病理部における研究
研究業績
(2000年)



==病理部における研究==

病理部は大学機構改革の中で学内に先端医療応用学・診断病理学という形で位置づけられた。これまでの研究テーマは胃癌・胃炎、肺の炎症性疾患(サルコイドーシス)・腫瘍、食道癌の病因・病態学が中心であったが、今後は分子生物学的な先端技術を診断に応用し、形態学的な診断困難例の解決を目指す研究にも力を注ぐ予定である。


 主な研究テーマ

肺癌の進展過程における基底膜リモデリングの分子機構の解析
 粘膜内に発生した癌細胞周囲組織に浸潤する過程の中で、粘膜を裏打ちする基底膜の崩壊は重要な過程であり、基底膜リモデリング機構を通じて癌細胞の浸潤機構の一端を説明できる可能性は高い。  基底膜の形成、維持には、コラーゲンやラミニンなどの基底膜構成成分、インテグリンやジストログリカン複合体などの基底膜受容体、メタロプロテアーゼやヘパラナーゼなどの分解酵素など多数の分子が関与する。これらの中で癌化に伴い発現が変化している分子を同定し、基底膜破壊や癌の浸潤との関係を明らかにしていく。
  培養消化器癌細胞株の基底膜形成能力を形態学的に検索し、基底膜物質の産生能との関係を検討した。培養癌細胞には基底膜を形成できないものがあり、癌細胞の産生する基底膜物質の中でラミニンalpha3鎖の発現の減少と相関が認められた(T.Akashi 1999b)。 さらに実際の肺癌組織でのラミニンalpha3鎖および新たにクローニングされたalpha5鎖の発現を検索したところ、いずれも浸潤部において高率に断裂・消失しており、ラミニンalpha3鎖mRNAの発現も著しく低下していることが明らかとなった(T.Akashi 1999a) 。

胃炎の病理学
 胃炎はヘリコバクター、炎症細胞、サイトカインのみでは説明できない。 胃の「骨格」ともいうべき平滑筋層の構築から、胃の運動をダイナミックにとらえることにより、胃炎の進展のメカニズムを考察しようとする、ユニークな研究である。

胃癌の組織発生.微小胃癌と粘液形質発現・背景粘膜の検討
 近年,胃癌の粘液形質が免疫組織化学的に検討され,形質による予後や発育様式の違いが指摘されている。我々は極めて微小な胃癌を用いて,分化型胃癌と粘液形質,また背景の腸上皮化生との相関を検討した。その結果,胃癌は発生初期には粘液形質を有さず,発育と共に二次的に発現する可能性が示された。また,腸上皮化生は前癌病変とは捉え難く,側癌病変的な性格が示唆された。これらは胃癌の発生要因や,腫瘍の分化機構解明に役立つものと思われる。

サルコイドーシスの病因論

食道癌の発生・進展機構の解析
 ヒト食道扁平上皮癌の診断・予後推定を客観的に行うためのマーカーの探索を目的として、癌の増殖、分化、浸潤に関与すると推定される分子のヒト癌手術材料における発現を検討している。これまでの研究では、MMPが食道癌浸潤に関与すること、PTK/PTPの一部も癌において有意に発現量が変化することを示してきた。今後は、これら以外にも食道癌の増殖・進展を制御する分子は数多いと予想されるので、癌遺伝子、増殖因子、サイトカイン、接着分子などの遺伝子発現の変化が包括的に評価できるオリゴDNAチップを用いた検索を計画している。

AIDS剖検例の解析
消化管感染症の病理




 















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