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研究

 筋や靱帯といった運動器の設計図と末梢神経系ならびに脈管系といった人体に張りめぐらされた複雑な配線図を完成させるべく研究を行い,主として「神経支配による筋の形態学的研究」および「自律神経系を中心とした臨床解剖学的研究」をテーマとして取り組んで来た.
 この中で重要視しているのは,臨床的問題点へのアプローチのための解剖学的基盤の形成ということである.臨床的問題点解決のための1つの基盤として,臨床解剖学的研究が求められている.通常,臨床解剖学はClinical Anatomyの訳であるが,これを我々はClinically oriented anatomyととらえている.解剖学的研究として人体構造の理解という観点としても重要であるが,臨床応用を目指すという点で今後発展させていく必要があると考えている.
 代表的な研究テーマを以下にあげる.

1.肩関節およびその周囲筋の形態学的解析
 肩関節鏡視下手術が一般的になるにつれ,肩関節周囲の詳細な解剖が求められるようになってきた.これに応じて,従来の解剖学的な常識を疑い,手術解剖ならびに機能解剖のためのデータ収集ならびに解析を始めた.これまでの教科書的な記述の多くに先入観による誤記や不十分な調査に基づく誤りがあることがわかってきた.今後,臨床応用できるような情報として整形外科医と共同研究を進めている.

2.総排泄腔の分化と骨盤出口筋の発生の解析
 マウス胚を用いて,総排泄腔が分化し,尿生殖洞ならびに肛門の発生過程を詳細に解析するとともに,骨盤内臓の形成過程に見られるapoptosisの分布を三次元的に解析し,その変化についても解析を行ってきた.また,それらの周囲に発生する筋ならびに神経を追っている.

3.肛門領域の臨床解剖学的研究
 肛門管の構造ならびに構成する平滑筋ならびに骨格筋の配置についての解析を行い、肛門領域の外科臨床のために貢献することをめざす.


4.婦人科癌手術における術式開発のための臨床解剖学的基盤
 広汎子宮全摘術における神経温存術式開発についての解剖学的基盤を形成するため,骨盤内自律神経の分布についてのデータの収集,解析を行っている.

5.咀嚼筋の神経支配に基づく層構造の解析
 咀嚼にかかわる筋群の神経支配を精査することにより,各筋が完全に独立したものでなく,それぞれが移行的な部分をもちながら連続した形態であることがわかってきた.我々は,これらの連続的な形態や筋の層構造の解析および支配神経の分枝パターンについての解析を行ない,咀嚼システムの成り立ちについて検討を行なっている.

 

 


東京医科歯科大学
臨床解剖学分野

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