ca2+-dependent activator protein for secretion 2)タンパク質は軸索に輸送されず、CAPS2 exon3スキップマウスは新奇環境への適応不全、不安の高進、社会性行動の異常を示す。自閉症の剖検例などで注目されている小脳における解剖学的・生理学的・行動学的形質を詳細に解析し、自閉症発症のメカニズムに迫る。またCAPS2と結合するクラスII ARFノックアウトマウスは前脚と頸部に強い振戦を示し、多動や常同的な旋回運動を示すことが分かってきた。トラフィッキング関連タンパク質であるCAPS2やARFタンパク質の遺伝子改変マウスを解析し、トラフィッキングと精神神経疾患との関連を解明する。

山梨グループ

研究課題名 NMJを起点とするdying-backパソロジーの解明

近年、多くの動物モデルや臨床検体を用いた解析から、運動ニューロンの選択的な変性が遠位の軸索変性、特に、運動神経と骨格筋を結ぶシナプスである神経筋接合部(NMJ)からの軸索離脱に始まるとする「dying-back」モデルが提唱され、NMJを介した逆行性(retrograde)シグナルの重要性が示されつつある。本研究においては、運動神経選択的な神経変性を特徴とする筋萎縮性側索硬化症(ALS)に的を絞り、NMJからの逆行性シグナルを人為的に増強することが可能な技術を活用し、ALSモデルマウスにおけるdying-back病態の解明とそれらの知見に基づく新たな治療基盤の開発を推進する。

小野寺グループ

研究課題名 U12依存性スプライシングとALSサーキットパソロジー

筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態研究はTAR DNA binding protein-43 (TDP-43)の発見で大きく進展した。しかしALSのサーキットパソロジー、運動神経系への選択性の解明には至っていない。この解明には1) TDP-43病理像の錐体路への選択性、2)細胞死の運動神経への選択性の2点の解明が必要である。まず前者であるが、その鍵は、侵される細胞側の特性にある。この解明のために我々は細胞毎ででのTDP-43 mRNA の制御機構を明らかにする。後者については、U12 snRNA依存性のスプライシングを起こす運動神経細胞の維持に関わる遺伝子の同定を目的とする。

高田グループ

研究課題名 運動障害と認知障害を分離するパーキンソン病のサーキットパソロジー

黒質線条体ドーパミン神経路には、その局在性に基づいて運動機能と認知機能にそれぞれ特異的に関与するサーキットが存在すると考えられる。すなわち、黒質外側部から被殻後方部に投射する神経路は運動機能に、黒質内側部から被殻前方部や尾状核に投射する神経路は認知機能に関わっていることが想定できる。本研究では、ウイルスベクターを用いた遺伝子導入技術により、黒質ドーパミンニューロンに細胞死や興奮抑制を誘導するような機能分子を発現させ、2種類のドーパミン神経路を選択的に除去あるいは活動阻害することによって、運動障害と認知障害を分離することができるパーキンソン病の霊長類モデルを作出し、そのサーキットパソロジーを明らかにすることを目的とする。

山下グループ

研究課題名 軸索変性の分子メカニズムの解明

神経軸索の変性現象は、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病などの神経変性疾患において認められ、軸索変性を適切に制御することにより、神経変性疾患による神経症状の進行を止めることができることが示唆されているが、そのメカニズムについてはほとんどわかっていない。本研究では、外因と内因による軸索変性誘導プログラムという観点からアプローチを試み、軸索変性現象を形作る分子メカニズムの全体像を捉え、効果的な作用点を探る戦略を進める。本研究で得られた基礎研究成果を土台にし、神経変性疾患における神経軸索の変性現象のメカニズムを明らかにし、軸索変性を有効に抑制し神経回路の修復を促す治療法の開発を行うことを最終目標とする。

