5.活動電位の伝導
いままで述べてきたような機序によって発生した興奮が神経線維や筋線維に
沿って伝わる。このことを伝導(conduction)という。この章では、主として
神経線維を例にして、興奮の伝導について述べる。
§1. 興奮伝導の能率
神経繊維(および筋繊維)の役目は興奮を伝えることである。もっと一般的に
いうならば、情報を伝える事である。我々の神経繊維は、このことを能率良く
行うように進化してきた。能率は次ぎの3つのことに関してがある。
情報の量 神経繊維は直径0.1〜20μと細い。このため、一本の神経幹に
多数の繊維を含むことが出来る。例えば、人間の一本の視神経には約100万本
の神経繊維が含まれてる。このおかげで、我々はものをよく識別することが可能
となる。
情報の正確さ 我々のマイクロ・メ−タ−直径の神経線維が、もしも普通の電
線のようにして電圧を伝えるとする。神経線維は電解液を含むので、比較的伝導
性に富み、その抵抗率は 100 Ωである。それでも 1 μm の細さでは、長さ
10 8
1 cm での抵抗は 10 Ω に達する。この抵抗値は、10 km の長さの 0.7 φ の銅
線のそれに相当する。この値は地球と月の距離 (4×105 km)の 100 倍以上ある。
その一端に活動電位 が生じ、他端でそれを検出することを考える。この時当然、
活動電位は減衰し、雑音のなかに隠れて検出できない。減衰を防ぐためには、直
径を太くし、抵抗を小さくしなければならない。ところが、太くすれば、第一の
意味での能率が落ちる。生体は、そこで、一ヶ所で生じた脱分極を隣の膜に入力
させ、その膜にイオン不均衡として貯えているエネルギーを使って活動電位を発
生させる。そして、この「脱分極」を次ぎの膜に出力する。すなわち、次々に増
幅を行うことによって減衰を避けているのである(図5ー1)。
<図5−1>
情報の伝導速度 神経系は、もともと、外界生体内の出来事に速く反応・対処
するために発達してきた。情報の伝導速度をあげることには、次の2つの方法が
ある。1つは、その太さを増すことである。これもまた第一の能率と抵触する。
そこで、脊椎動物においては、伝導速度をあげることを、随鞘によって神経を覆
うことによって達成している。
これらのことを次に述べる。
§2. 興奮伝導機序の大要
ここで興奮伝導機序の大要について述べておく。興奮膜は内側が外側に対して
負に分極している。いま、或る場所が興奮すると、その局所のみ、内側は正と
なる。それで、細胞内では興奮部から隣接する非興奮部への電流が流れ、細胞外
では、非興奮部から興奮部に向かって電流が流れ込む。それで、興奮部では、電
流の吸い込み口(sink)となり、まわりは、湧き出し口(source)となる。その結果
一巡する電流の回路が出来る。この回路を局所回路(local circuit)という。この
回路を流れる電流を局所電流(local current)という。
隣接する非興奮部では、電流が湧き出すから、この電流の大きさと膜抵抗の積
の電圧降下だけ、膜電位が小となる。すなわち、脱分極が生じる(図5ー2)。
<図5−2>
この脱分極が、臨界値に達した所は興奮が生じ、膜電位は逆転し、そこの形質膜
内側が外側に対して正となる。すると、そこが「吸い込み口」、まわりが「湧き
出し口」となるような局所回路が出来、回りを脱分極する。この脱分極によって
そこの興奮が生じる。このことが繰り返され、興奮は興奮膜に沿って次々と移って
行く。これが興奮伝導の機序である。
§3.電気緊張的拡がり electrotoinc spread
上述のことから形質膜に沿って興奮の伝導が生じるのは、その部位に生じた
活動電位が形質膜に沿って物理的に周囲に影響を与え、周辺部の膜電位に変化
が生じるためであることがわかる。(その変化が臨界脱分極に達すると、その
部に興奮が移る。) そこで、興奮の伝導は、形質膜のある部位に生じた電位
変動の膜に沿っての物理的拡がりの問題に換言することが出来る。この拡がり
を電気緊張的拡がり(electrotonic spread)と呼ぶ。
形質膜は、垂直方向に膜抵抗 rm 及び膜容量 cm が並列につながり、形質膜
に沿っては細胞質の抵抗 ri,及び細胞外液の抵抗roが直列につながった形と
