細胞内の全てのオルガネラや蛋白質は、千差万別の寿命をもってダイナミックにターンオーバーしており、生物はこの新陳代謝を通して細胞内を浄化すると共に細胞活動を健全に維持しています。この代謝回転の中核を担うユビキチン・プロテアソーム系やオートファジー経路は、様々な細胞内ストレスに応答する手段として、あるいは多様な生体反応を迅速に順序立って不可逆的に進める手段として、生命現象に不可欠な役割を果たしています。
近年、ユビキチン・プロテアソームシステムやオートファジーシステムの破綻に伴って発症する疾病(癌や神経変性疾患等)に関する報告が急増しており、高齢化社会を迎えた今日では、その生理と病態に関する研究の重要性は拡大の一途を辿っています。
機能分子病態学分野では、パーキンソン病などの神経変性疾患の原因因子の機能解析や、ミトコンドリアなどの細胞内オルガネラ選択的オートファジーの分子メカニズム解析を進めています。これらの研究は、生命の謎に迫るという学術的な重要性のみならず、健康科学の発展に大きく寄与することが期待できます。