河原グループ

研究課題名 ALSと脊髄小脳変性症に共通した発症病態の解明

ALSや脊髄小脳変性症などの神経難病は、治療法が確立しておらず、病態解明が急務である。SCA2型は、Ataxin-2遺伝子のCAGリピート(ポリグルタミン鎖)異常伸長が原因であるが、最近になって本リピートの中等度伸長が、ALSの発症を有意に高めることが判明し、Ataxin-2の機能破綻が、両疾患に共通した神経変性機構の根底にあると考えられる。このため、本研究では、Ataxin-2の生理的機能を同定し、さらにポリグルタミン鎖異常伸長が、どのようにAtaxin-2の機能破綻を介して神経変性を誘導するのか、その詳細なメカニズムを明らかにすることを目的とする。

佐竹グループ

研究課題名 ゲノム解読によるパーキンソン病の選択的神経変性の解明

パーキンソン病は、シナプス病態と神経変性が発症・進展のキーとなる疾患である。本研究では、エクソーム解読などの先端ゲノムにより、患者ゲノムの全エクソン塩基配列を読みとき、孤発性パーキンソン病の強い発症リスクとなるrare variantの発見をめざす。シナプス関連遺伝子に着目して解析することにより、本症のシナプス病態をゲノムの視点から解明する。ショウジョウバエモデルをもちいて本症病態を再現、新規のパーキンソン病遺伝子をまじえた遺伝子ネットワークをin vivo 解析する。孤発性パーキンソン病のシナプス・ニューロサーキット病態にせまりたい。

中別府グループ

研究課題名 Galectin-1による筋萎縮性側索硬化症の発症と進行の二面的制御

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動神経の変性と筋肉の萎縮を特徴とする進行性の神経変性疾患であるが,ALS患者の1割は家族性でSOD1遺伝子を始めとする30個近い遺伝子に原因と思われる変異が報告されている。一方,ALS患者の9割は特定の遺伝子に変異の見られない孤発性である。遺伝性,弧発性ともにALS患者の運動神経の軸索には主要なβガラクトシド結合レクチンの1つであるgalectin-1がニューロフィラメントとともに沈着したニューロスフェロイドが認められるが,ALSの発症や病態の進行に及ぼすgalectin-1の影響は全く不明である。本研究では,SOD1[G93A]-トランスジェニックALSモデルマウスとgalectin-1ノックアウトマウスを用いて,galectin-1がALS発症とその病態の進行に及ぼす影響を明らかにし,その分子メカニズムの解明を目指す。

和氣グループ

研究課題名 統合失調症モデルにおける神経回路の動作原理

情動・認知といった高次脳機能に障害を呈する精神疾患の病態解明・治療法の開発が早急に求められている。中でも統合失調症は若年に発症することが多いため産業労働力の低下を招き、また病態が不明な部分が多い。そこで本研究では統合失調症の神経回路の動作原理の解明を目的とする。統合失調症モデルにおいて、認知運動学習課題下で2光子顕微鏡をもちいて神経細胞の発火集団を可視化し、神経細胞および神経シナプスの発火パターンを検証する。また電気生理学的手法を用いて入出力相関を検証し、活動電位の伝導速度の入出力相関に与える影響を考察し、そこから個体の表現型との相関を検証する。

伊佐グループ

研究課題名 脊髄損傷後機能代償回路の特定と新規回復促進戦略の開発

脊髄損傷後、障害を受けた四肢の運動機能は、残存する神経回路によって一部代償され得る。近年、我々は、マカクザルの頸髄C5レベルで皮質脊髄路を切断しても、訓練により1-2か月で手指の精密把持が回復することを見出し、その回復に中部頸髄の脊髄固有ニューロン群が関与するとの示唆を得たが、証拠は不十分である。そこで最近申請者らが開発した高頻度逆行性レンチウィルスベクターとアデノ随伴ウィルスベクターの2重感染による経路選択的・可逆的信号伝達阻害法を用いて、脊髄固有ニューロン群がこの機能回復に関与することを実証する。さらに同じウィルスベクター2重感染法を用いて種々の成長因子を脊髄固有ニューロン群に発現させ、"経路選択的遺伝子治療法"の開発を試みる。

