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教養部について

教育理念

東京医科歯科大学の基本理念に基づき、教養部では国際的に通用する医療人の基盤となる、さまざまな文化や多様な世界を理解できる幅広い教養と、他者を理解するための豊かな人間性と倫理観、自ら問題提起し解決する創造力を兼ね備えた人材を育成する。

教育目標

教養教育の理念の実現のために、教養教育と専門教育を学ぶための基礎教育を並行して行い、以下の4つの力を学生に獲得させる。

  1. 市民社会の一員として、自己と他者を理解するための幅広い教養と感性
  2. 科学的に考え、理解し、自ら問題を見つけ継続して学ぶ力
  3. 国際的な医療人として活躍するために必要なコミュニケーションの能力
  4. 専門教育に必要な基礎学力や思考力、技術

カリキュラム・ポリシー

東京医科歯科大学の教育理念、教養部の教育理念・教育目標に基づき、教養部では以下の方針でカリキュラムを策定する。(20210625更新)

  1. 自己と他者を理解し、世界の多様な考え方への理解を促すための幅広い科目を開講する。 医学科・歯学科については、2年次以降においてもこの趣旨の教養教育科目を段階的に開講する。
  2. 医療者として必要な高い倫理観を醸成する科目を開講する。また入学当初から、全学科が協働して一つの課題に取り組むことで、将来のチーム医療の基盤を身につけさせる科目を開講する。
  3. 自ら問題を見つけ、解決し、継続して学ぶ姿勢を養う力を醸成するために、授業方法として、PBL方式を始めとしたアクティブラーニングを積極的に取り入れる。
  4. 国際的な医療人として活躍するために必要な語学力を養う科目を、少人数クラスで開講する。合わせて、英語で考える力を高めるために、英語で講義する科目を開講する。
  5. 専門教育に必要な基礎学力や技術を担保するための科目を開講する。
  6. 成績評価は、各科目において、シラバスに記載されている授業の到達目標に達しているかを定期試験のほか、課題提出状況、授業への取り組みなどを用いて総合的に判断し、公正かつ厳正に行う。



 教育目標に掲げた4つの力は、実は密接に結びついています。そのことも含めて、以下に、それぞれの項目についてもう少し詳しく解説します。

1)市民社会の一員として、自己と他者を理解するための幅広い教養と感性

 東京医科歯科大学の学生は、将来、医療従事者として患者さんと接することになります。そのとき、患者さんの抱えている病を科学的対象として治療し、ケアするだけで良いでしょうか?患者さんは病気を抱えた「もの」ではありません。人は、家族・職場・地域社会の中で生きており、病を抱えることによってその関係性の中にさまざまな変化が生じ、心理的な負担も強いられます。そのような「人間」の中で病は理解され、最適な予防法や治療法、病後のケアも提案されなければならないとわれわれは考えます。医療は人と関わる行為です。そのため、医療に携わる人間にとって、専門知識と同時に、市民社会の一員としての自覚と、その社会の中で他者を理解するための健全な感覚がぜひとも必要になります。
 また、現代において、新しい病の出現やその広がりは、地球規模での環境問題や、貧富の格差をはじめとする経済問題、そして交通手段の発達による人やものの交流と無関係ではありません。もはやどのような問題も、閉じられた地域社会の中だけで考えることはできなくなってきているのです。この傾向は加速度的に強まっており、21世紀を生きる将来の医療従事者にとって、世界的視野で物事を考える力は、ぜひとも身につけておかねばならないものです。
 教養部では、医療従事者である前にまず、現代のグローバル化した市民社会の中で、民主主義を担う一員として、自己と他者を理解する力を養うことを目指します。さまざまに多様な他者を理解するためには、自己のキャパシティーを広げておくことが必要です。そのためには、専門とは直接関係のない分野についても幅広く興味を持ち、その分野の優れた知見を吸収しようとする態度が大切です。また、優れた感性は一朝一夕に養えるものではありません。常に、その分野の一流のものに接し、自らの経験値を高めようとする努力が必要でしょう。人文社会や自然科学の学問、あるいは芸術作品は、すべて、人間や文化、あるいは広く世界や自然・宇宙とは何かという問いに関わっています。言語もまた、手段であるとともに文化の営みです。さまざまな学問は、そのような問いへの一つの解なのですが、そうした学問に広く触れることは、自己の限界を知り、自己の基準だけが絶対でないことを体得することでもあります。多くのものの見方や価値観を知ることによって、自己を相対化し、常に他者に対して開かれた感性を持ち続けることが、将来、患者さんと接するときにも、また世界的な分野で研究者として研究を遂行していくときにも重要な要素になってくるのではないでしょうか。倫理観や、市民としての健全な感覚も、自己を相対化し、他者を理解しようと努める中で生まれてくるとわれわれは考えます。