なっている。roは、小なので省略出来る。また、過渡的な電圧変動を問題とし
なければ、cm も省略出来る(図5−3)。
<図5−3>
このような等価回路で示される形質膜の局所に、膜を介して電圧(或は電圧
の変化)が生じたとき、電流im は電圧変化が生じた所から隔たると、ri と
rm とに分流される結果、小となる。それで、電圧をかけたところから隔たる
につれて膜を介しての電圧は小となる。
§4.電気緊張的拡がりの定量的取り扱い(長さ定数)
このことを定量的に取り扱う。結論から先に述べる。いま、膜にV0 の電圧
が発生し、それからxだけ隔たった所の電圧は、
−x
V=V0 exp ─────── ・・・・(1)
──────
/�■�m/ri
となる。ここで、rm(Ω)は神経単位長さあたりの膜抵抗であり、ri(Ω)は
神経単位長さあたりの内部抵抗である。この式でxを増せば、Vは指数関数的に
減る。 その式から、電気緊張的な拡がりの大小は
──────
/�■�m/ri
できまる。すなわち、これが小ならばVは急速に小となる。つまり、電気緊張
電位の拡がりは小。逆は逆。この値を長さ常数(length constant)λといい、
電圧の拡がりがe-1 =36%になる長さである。この式は次のようにして導入
できる。
いま、図5−3において、V0 の電圧を膜の内外にかける。そこから距離xの
ところの膜内外間の電圧をV とする。そこから微小距離Δxを考える。 電圧V
は、Δx間の膜抵抗を膜電流が通る際の電圧降下であるから、
V=(rm/Δx)・(im×Δx)
=rm ・im
となる。ただし、imは、単位長さあたりの膜電流である。このimを、V、Xで
表せばよい。まず、Δx間で、電流が膜を横切って分流するする分だけ、長軸に
沿って電流ilong が減る。それで、
im×Δx=−Δilong
dilong
im = − (────── ) ・・・・・・(2)
dx
を得る。また一方、Δx間に電圧V が、ΔVだけ下がるのは、長軸に沿った
電流ilong のΔx間での電圧降下
−ΔV=ilong×(Δx×ri)
のためである。それで、
1 dV
ilong = ─── ───
ri dx
を得る。(2)、(3)式から、
dilong 1 d2V
im = − (───)= ───(────)
dx ri dx2
となる。これを、上式を代入すれば、
rm d2V
V= ───・────
ri dx2
をえる。結局、
rm d2V
V− ───・──── =0
ri dx2
を得る。この微分方程式を初期条件
x=0→V=V0 x=∞→V=0
で解けば、(1)式が得られる。
カエルの腓腹筋では
rm=0.95MΩ �� Rm=4.1KΩ
cm=0.34μF �� Cm=8μF/��2
ri=1.6M٠�� Ri=250��
λ =0.77�� ��
D =137μm ��
§5.電気緊張的拡がりと興奮伝導
以上述べた性質が形質膜に存在するが、この性質と活動電位が次々に伝導する
ことの関係を定性的に説明する。
<図5−4>
今、図5−4のように1ヶ所に興奮が生じれば、脱分極は線維の長軸に沿って
電気緊張的に拡がり、周囲の膜電位がそれに伴って減る。そこで興奮が生じる
臨界脱分極電位がC点だとするとこの点まで興奮する。このとき長軸に沿っての
電気緊張電位の減り方が急、すなわちこの神経線維の長さ定数が小ならば、a点
までしか次の興奮は生じない。逆にλが大ならば、すなわち電気緊張的拡がりが
遠くまで及ぶならば、b点まで興奮が生じる。したがって、λが小さな神経線維
は伝導が遅く、λが大きな線維は伝導速度が大となる。
§6.線維直径と伝導速度(半定量的取り扱い)
太い線維は長さ常数λが大である。それで、伝導速度は大である。このことは
半定量的に説明できる(図5−5)。直径Dcmの線維を考える。このとき、長さ
<図5−5>
1cmあたりの膜抵抗は
Rm
rm〔Ω〕= ─────
πD・1
ただし、Rmは膜の表面積1cm2 あたりの膜抵抗(Ωcm2)である。また、長さ
1cmの内部抵抗は
1
ri〔Ω〕=Ri・ ───────
π・(D/2)2
ここで、Ri は細胞質の比抵抗(Ωcm)である。