長谷川グループ

研究課題名 細胞内異常タンパク質の蓄積機構

多くの神経変性疾患は、変性する部位の神経細胞やグリア細胞内に疾患を特徴づけるタンパク質の異常蓄積病変を伴うが、そこには多くの共通点が見いだされる。本研究では患者脳の異常タンパク質の解析および実験モデルを用いた解析から、主要な変性疾患脳に出現するタウ、αシヌクレイン、TDP-43などの細胞内異常タンパク質がシナプスを介して、その異常構造、蓄積病変が伝播することにより、回路選択的障害、進行性の神経変性が起こる可能性について検討する。

星野グループ

研究課題名 ニューロサーキット異常型新規てんかんの原因遺伝子の解析とその病態解明

イハラてんかんラット(IER; Ihara Epileptic Rat)は生後3ヶ月からてんかん症状を呈し約一年で死に至る原因不明の自然発症ラット突然変異体である。IERではてんかん発症前から大脳皮質・海馬・扁桃体のニューロサーキットに形態学的な異常が認められ、さらに脳の興奮性が異常に高まっている。我々は、この突然変異体の原因遺伝子を同定したが、本研究ではそのコードする分子が脳の発生や機能に果たす役割について解析し、さらにこの遺伝子の異常によって引き起こされるヒトてんかんの探索とその病態の理解に努める。

公募研究(H23-24)

今居グループ

研究課題名 晩発性パーキンソン病原因遺伝子産物タンパク質ネットワークの包括的解析

パーキンソン病は加齢依存的な中脳黒質ドーパミン神経の変性を特徴とする。パーキンソン病の遺伝的要因の一つとして同定されたLRRK2遺伝子は複数の機能ドメインを有するキナーゼをコードしており、その変異によって長期に渡り徐々に神経軸索の退行・変性が起こる。その病理学的変化はパーキンソン病の代表的な特徴の多くを有するが、病理メカニズムの詳細は不明である。本研究では、LRRK2シグナルに関与する分子群の生化学的な同定と、遺伝学的操作が容易なショウジョウバエ疾患モデルとを組み合わせて、LRRK2タンパク質ネットワークの包括的理解とその異常による軸索変性の病理メカニズムの解明を試みる。

西頭グループ

研究課題名 ALSの診断と治療のための運動ニューロン変性のメカニズム解明

筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症は、運動ニューロンの選択的変性による。家族性ALSの原因としてSOD1遺伝子変異が発見されて以来、多くの研究がなされてきたが、未だ孤発性を含む全ALS病態を説明しうるメカニズムの解明には至っておらず、そのため有効な治療法も存在しない。私達はこれまでに、ほとんどの変異型SOD1が特異的に結合する分子として、小胞体膜タンパク質Derlin-1を同定してきた。本研究では、変異型SOD1-Derlin-1結合を介した小胞体ストレス惹起が、運動ニューロンを取り巻く細胞間コミュニケーションの中でどのようにニューロン毒性を発揮するかについて明らかにすることを目指す。

横田グループ

研究課題名 ALSサルモデル、患者サンプルを用いたTDP-43病態の検索

カニクイザルの頸髄前角にアデノ随伴ウイルスベクターで野生型TDP-43を過剰発現させることにより、進行性の前肢運動麻痺と、TDP-43蛋白の細胞質への異常局在と凝集体形成および核の染色性低下という孤発性筋萎縮性側索硬化症(ALS)類似の病理変化の再現に成功した。実際のALS患者脳脊髄での検索では、死後変化のため正常コントロールのTDP-43蛋白発現量にばらつきがあり、一定の結果を得られなかったが、孤発性ALSの生検皮膚の表皮細胞の核で、TDP-43発現が亢進していることが明らかになった。以上から孤発性ALSは全身で核のTDP-43発現が増加して、病態の一義的な原因になっている作業仮説を立てた。そこで、本研究では、孤発性ALS患者の生検皮膚のTDP-43の分子病態を生化学的、分子生物学的に詳細に行い、ALSの運動神経の選択性の機序およびALSの病態の本態にせまる。

