研究成果(医療者向け)

「次世代の呼吸補助装置の研究及び新型コロナウイルス患者の急増への対応を視野に入れた新型人工呼吸器の評価研究等を行うオープンラボラトリーの開設 」

2020.06.01

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【ポイント】
◆国立大学法人東京医科歯科大学と株式会社メトランは、東京医科歯科大学オープンイノベーション機構・統合イノベーション推進機構を活用し、新規に2つの共同研究を開始しました。
◆「TMDUオープンイノベーション制度」に基づき、東京医科歯科大学内にオープンラボラトリーを設置し、実施いたします。

1【革新的な呼吸補助装置の研究開発】

慢性閉塞性肺疾患(COPD chronic obstructive pulmonary disease )は、喫煙等に起因する肺の炎症性疾患で、中高年に多く発症する生活習慣病です。我が国の死亡原因の9位、男性では7位を占めます。今後、日本をはじめ、世界の各国では、喫煙者の高齢化によりCOPD患者の増加が見込まれています。現在、COPDや間質性肺炎等の患者の呼吸補助には、マスクの装着や挿管、及び酸素付加のための酸素ボンベが必要であり、呼吸補助が行われると移動・運動が制限され、会話や飲食も不可となるなどQOL上の課題があります。

このような課題の解決を視野に、株式会社メトランは、東京医科歯科大学と共同で「カニューラ(鼻腔に装着するチューブ)を使用するCOPD患者等の呼吸に困難感を感じる患者向けの酸素付加を必要としない呼吸補助装置の研究開発」を3年計画で行います。本研究により、マスクの装着や挿管、及び酸素ボンベを必要とせず、リハビリ時、災害時等、病室を離れた場面での治療継続も可能とする革新的な小型・軽量呼吸補助装置の実現を目指します。また、この新しい呼吸補助装置によるCOPDの重症化予防等の新しい治療方法の実現等、適用の拡大に向けた研究も行います。

本研究は、東京医科歯科大学呼吸器内科の宮崎泰成教授を研究総括として実施いたします。

また、株式会社メトランはベトナム、ホーチミンのTechnical World Group Corporation TWG )とベトナムにおける医療事業、医療機器の開発・販売に向け協力協定を締結しておりますとともに、1995年にベトナム最初の私立大学として設立されたVanLang大学とも医療分野での連携を進めつつあります。東京医科歯科大学は、本研究等を契機に、株式会社メトランを通じてベトナムにおける医療関係の研究、教育等への事業的な協力を進めることを検討してまいります。

東京医科歯科大学田中学長(左)/ 株式会社メトラン Tran Ngoc Phuc 会長(右)

2【新型コロナウイルス感染症に対応する新型人工呼吸器にかかる研究等】

新型コロナウイルス感染症 (COVID19) による、世界各地での呼吸不全患者の急増により、人工呼吸器の医療機関への適切な配備が喫緊の課題となっています。各国とも人工呼吸器の追加的な確保に取り組んでおりますが、既存製品の生産能力が限られていることとともに、新規の開発や製造が容易ではない高度な医療機器であることから、世界的な供給不足となっています。

株式会社メトラン社は、こうした状況に対応すべく、世界最先端の技術、培ったノウハウを基に短期間で製造が可能で「シンプルな構造・機能、簡易な操作、低コスト」を特徴とする人工呼吸器 (ELICIAEを開発しました。 MV20 は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS : Acute Respiratory Distress Syndrome )も含めた呼吸不全患者管理が肺保護換気により可能です。一方、MV20はヒトに対する適用の評価を早急に行う必要があり、株式会社メトランと東京医科歯科大学は、 MV20 の有用性、安全性を呼吸生理学的及び臨床医学的な視点から評価するとともに、世界の臨床現場での安全な使用を円滑にする「使用ガイダンス」を新設のオープンラボラトリーを活用し共同で作成いたします。