活動電位V0 が生じ、それが1cm 離れたところに拡がる電気緊張電位Vは、
rm が端に集中しているとすると、
rm 1
V= ─────── V0 = ─────── V0
ri + rm ri/rm +1
1
= ──────────────────── V0
Ri Rm
( ─────── ÷ ──── )+1
π・(D/2)2 πD
1
= ────────── V0
4・Ri
───── +1
Rm・D
─────
又、電気緊張的広がりは�■�m/riに比例する。
Rm
───
rm πD Rm 1
─── = ───────── = ───・── ×D
ri Ri Ri 4
────────
π・(D/2)2
となりDが大ならば、rm/riは確かに大となり、従って電気緊張的広がりは、
Dが大なら大となることがわかる。それで、1ヶ所に生じた活動電位によって
臨界脱分極まで達する範囲が広くなるだろうし、さらに、伝導速度も速くなる
ことが予想できる。
§7.線維直径と伝導速度(定量的取り扱い)
さらに定量的に述べると、活動電位が線維を伝導する場合、その伝導速度θは、
線維直径Dの平方根に比例する。この関係を導き出す。第一に、一定速度で
線維上を電位変化(例えば興奮)が電導するとき、実験事実より
V(x,t)=V(x−θt)
の関係があるから、その電位変化の場所的分布は、時間的経過に変換できる。
<図5−6>
今までt0 の時点で見た線維上の活動電位の分布V(x,tO)は、x0 で見た
活動電位 V(x0、t)と同じような形をとる(図5−6)。前述の式から、
ある特定時間t において、膜電流
∂ilong 1 ∂2V
im = ( ───── ) = ─── (────)
∂x t ri ∂x2 t
である。活動電位のような波動が一定速度で伝わる時、
∂2V ∂2V
θ2 (───) = (─── ) ... (波動方程式)
∂x2 t ∂t2 x
がしられている。それで、
1 ∂2V
im= ─── ・(─── )
riθ2 ∂t2 x
となる。 im,riを normalize した parameters で表す。いま、Dを線維
径、Riを axoplasma の比抵抗とすれば、
Ri 4Ri
Ri = ──────── = ─────
π・(D/2)2 π・D2
となる。それで、im を単位面積当りの膜電流 Im に換算すると、
1 ∂2V
Im= im ÷ πD = ─── (───) ÷ πD
riθ2 ∂t2 x
πD2 1 1 ∂2V
= ───×───×─── ×(───)
4Ri θ2 πD ∂t2 x
結局、
D ∂2V
Im= ───── ( ──── )
4Riθ2 ∂t2 x
となる。今、x=θt+δ上でδを選べば
∂2V ∂2V
(───) >0、かつ (───)=const
∂t2 x ∂t2 x
である。それで、
D ∂2V
θ=────── (─── ) = K・�■�
4Ri・Im ∂t2 x
となる。ここで、膜の特性がどの神経でも同じならば、Imは直径に無関係。
したがって、速度θは直径の平方根に比例する。
§8.跳躍伝導
伝導速度を速くするもう1つの方法に、跳躍伝導がある。すなわち、神経線維
の沿ってとびとびに伝わる仕方である。この型の伝導は有髄線維 (myelinated
nerve fiber)で生じる。神経線維の形質膜を取り囲んでいる髄鞘(myelin)は、
非常に電気抵抗が高い。それで、電流は所々にある髄鞘の欠損部、即ちランビエ
の絞輪(Ranvier node)のみ通ることが出来る。1つのランビエの絞輪で興奮
が生じれば、その部は吸い込み口となり、周囲のランビエ絞輪からのみ、電流
が湧き出す(図5−7)。したがって、そこでの電流密度は、髄鞘のない時に
<図5−7>
比較して非常に大となる。それで、その部で興奮が生じる。するとまた、周囲
の絞輪を脱分極させ、興奮を生じさせる。このことが次々と生じて、興奮が
伝導する。このような考えは、慶応大学の人達による単一神経線維を使った
実験から生まれた。そして、その考えが正しいことが次の事実から確かめら
れた。
(a)ランビエ絞輪部の興奮性が大であること。単一神経線維に沿って各部を