高田グループ

研究課題名 運動障害と認知障害を切り分けるパーキンソン病のサーキットパソロジー

黒質線条体ドーパミン神経路には、その局在性に基づいて運動機能に関与するサーキットと認知機能に関与するサーキットが個別に存在すると考えられる。すなわち、黒質の外側部から被殻の後方部に投射する神経路は運動機能に、黒質の内側部から被殻の前方部や尾状核に投射する神経路は認知機能に重要な役割を果たしていることが予想される。本研究では、独自に開発した逆行性感染型レンチウイルスベクターとアデノ随伴ウイルスベクターを組み合わせて、Cre-loxPシステムを利用した遺伝子導入技術により、運動障害と認知障害を切り分けることができるパーキンソン病の霊長類モデルを作出し、そのサーキットパソロジーを明らかにすることを目的とする。

池中グループ

研究課題名 シスタチンFを介するミクログリアーオリゴデントドロサイトクロストークと脱髄性疾患

脱髄性疾患においては全てのニューロナルサーキットにおいて脱髄が起きるのではない。また、そのモデル動物においても広範囲に脱髄が生じるものもあれば、サーキット特異的に生じるものもある。軸索が裸になるには髄鞘が変性するだけでなく、その再生が抑制されなければならない。われわれは各種脱髄モデルやヒト多発性硬化症においてミクログリアがシスタチンFという因子を発現している間のみ髄鞘が再生していることを明らかにした。本研究においてはシスタチンFを介したミクログリアによる髄鞘再生調節機構を明らかにすることによって、脱髄のサーキット特異性を明らかにする。

定方グループ

研究課題名 広汎性発達障害モデルマウスを用いた発症メカニズムの解明

私は分泌顆粒の分泌調節因子である遺伝子CAPS2/CADPS2に関して、自閉症患者特異的にexon 3がスキップしていることを明らかにしてきた。今回私はCAPS2 exon 3 のみがスキップを起こす自閉症モデルマウスを作製した。このマウスの解剖学的・生理学的・行動学的形質を詳細に解析し、自閉症発症のメカニズムを解明する。さらにCAPS2タンパク質が欠失することで実際にどの分泌ステップが異常を来たしているのかを解明する。CAPS2タンパク質の働きに関しては酵母Two Hybrid解析や免疫共沈、質量分析等により結合タンパク質を同定し、分泌顆粒マーカータンパク質に蛍光タンパク質を融合したものを用いた分子イメージングにより神経ネットワーク内での役割を明らかにする。

長谷川グループ

研究課題名 細胞内異常タンパク質と回路選択的神経変性

多くの神経変性疾患は、変性する部位の神経細胞やグリア細胞内に疾患を特徴づけるタンパク質の異常蓄積病変を伴うが、そこには多くの共通点が見いだされる。本研究では患者脳の異常タンパク質の解析および実験モデルを用いた解析から、主要な変性疾患脳に出現するタウ、αシヌクレイン、TDP-43などの細胞内異常タンパク質がシナプスを介して、その異常構造、蓄積病変が伝播することにより、回路選択的障害、進行性の神経変性が起こる可能性について検討する。

星野グループ

研究課題名 ニューロサーキット異常をきたす新規てんかんの原因遺伝子の解析とその病態解明

イハラてんかんラット(IER; Ihara Epileptic Rat)は生後3ヶ月からてんかん症状を呈し約一年で死に至る原因不明の自然発症ラット突然変異体である。IERではてんかん発症前から大脳皮質および海馬のニューロサーキットに形態学的な異常が認められ、さらに脳の興奮性が異常に高まっている。本研究では、この突然変異体の原因遺伝子を同定し、そのコードする分子が脳の発生や機能に果たす役割について解析し、さらにこの遺伝子の異常によって引き起こされるヒトてんかんの探索に努める。

