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「骨格筋制御装置のかなめを発見」


 東京医科歯科大学難治疾患研究所細胞制御学分野の山梨裕司教授と樋口理助教授らの研究グループは、長崎大学の本村政勝講師、東京大学の秋山徹教授ならびに岩倉洋一郎教授らのグループとの共同研究によって、運動神経からの指令を骨格筋に中継する特殊なシナプスである神経筋接合部の形成に必須のタンパク質を発見し、Dok-7と名付けました。このことにより、神経筋接合部の機能不全によって発症する先天性の筋無力症や自己免疫異常によって発症する重症筋無力症の病態解明とそれに基づく診断法の確立、さらにはDok-7の機能制御を基盤とする新たな治療法の可能性が示されました。この成果は、米国科学誌Scienceの6月23日号に発表されました。       
山梨 裕司 教授
本学難治疾患研究所
細胞制御学分野
ポイント
  • 運動神経からの筋収縮の指令を骨格筋に中継する神経筋接合部の形成に不可欠のタンパク質を発見し、Dok-7と命名した。
  • 神経筋接合部の異常は重症筋無力症や先天性の筋無力症などの重篤な疾病を惹起するが、これらの難治性疾患の病態解明,診断,さらには治療法への展開が期待される。

研究の背景

 我々は脳からの指令を運動神経によって骨格筋に伝達することで、手や足などを意識的に動かすことができます。運動神経の末端は筋の基本単位である筋管の中央部分と対合し神経筋接合部と言う特殊なシナプスを形成していますが、神経末端からアセチルコリンと呼ばれる神経伝達物質がこのシナプス内に分泌され、筋管上の後シナプス部位に密集するアセチルコリン受容体を刺激することで、骨格筋の収縮が惹起されます。したがって、神経筋接合部の機能不全は呼吸を含めた様々な運動機能の障害を伴う筋無力症の発症に直結します。しかしながら、この神経筋シナプスの形成機構には多くの謎が残されています。


研究成果の概要

 これまで、運動神経由来の糖タンパク質であるアグリンが筋管上の筋特異的キナーゼ(Muscle-Specific Kinase: MuSK)と呼ばれるリン酸化酵素を活性化することによって、アセチルコリン受容体が密集した後シナプス部位が形成されると言われてきました。しかしながら、特殊な条件下ではアグリンの非存在下でも神経筋接合部が形成されることが分かり、新たなMuSK活性化因子の探索が世界的な競争となってきました。今回、我々の単離したタンパク質Dok-7はマウスの神経筋接合部に局在しており、培養筋管上のMuSKを活性化する能力を持つだけではなく、その活性化に必須であることが分かりました。さらにDok-7を作る事ができないようにしたマウスは、神経筋接合部を形成することができず、呼吸に必要な肋間筋や横隔筋を動かせない為に新生時に死亡してしまいました。


発見の意義

 運動神経を介した骨格筋制御の重要性からも、また、MuSKの活性化因子の探索が世界的な競争となっていることからも、その一つを発見した本成果の生物学的な意義は大きいと言えます。また、神経筋接合部の形成不全を伴う先天性筋無力症について、その原因の極めて重要な候補を提示すると言う意味を持ちます。さらに、MuSKの機能異常が予想される先天性の筋無力症や重症筋無力症について、Dok-7の機能を適切に調節することによる新たな治療法の開発につながる可能性を示すものです。


問い合わせ先

東京医科歯科大学難治疾患研究所
細胞制御学分野
山梨 裕司 (やまなし ゆうじ)
TEL 03-5803-5814 FAX 03-5803-0241
e-mail: yamanashi.creg@mri.tmd.ac.jp
研究室ホームページ http://www.tmd.ac.jp/mri/creg/


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