微小電極を使って、刺激して、興奮するための刺激電流の閾値を調べた
(図5−8)。この結果、Ranvier 絞輪部の閾値が他の部位に比較して
<図5−8>
低いことが分かった。このことから、刺激に有効な電流は絞輪部に働く
と考えられる。
(b)主な電流の出入は絞輪部で行われること。髄鞘部の単位表面積あたりの
抵抗は100KΩcm2であり、無髄神経 1kΩcm2 に比較して、非常に
高い。それで、髄鞘部での電流の出入りは少ない。図5−9Bのように
<図5−9>
して、髄鞘部に出入りする電流を測定すると小。それに反して、Aのよ
うにして絞輪部に出入りする電流を測定すると大きな電流が出入りして
いる。
(c)絞輪と次の絞輪間の電流の遮断は、興奮伝導の遮断をもたらすこと。
電解液を詰めた橋で、絞輪間に電流を流してやると(図5−10参照)、
興奮の伝導が回復する。
<図5−10>
(d)活動電位発生の遅れは、絞輪をこえたときに生じること。単一有髄線維
の一端を電気刺激し、活動電位によって生じる局所電流を測定する。
絞輪間ではどこでも電流は同じ、絞輪を越えて初めて異なる(図5−11)。
<図5−11>
以上のことから、1つの絞輪が興奮すると隣の絞輪部が脱分極し、興奮が生じ、
それが次々に起こることにより伝導が生じていることがわかる。
§9.有髄神経線維の伝導速度、その他
有髄神経では、活動電位は、絞輪を飛び飛びに伝導することが分かった。
それならば、その伝導速度は、絞輪間の長さが長い程、速いと考えられる。
<図5−12>
絞輪部の長さは、線維直径に比例する。また事実として、有髄神経の伝導速度は
線維直径に比例することが知られている(図5−12)。 そして、
速度(m/sec)�В帖弗漫法滷�
であるといわれる。
<図5−13>
図5−13を見るとわかるように、1μ以下では無髄神経の方が伝導速度大
である。実際には有髄神経線維の太さは1〜2μ以上である。このことは、
有髄にすることによって伝導速度を速くするのにきわめて合理的であるといわ
なければならない。
有髄神経線維に興奮が生じるとき、Na+の細胞内流入は無髄神経線維の
1/300であるという。このことも有髄神経が少ないエネルギーで能率よく活動
できることを示唆する。
また、一つの絞輪で発生した活動電流の振幅が1/5になるまで伝導の遮断
はない。これ以下になると、となりの絞輪を興奮できなくなる。この逆数を、
安全率(Safty factor)という。有髄神経の安全率は5である。
§10.活動電位の誘導法と形
生体から電気現象を導くためには、電極(electrode)が必要である。2つの
電極を神経線維上において、線維一端を刺激することによって生じた活動電位を
記録すると、二相性の活動電位(biphasic)が誘導できる。活動電位は伝導し、
一方の電極に達すると、この部が電気的に陰性になる。ついで、活動電位が他の
電極に達すれば、反対方向の電位変動が生じる。
それに反して、一方の電極をおいた部を傷つけ、興奮が生じないようにして
おくと、活動電位は単相性(mono-phasic)となる。
生体の中にある神経線維も含めた興奮性細胞は、電気をよく通す導体で囲ま
れている。このような3次元の導体を容積導体(volume conductor)という。
容積導体内での活動電位の誘導は、臨床的にも大切であるので、別に項をも
うけて説明する。
§11.容積導体内での神経電位
容積導体内に横たわる神経の近くに1つの電極をおき、他の電極を神経から
十分遠い点に置く。このとき、後者の電圧は変わらないから、これが電位0の
基準点となる。この電極を不関電極(reference or indifferent elec-torode)
といい、近くにおいた電極を関(係)電極(different electrode)という。
このような条件下では、伝導する活動電位は、3相性の電位として記録できる。
まず、関電極から離れた所が興奮、そこが湧き出し口、それで陽性となる。
次に関電極に近い所がが興奮して、陰性、次にまた湧き出し口となって陽性
となる。それで、陽-陰-陽の3相となる。
§12.容積導体内での電気現象の分析
モノポール 容積導体内に一点があり、それから総電流I が流れ出す
<図5-14−1>
