研究活動

基礎研究

肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症、動脈硬化性疾患などの罹患率は増加の一途を辿っており、2000万人以上と推定されております。超高齢化社会を迎えつつある我が国の国民医療の観点からもこれらの疾患の克服は極めて重要な課題です。当教室では、生理学や薬理学と分子細胞生物学、発生工学、分子遺伝学などの研究手法だけでなくゲノムあるいはエピゲノム、メタボロームなどのオミックス解析、シングルセル解析を駆使して、複雑で巧妙に制御されている代謝調節機構や生体の恒常性維持機構の解明とその成果を臨床の現場に還元するトランスレーショナルサイエンスを推進しています。

研究テーマ

糖尿病とメタボリックシンドロームの成因の解明と新しい治療戦略の開発

現在、糖尿病患者数は増加の一途を辿り1000万人を超えてきております。さらに、過食や運動不足による肥満症 · メタボリックシンドロームも増加しており看過できない社会問題となっています。これらの疾患は、コモンな疾患であるだけでなく種々の合併症を引き起こし大きな問題となっています。我々の研究室では、糖尿病 · メタボリックシンドロームの成因の解明を行い、根本的な病因に対する新規治療戦略の開発を目指します。

熱産生機能とエネルギー代謝調節機構の解明

近年、熱を産生し、エネルギー消費量を増やすことで抗肥満作用および全身の糖代謝 · 脂質代謝を改善する熱産生脂肪(褐色脂肪細胞とベージュ脂肪細胞)がヒトにおいても存在することが明らかとなっています。肥満や糖尿病の病態では熱産生機能が低下することが知られていますが、個体における代謝は熱産生脂肪だけでなく肝臓· 筋肉 · 神経等の臓器が協調的に機能し、臓器間ネットワークがその調節に必須の役割を担っていることが示されてきました。私達の研究室では個体における熱産生機能とエネルギー代謝調節機構を明らかとして、肥満 · 糖尿病に対する新規治療戦略の開発を行います。

熱産生脂肪の誘導分子機構の解明

熱産生脂肪を増やすことが可能となればエネルギー消費量を増加させることで、肥満症の根本的な解決治療に結びつきます。これまでの研究で熱産生脂肪は寒冷刺激や交感神経の活性化等で誘導されることがわかっています。また、非常にヘテロな細胞群で構成されることも明らかになっており解析に困難を伴っていました。肥満や老化では熱産生脂肪の誘導が低下することが知られておりますがその分子機構には未だ不明な点が多いです。最新のシングルセル解析技術を用いて、ヘテロな細胞群を詳細に解析し熱産生脂肪の誘導分子機構を明らかとして、熱産生脂肪を増やす新しい糖尿病・肥満治療の創出を行います。
参考リンク:生体組織の適応・修復機構の時空間的解析による生命現象の理解と医療技術シーズの創出

メタボリックシンドロームのエピゲノム制御と医学応用

生活習慣病は環境因子と遺伝素因の複雑な相互作用により発症することが知られていますが、発症機序として、外的要因(環境因子)によりもたらされる後天的なゲノム修飾(DNA メチル化、ヒストンメチル化 · アセチル化など)による遺伝子発現制御(エピジェネティクス)が注目されています。胎生期~新生児期の環境因子の影響がどのようにしてエピゲノム記憶されて成人期の生活習慣病の発症に関与するのかそのメカニズムを解明することにより、エピゲノム記憶を標的とする新しい医学応用が期待されます。私達の研究室では、特に DNA メチル化に焦点を当てて、糖尿病やメタボリックシンドロームのエピジェネティクス制御の分子機構に関する研究を推進しています。

ホルモン産生腫瘍の発生機構および病態に関する研究

機能性ホルモン産生腫瘍は難治性内分泌疾患から高血圧や糖脂質代謝異常などの生活習慣病に至る広範な疾患の基盤病態となり、ホルモン産生腫瘍の発生機構と病態の解明は内分泌代謝学における重要な研究課題です。私たちの研究室では、アルドステロン産生腺腫をはじめとした副腎疾患を対象に、生化学的あるいは病理学的解析、ゲノム・エピゲノム解析、疫学研究などを通じて、内分泌腫瘍の新しい検査法・診断法の開発を目指したトランスレーショナル・リサーチを展開しています。
多施設共同研究への協力を意欲的に行っており、 AMED「難治性副腎疾患の診療に直結するエビデンス創出(JRAS)」 に共同研究機関として参加しています。また、 欧州副腎腫瘍研究ネットワーク(ENS@T) の主要施設へ研究留学を行った経験 (ENS@T Awards 2019) を基に、国際連携を視野に入れた研究活動を進めます。