顎関節症外来

東京医科歯科大学

顎関節症

Temporomandibular disorders

顎関節症とは

口を開けようとするとあごが痛い・音がする・口が開かないというような症状があるとき、その多くは顎関節症です。顎関節症はそんなに珍しい病気ではありません。また、顎関節症をよく知りうまくつきあっていけば、そんなに恐い病気ではありません。

顎関節症ってどんな病気?

顎関節症は顎の関節を構成する骨、筋肉、靭帯といった構造のバランスが様々な因子によってくずれることで生じます。顎関節症の主な症状には、以下のものが挙げられます。

口を開けようとすると痛い
来院する患者さんの訴えで最も多いものです。痛む場所は耳の前の顎関節があるところが多いのですが、痛みが出始めた頃は片側の顔から頭までが痛いように感じることもあります。また頬やこめかみの筋肉に痛みが出ることもあります。こめかみや頭の横が痛むときには頭痛と感じるひともいます。痛みは、口を開く時や食物をかむ時に出ることが多く、また、指で押すと痛いこともあります。しかし、何もしないときに痛みが出ることは比較的少ないようです。
あごを動かすときに音がする
実はあごを動かすと音がするというひとはたくさんいます。自分はあごの病気がないと考えている人達を対象として行った調査では、23~39%のひとにあごの関節の音があるといわれています。大きく分けると、カクカク、コキコキといったはじけるような音と、ゴリゴリ、ザラザラといったこすれるような音がする場合があります。
あまり大きく口が開かない
多くの例では、痛みのせいで口が大きく開けられないといったことがあります。他にも関節自体の動きが制限されてしまい、口が開かなくなることもあります。ただ、どんなにひどくても指1本分くらいの開口は可能で、全く口が開かなくなることはありません。また、一般的には放っておいても、何日かするとだんだんと口の開く量が増えてきます。
急にかみ合わせが変化した
あごの関節や、あごを動かす筋肉に問題が生じるとかみ合わせに微妙な変化が生じることがありますが、多くの人では症状が改善してくると気にならなくなります。また、実際にはかみ合わせの変化はなく、そのように感じるだけということもあります。
あごが閉じない
急にあごが閉じなくなる病気は顎関節症以外にもあり、多くはあごがはずれた状態です。顎関節症の場合では関節の中の組織のずれなどが生じているケースがあります。
その他
顎関節症で見られるその他の症状には、頭痛、首や肩の痛みとこり、耳の症状(耳の痛み、耳鳴り、耳が詰まった感じ、難聴、めまい)、舌の痛み、味覚の異常、目の疲れ、口の乾燥感などがあります。しかし、これらの症状が顎関節症に関係するものなのか他の病気に原因があるのかを慎重に判断する必要があります。

顎関節症に対して自分でできること

日常生活でのリスクを減す
最近、顎関節症は生活上のいろいろな因子が症状の出現に関係することがわかってきました。患者さん自身がセルフマネージメントする姿勢を持つことで医療に参加する必要があります。
一般的な注意
関節や筋肉を冷やさないようにしてください。
歯の食いしばりを必要とするような動作は避けてください。
たとえ、調子のいいときでも急に顎を動かす動作は避けてください。
あくびをするときには大きく口を開けずにすむようにしてください。
関節や筋肉が疲労するので長時間の会話や、大きな口をあけて笑う動作は避けてください。
正しい姿勢を心がけるようにしてください。
電話を肩と首ではさんで仕事するのはやめましょう。
ほおづえをつくのはやめましょう。
つめ、鉛筆、パイプなどを噛むのはやめましょう。また、管楽器の演奏も症状が出ているときは避けてください。
緊張の持続は、無意識のうちに全身の筋緊張を招き、顎の筋肉も緊張します。時折、緊張を開放することが必要です。
食事での注意
咀嚼するのに噛み締める必要のある硬い食品はさけて、関節や筋肉に余計な負担をかけないようにしてください。
食物を咀嚼するときはなるべく両側の奥歯を使ってください。
長時間にわたってガムを噛んだり噛み締めたりするのはやめましょう。
寝る時の注意:うつ伏せで寝ると、関節や筋肉を圧迫して痛みが出やすくなるので、なるべく仰向けで寝るように習慣づけましょう。
スポーツについての注意
全身的な運動は血液の循環が改善され筋緊張をほぐしてくれます。ただし、激しい運動や強い噛み締めが必要なものは避けてください。
寒いところで行うスポーツの場合、寒さで痛みが強くなる恐れがあります。
格闘技など顎に打撲が生じやすいスポーツも避けてください。
スキューバダイビングは比較的長時間マウスピースを噛み締め、また関節や筋を冷やす可能性があるため、症状が出ている場合は避けてください。

よくある質問

歯にかぶせものや、矯正をする事によってかみ合わせを治すと顎関節症は治りますか?
一般的に顎関節症は色々な原因が積み重なって引き起こされると考えられています。ですから単にかみ合わせを治したからといって、必ずしも症状が改善するとは限りません。特にその治療が高額だったり、もとの歯を削ったりしてしまうような治療であるようなときは慎重になった方がよいかもしれません。もっと簡単に取り除けるような原因があるような場合には、そちらの治療から受けるか、どうしてもという場合でもマウスピースを使うような元に戻せる治療を受けるという選択枝もあるのではないでしょうか。
顎関節症の治療をすると肩こりや腰痛は治りますか?
そのようなこともまれにありますが、いつもそうとは限りません。顎関節症の一症状として、また間接的に引き起こされる症状として肩こりや腰痛があげられるときがありますが、もしそれらの治療を目的に歯科に来院されてもかえって原因が分からずに不必要な検査や治療をすることになってしまうかもしれません。
かみ合わせが悪いと体全体の調子が悪くなるというのは本当ですか?
そのような情報が本や雑誌、テレビのようなメディアで取り上げられることがありますが、いずれも科学的な根拠に乏しいことが多いようです。みなさんの健康についての悩みが、ある1つの事柄を治すことによってすっきり解決しますといったセンセーショナルな取り上げ方がマスメディア等でよく見受けられます。嘘とはいえなくともある1つのケースを大げさに取り上げてしまうことによって多くの誤解が生じてしまうようです。そういったこともあるんだなといった程度に考えるのがよいのではないでしょうか。
顎関節症は専門の先生にかからないといけないのでしょうか?
まず普段からかかっている歯科医に相談してみるのがよいと思います。顎関節症の中には手術が必要な専門的な技術や知識を持った先生でなくては対処できないものもありますが、ほとんどの場合は一般の歯科医院で十分治療できるものです。また、その先生が診察して必要があれば大学病院のような適切な専門施設に紹介してもらえると思います。
あごで音がして痛いのですが、このまま変形してきたり口が開かなくなったりしないか心配です。
あごの関節の部分で音がしたり痛みがあったりする場合に、時として口が開かなくなったりすることがあります。そういった場合にも必要な処置を施せばまた口は開くようになります。そのまま顔がどんどん変形するのではないかと、心配なさる患者さんもいるようですが、そのようなことはほとんどありません。早い時期に近くの歯科医院で相談してみてはどうでしょうか。

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