MV20は、特に、爆発的な患者の増加で、人工呼吸器が不足する場合や、人工呼吸器に習熟していない医療者が人工呼吸管理を行う必要がある場合に有用であると考えられ、すでに世界60カ国以上から MV20への 具体的ニーズが寄せられております。月産数千台規模での迅速な製造、及び臨床現場での緊急使用を円滑にする使用ガイダンス等の整備に向けた TMDUオープンイノベーション制度の貢献が、世界中の患者の救命はもとより新型コロナウイルス感染症の診療及び社会に与える意義は非常に大きいと考えられます。

本研究は、東京医科歯科大学心肺統御麻酔学の内田篤治郎教授を研究総括、生体集中管理学の若林健二講師等を研究分担とし、 Imperia l College London 医学部麻酔集中治療科の高田正雄教授(本学学外理事)等の協力を得て行います。

【研究に関する事】
国立大学法人 東京医科歯科大学 オープンイノベーション機構
〒113-8510 東京都文京区湯島 1-5-45
TEL:03-5803-4736 FAX:03 5803 0286
E-mail:openinnovation.tlo@tmd.ac.jp

【報道に関する事】
国立大学法人東京医科歯科大学 総務部総務秘書課広報係
〒113-8510 東京都文京区湯島 1-5-45
TEL:03-5803-5833 FAX:03-5803-0272
Email:kouhou.adm@tmd.ac.jp

田中雄二郎学長メッセージ

新型コロナウイルス感染に正面から取り組む
―大学基金へのご協力のお願い―

全世界が新型コロナウイルス感染という危機に直面しています。これは世界の4 人に1 人が感染し、5000 万人が死亡したスペイン風邪以来の大規模パンデミックとも言われており、大きく世の中を変えることになると思います。
大学自体も、卒業式、入学式が相次いで中止となり、教育はe-ラーニング、研究もコロナウイルス感染関連以外は最低限となり危機的状況です。
もともと、本学は「知と癒しの匠みを創造し人々の幸福に貢献する」という理念を掲げています。
この理念に基づき、東京に位置する医系国立大学としてこの危機に正面から取り組むのは使命だと考えて行動を開始しました。

新型コロナウイルス感染克服を最優先に

新型コロナウイルス感染克服への取り組みを最優先課題としました。
大学病院は高度先進医療を優先すべきだという議論もあります。しかし感染爆発の状況に至れば、そのような姿勢は社会的に許容されないだろうと考え、3月初旬から準備を開始しました。
診療面では、医学部附属病院がこの前面に立ち、集中治療室全体を陰圧化するなどの改装や、病院前に検体採取用テントを設置するなどのハード面の改修を行いました。また、新たに20台の人工呼吸器を購入し、ECMO(人工肺)5台、人工呼吸器82台の体制を敷いて多くの重症患者様の治療に当たっています。
ソフト面では、多くの研究者たちの応援のもと院内感染ゼロを維持するため入院患者様およびコロナウイルス対応職員の院内PCR検査体制を実施しています。また、コロナウイルス感染拡大防止の観点から医学部および歯学部附属病院の通常診療も大幅縮小し、患者様にはご迷惑をおかけしつつ、そのスタッフたちがコロナウイルス対応スタッフの応援に回っています。

このような本学の取り組みの結果、全国でも有数の新型コロナウイルス感染者の治療に当たることができ、その社会貢献を評価して頂き、防護服の寄附や弁当の差し入れなどを頂戴することが出来ました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

しかしながら、病院の改装、医療機器、防護服、検査試薬など諸費用は莫大なものになっており、より良い診療、教育、研究を維持向上させるために、皆様のご支援を重ねてお願い申し上げる次第です。お寄せ頂いたご厚意には必ず報いることが出来ますよう使途も明らかとして、一層の社会貢献に努めて参りたいと思います。
宜しく、ご理解、ご支援のほどお願い申し上げます。

東京医科歯科大学 学長 田中雄二郎

新型コロナウイルス対策基金にご協力ください

東京医科歯科大学は、新型コロナウイルス感染症に正面から立ち向かっています。そのため、病院の改装、医療機器、防護服、検査試薬など諸費用は莫大なものになっており、より良い診療、教育、研究を維持向上させるためには、皆様のご支援が必要です。お寄せ頂いたご厚意には必ず報いるよう、一層の社会貢献に努めて参りたいと思います。宜しく、ご理解、ご支援のほどお願い申し上げます。