(流れ込む)とき、一点からrだけ離れた所の単位(表)面積を流れる電流は
I
i= ─────
4πr2
容積導体の比抵抗Rとすれば、モノポールからdrだけへだたった距離の電位差は
I・R
dV= Ri・dr = ─────
4πr2
したがって、rだけ離れた所の電位Vは
r I・R
V= ∫dV = ─────
∞ 4πr
となる。即ち、
1
V ∝ ────
r
となる。
ダイポ−ル 容積導体内に、微小距離δ だけ離れた一対の点がある。一点から、
他点に電流Iが流れている。2点の中点からr(cm)だけ離れていて、方向が、
<図5-14−2>
「一点から他点に向かう方向」から、θ(゜)だけずれた点Pの電位は、
δが小ならば、
1 1
V = K(─── − ─── )
r1 r2
である。今r≫δであるとすると、
1 1
V=K( ───────── − ──────── )
δ δ
r1− ── cosθ r2− ── cosθ
2 2
δ・cosθ
V=K(─────────────)
δ2
r2− ─── cos2θ
4
r<<δであるとすると、
δ・cosθ
V= ────────
r2
rが小さければ大、θ=0、180゜のとき大、90゜のとき0Vとなる。
ダイポ−ル層 今度は2つの面が向かい合って、一方から他方に電流が流
れているとき、それから離れた所Pの電位を考える。微小部分dAを考えれば、
<図5-14−3>
それはダイポ−ルである。ここで
dAcosθ/r2
はP点がdAにはる立体角であるから、
dV=KδdΩ
となる。従って、
V=KδΩ
となる。すなわち、P点からダイポール層にはった立体角が大きければ、
大きな電位となる。
ダイポ−ル層の生体に対する適応 今、興奮が生じているところと静止して
いる所を考えると図のようになる。(図5−14)。P点で電位をはかって
<図5−14>
いるとき、結局、図5−14のように構文部と非興奮部の境に二重層が出来、
進方向が+、反対方向が−。従って、近づいて来れば立体角大となるが、
θが小となり、ついに一番近づいたときは電位は0となる。これをintrinsic
sign という。離れていけば−となる。
§13.神経線維の種類
多数の神経線維からなる神経幹の活動電位は、各構成線維の活動電位が合成
されたものである。
多数の線維を含んでいる神経幹の一端を電気刺激し、一斉に線維を興奮させる。
すなわち、斉射(nerve volley)を生じさせる。各線維を伝わるインパルス
(nerve impulse)は刺激局所から同時に出発したものであるが、伝導速度が
線維毎に異なっているので、各インパルスは伝導距離が長くなると離れてくる。
このことは神経幹の一点から単極誘導するとわかる。それは単峰性の電位変化
ではなく、多峰性となる(図5−15)。おのおのの峰は似た伝導速度を持つ
<図5−15>
線維群の活動電位をあらわす。峰の数が、線維の型の数だけ認めることが出来る。
衝撃の伝導距離が増すにしたがって、遅れが大となるので、峰と峰との間隔が
増加する。そうすると(図5−16)のように、伝導速度とその機能の間に、
ある程度の相関が存在することがわかる。
<図5−16>
§14.神経線維の太さと刺激の感受性
圧迫 太い線維が先ずやられる。これは、酸素不足によるためとと考えられる。
それで、伝導ブロックは、触→冷→温→痛の各神経線維の順に生じる。
電気刺激 活動電位の各成分の内、太い線維に相当する峰の刺激閾値が、細い
線維に相当するそれよりも、低い。これは、太い線維には、電流が流れやすい。
細い線維の周囲には結合組織が多く、細胞外のスペースが広いため、線維自身に
電流が流れにくいためと言われている。
薬物 procaine, tetradotoxin はナトリウム・イオンチャンネルをブロック
する。このとき、細い線維からおかす。これは、太い線維では、周囲から薬が
浸潤するのに時間がかかるためであるという。伝導ブロックは、それで、冷→温
→痛→触の各神経線維の順に生じる。また、4−エチル・アンモニューム塩
(TEA)は、カリウム・イオンチャンネルをブロックする。
温度 冷刺激で伝導ブロックが生じる(cold block)。太い線維からやられる
ことが多いという。
<図5−17>