2)科学的に考え、理解し、自ら問題を見つけ継続して学ぶ能力

 ここで言う「科学」とは、狭義の自然科学だけを意味するのではありません。人文科学、社会科学、自然科学を問わず、科学的態度とは、多様な具体的事象の中に一定の法則を見いだして、体系化し、事象を俯瞰する客観的な言語でその事象を記述しようとすることにあります。
 自然・社会・人間の諸現象、あるいは人間の生み出す芸術作品を観察したり、体験したりすることによって得られる直接的で具体的な経験を、自分の中で整理し、仮説を立てて検証し、より広い視野の中に位置づけて普遍化・体系化しながら、他者と共有できる「言語」で語る———そのような抽象化の営みが人間の文化を作ってきました。将来の医療従事者や研究者にも、そのようにして、事象を科学的に考え、理解し、記述する能力が求められています。さまざまな患者さんや病、生命現象に接したとき、自らの医療経験を既に持っている知識と照らし合わせて検証し、体系化、言語化することによって、次の事象に対してもよりよい対処の仕方を考えることができるようになるのです。
 このような科学的態度は、多少なりとも人が持っているものです。人は、自然や社会の混沌とした事象を秩序付け、統一的に理解し、そこに「意味」を見いだそうという志向をそもそも持っているのではないでしょうか。教養部では、そのような人間本来の志向を意識化するため、さまざまな学問の方法論に触れ、実験やレポート・論文作成という作業を実際におこなうことを通して、多様な事象をどうとらえ、記述するかを学んでいきます。新たに第二外国語を学ぶことも、また、言語習得の過程を意識化し、言語の仕組みを抽象化して理解するという科学的態度と結びついています。
 そして、そのとき大切なのは、事象をつねに新鮮な感性で受け止め、検証していこうとする態度です。日常的な事象の中にある新たな変化の兆しを見逃さないためには、鋭敏な観察力と注意力が必要です。物事を決まりきった視点で眺め、既存の体系の中に無批判に位置づけて満足してしまうだけでは、新たな創造は生まれてきません。さまざまな事象の中で自らが疑問に思ったことを大切にし、ほかの事象と照らし合わせながらその疑問を継続的に検証していく力が未来の医療従事者や研究者には求められています。新たな事象による検証のない、固定化した見解は、しばしば偏見となってしまいます。物事は常に変化しています。これからの時代、新たな事象は、既存の知識や体系の中には収まりきれないものになっていくでしょう。自然科学の発達や、社会や人間へのより深い理解とは、新たなパラダイムの創造に他なりません。教養部では、すべての科目において、「クリティカル・シンキング」、すなわち、物事を良く観察し、それを既存の体系におさめてしまうことにいったん疑問を持ち、その疑問を継続的に探求して新たな解を見いだそうとする態度を大切にします。そして、それは1)で述べたような多様な価値観をもつ他者を理解し、自身の考えや判断を相対化することと不可分なのです。事象を観察したとき、その中に新たな要素を見いだすのはそれほど簡単なことではありません。そのためには、既存ものの見方に縛られていてはならないのです。自分のキャパシティーを広げておくことが、問題発見の能力にもつながるとわれわれは考えます。

3)国際的な医療人として活躍するために必要なコミュニケーションの能力

 市民社会がグローバル化した今、これからの医療人には、国際的な視野が求められています。交通手段が発達し、情報環境も整った今、政治・経済・社会や環境といった各分野において、すべての問題が一瞬の内に世界規模に拡大します。サブプライムローンによる世界同時不況、インフルエンザのパンデミックな流行、チュニジア、エジプト、リビアにおけるネットを通した市民革命の広がり等、最近の例をとっても枚挙にいとまがありません。グローバル化した社会は、その希望とともに、脆弱さも露呈しているのです。将来、世界を舞台に活躍しようという場合は言うまでもなく、たとえ日本国内で診療や研究に携わるにせよ、そこで接する他者や出現する問題は、もはや狭く閉じられた一国内だけで考えられる規模のものではなくなっているでしょう。将来の医療従事者には、そうしたグローバル化した社会の中で他者とのコミュニケーションをはかり、共同で問題に取り組んでいく能力が求められています。
 英語は様々な分野で、世界共通語として位置づけられるようになりました。また、多様な情報の中から正確に自分にとって必要なものを取捨選択し、自らも正しい情報を発信する能力も現代社会には必須のものです。専門家として、その分野に共通の言語や手段で世界に広がる専門家とコミュニケーションをはかる能力も必要です。教養部では、このような基本技能を十分習得させるようカリキュラムを編成します。
 しかし、コミュニケーションは、言語や情報技術といったツールだけで成立するものではありません。自己の意志や考え、感情を他者に誤解がないように伝えるためには、まず何より、1)で述べたような自己と他者の文化への理解が欠かせません。そしてまた、「身体的」ともいえるレヴェルで、基本的な他者への接し方を身につけておく必要もあるでしょう。本来、こうした「身体」能力は、家庭や地域社会のなかで培われるべきものですが、現代社会においては人間関係が希薄化したため、しばしばこの側面がおろそかになっています。他者と最初に接するとき、その人の性格や背景が情報として必ずしもあらかじめ与えられているわけではありません。また、言語がまったく通じない相手に接しなければならない場合もあるでしょう。そのようなとき、どのような態度・振る舞い・ことばによって相手とよりよい信頼関係を築いていけるのでしょうか。人間に普遍的な、ともいえるそのような根本的なコミュニケーションの能力が、一種の「身体」能力なのです。教養部では自分自身の身体への管理能力も含め、広くこうしたコミュニケーションの力を養うことを目指します。チームの中で信頼関係を築き、自己の役割を自覚しながら、共同作業によってひとつのプロダクトを作り上げる機会も提供し、コミュニケーションの基本的姿勢を習得させるよう努めます。

4)専門教育に必要な基礎学力や思考力、技術

 東京医科歯科大学は、医学・歯学・コメディカルな分野でのプロフェッショナルの養成を目指しています。
 2年次以降の専門教育は、自然科学の基礎的な知識や、考え方、手法の習得の上に立って行われます。教養部の自然科学の教育はそのことを念頭に、数学・物理学・化学・生物学の各分野にわたって、講義と実習によって、専門進級後の学習に十分な、科学の基礎知識や思考法、技術を身につけさせることを目指します。また、文献を読むための英語力や、基本的な情報処理能力も専門の学習のためには欠かせません。こうした自然科学・英語・情報の科目は、学力差を考慮したクラス編成を行う等によって、各自の今もっている能力を伸ばし、不足した力は補い、進級時には必要十分な基礎学力が担保されるように努めます。