山下グループ

研究課題名 軸索変性の分子メカニズムの解明

神経軸索の変性現象は、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病などの神経変性疾患において認められ、軸索変性を適切に制御することにより、神経変性疾患による神経症状の進行を止めることができることが示唆されているが、そのメカニズムについてはほとんどわかっていない。本研究では、外因と内因による軸索変性誘導プログラムという観点からアプローチを試み、軸索変性現象を形作る分子メカニズムの全体像を捉え、効果的な作用点を探る戦略を進める。本研究で得られた基礎研究成果を土台にし、神経変性疾患における神経軸索の変性現象のメカニズムを明らかにし、軸索変性を有効に抑制し神経回路の修復を促す治療法の開発を行うことを最終目標とする。

河田グループ

研究課題名 発達臨界期の環境がストレス応答および性機能制御回路におよぼす作用とその破綻

末梢内分泌腺由来の脂溶性のステロイドホルモン分子(コルチゾール、テストステロン、エストロゲン、プロゲステロン)は血液脳関門の制御を受けずに神経組織に受容体を介して働く。本研究では、これらの分子が主たる役割を担うストレス応答や社会・生殖行動(攻撃行動、雌雄の性行動)に関わる脳の各領域(海馬、扁桃体、視床下部)や、運動実行系の脊髄において、発達期における環境変化、とくに性ホルモン変動やストレスなどの内分泌環境の変容が、脳や脊髄の組織形成やホルモンレセプターの分子動態、神経回路構築、生殖・適応行動にどのような影響を与えるのかを明らかにする。とくに、エピジェネティックな影響、PTSDの動物実験モデル、さらに、グルタミン酸受容体欠損マウスでの行動変化などについて解析し、行動神経内分泌学的な観点から研究を展開する。

班友

高橋グループ

研究課題名 遺伝性パーキンソン病動物モデルに基づく選択的ドパミン神経変性のメカニズムの解明

パーキンソン病(PD)の成因には、遺伝要因と環境要因を介して、小胞体ストレス、酸化的ストレス、ミトコンドリア機能低下、タンパク質分解系の障害、細胞骨格の異常等が複雑に絡み合っていると考えられる。我々はこのような複合病態がPDにみられるサーキット選択的神経変性の基盤を形成するとの考えのもと、遺伝性PDについて系統変性のメカニズムに迫る。世界に先駆けて我々が独自に開発したメダカの遺伝性PDモデルを用い、選択的ドパミン神経変性の分子メカニズムを探索する。また、α-シヌクレイントランスジェニックマウスをもとに、遺伝的要因と酸化的ストレスの相互作用によるPDの系統特異的変性の再現をこころみる。

疋田グループ

研究課題名 可逆的神経伝達阻止法を用いた大脳基底核ニューロサーキットパソロジーの解析

大脳基底核はパーキンソン病、薬物依存症、PTSD、うつ病、統合失調症といった多くの精神神経疾患で障害されています。しかし、大脳基底核の主要神経回路である直接路と間接路を区別して解析することができなかったため、これらの精神神経疾患におけるニューロサーキットパソロジーは不明でした。私たちは、大脳基底核の直接路と間接路のそれぞれに特異的な可逆的神経伝達阻止法を開発し、報酬行動と薬物依存形成には直接路が、忌避行動には間接路が重要な役割を担っていることを示しました。本研究では、可逆的神経伝達阻止法を精神神経疾患モデルに適応することによって、精神神経疾患における大脳基底核ニューロサーキットパソロジーを解析します。

山中グループ

研究課題名 神経—グリアネットワーク変調か来す運動神経変性機序の解明

神経変性疾患の病態解明において、神経細胞だけではなく、神経系を構成する各細胞群別の分子病態の理解を深めることの重要性が広く認識されてきている。本研究では、運動神経の変性を特徴とする遺伝性ALSモデルを用いて、神経変性の進行を規定することが明らかとなったミクログリアの分子病態解明に焦点をあてる。ALSモデル動物において見いだしたグリア細胞由来の遺伝子発現異常のin vitroでの解析に加えて、変性ニューロンに対するミクログリアの応答調節を標的とした実験的治療を行うことを通じて、神経変性疾患のサーキット特異的病態の解明に貢献する。

Copyright © 2010 文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究 シナプス・ニューロサーキットパソロジーの創成