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「加齢指標タンパク質SMP30の機能解明に成功」
−ビタミンCが老化予防に有効である可能性を示す手掛かり−


 東京医科歯科大学医歯学総合研究科血流制御内科 下門顕太郎 教授、近藤嘉高 大学院生らと東京都老人総合研究所 石神昭人 主任研究員、丸山直記 副所長ら、および和歌山県立医科大学 錦見盛光 教授、東邦大学 後藤佐多良 教授の共同研究グループは、加齢指標タンパク質SMP30の生体内機能を明らかにすることに世界で初めて成功しました。この研究成果は平成18年4月4日(日本時間午前7時)に米国科学アカデミー紀要Proceeding of National Academy of Science, USA 速報版の電子ジャーナルに掲載されました。


(中央・右)下門 顕太郎 教授 (本学大学院医歯学総合研究科血流制御内科学分野)
(中央・左)丸山 直記 副所長 ((財)東京都高齢者研究・福祉振興財団東京都老人総合研究所)
(左)石上 昭人 主任研究員 ((財)東京都高齢者研究・福祉振興財団東京都老人総合研究所)
(右)近藤 嘉高 大学院生(本学大学院医歯学総合研究科血流制御内科学分野)


ポイント
  • 老化の指標として知られているタンパク質SMP30がビタミンCの合成に必須の酵素であり、SMP30を作れないマウスではビタミンCが減少し老化が進行することが分かった。
  • ビタミンCが老化予防に有効である可能性を示す重要な手掛かりが得られた。


研究の背景

 加齢指標タンパク質SMP30は肝臓や腎臓、肺などの臓器に発現しており、加齢に伴い減少するタンパク質として東京都老人総合研究所で発見された。SMP30の遺伝子を破壊したノックアウトマウスは正常なマウスに比べて約4倍の速度で老化が進行し、早期に死亡するが、SMP30の生体内での役割・機能は不明であった。東京医科歯科大学と老人研は、SMP30と動脈硬化発生進展の関係を明らかにするための共同研究を進める過程で、SMP30の生体内での役割・機能の一部を解明した。


研究成果の概要

 米国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のデータベースから、SMP30が藍藻(藍色細菌とも呼ばれる細菌の一種)にあるグルコノラクトナーゼ(GNL)と非常に良く似ていることを発見した。多くの哺乳類もビタミンCを合成するための酵素としてGNLを持っているが、その分子的実体は不明であった。本研究では、加齢指標タンパク質SMP30 がGNLそのものであることが証明された。即ち、SMP30の遺伝子を破壊したノックアウトマウスをビタミンCを全く含まない餌で飼育すると、骨の形成が悪くなり血管が脆くなって容易に出血するなど、ヒトの壊血病(ビタミンC欠乏症)症状を呈した。ビタミンC投与によりこの症状は改善した。


発見の意義

 本研究により、加齢指標タンパク質SMP30が哺乳類におけるビタミンC合成に必須な酵素GNLであることが、世界で初めて明らかになった。ヒトはGNL以外の酵素(GLO:グロノ−γ−ラクトン酸化酵素)に遺伝子変異があるため体の中でビタミンCを合成できない。したがって、SMP30の加齢に伴う減少・ビタミンCの産生減少・老化というスキームはヒトでは成り立たないが、ビタミンCが老化防止に果たす役割をマウスのモデルで明らかにできたことには大きな意義がある。ビタミンCには強い抗酸化能力があり、ポーリングのノーベル賞受賞以来、美白から抗老化まで幅広い効果を期待され使用されているが、その反面、虚血などの病的状態では逆に活性酸素を多く産生する悪い面もあることから、個体レベルでの効果については懐疑的な意見も多かった。本研究はビタミンCが抗老化作用を持つ可能性を示す重要な証拠となりえる。また、加齢指標タンパク質SMP30(GNL)ノックアウトマウスは、抗酸化能力を持つ機能性食品・サプリメントなどの有効性や安全性を正しく評価するのにも有用と思われる。本研究成果は、「老化機構の解明」や「アンチエイジング」の研究に多大な貢献をすることが期待される。


問い合わせ先

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
血流制御内科学分野(老年病内科)
下門 顕太郎 (しもかど けんたろう)
TEL 03-5803-5968 FAX 03-5803-4863
e-mail: k.shimoka.vasc@tmd.ac.jp
研究室ホームページ http://www.tmd.ac.jp/grad/vasc/vasc-J

(財)東京都高齢者研究・福祉振興財団
東京都老人総合研究所
石神 昭人 (いしがみ あきひと)
TEL 03-3964-3241
e-mail: ishigami@tmig.or.jp


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