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難治疾患研究所 ゲノム応用医学研究部門 形質発現分野
疾患生命科学研究部 形質発現制御学研究室
研究内容:
 人間を含む生物個体は、遺伝情報としてDNAに書き込まれた様々な“形質”を、必要に応じて“発現”させることにより、生命活動を営んでいる。本研究分野では形質発現制御のメカニズム、言い換えれば、核内の遺伝情報が転写装置により読み出され、産生されたmRNA前駆体がプロセシングされ、核外のリボソームへと輸送される仕組みとその制御機構の解明を試みており、その破綻による疾患の病態を解明することを目指している。
研究紹介:
0.背景
  ゲノム・プロジェクトの進展により、ヒトを含む高等真核生物でも、予想以上に少ない遺伝子から多様なタンパク質を生み出していることが判明してきている。真核生物では1つの遺伝子が複数のエクソンから構成され、多細胞生物では多くの遺伝子が選択的スプライシングによって複数の最終遺伝子産物を生成する(ヒトでは全遺伝子の約7割と推定されている)。したがって、選択的スプライシングの制御は多細胞生物に特有の遺伝子発現制御機構として、これまでによく研究されている転写調節に勝るとも劣らない生物的意義を有するものと考えられる。そこで、我々が解明しようとしているのは、転写産物から成熟mRNAへのプロセシング段階での制御機構が存在するか、存在するとすればどのようなシグナル伝達機構下で制御されているかという問題である。
  mRNAのスプライシングは複数のRNAタンパク質複合体によって触媒されており、その他多数のタンパク質が関与する。そのうちのひとつSF2/ASFに代表されるSRタンパク質群はRNA認識モチーフとアルギニン/セリン・リピート(RSドメイン)を持つ。これらRSドメインリン酸化・脱リン酸化反応がmRNAスプライシングに必須の反応であることからRSドメインのリン酸化酵素が探索され、Clk1/Sty、Clk2、Clk3、Clk4、SRPK1、SRPK2、hPRP4などが我々を含む数グループによって同定された。我々は現在、これらのリン酸化酵素によるスプライシング因子の制御機構の生理学的意義を中心に、さまざまなアプローチで解析を行っている。