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センター長挨拶

関矢 一郎
センター長 応用再生医学分野教授 (兼任)
関矢 一郎
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再生医療研究センターは2013年に設立され、患者さんに新たな治療の選択肢を提供することを使命として、基礎研究から臨床応用、さらには産業化まで、再生医療の実現に向けた多方面での研究活動を展開してまいりました。この10年以上の歳月の中で、私たちは再生医療を社会に実装し、病気やけがによる身体的損傷に苦しむ人々の生活を大きく変えることを目標に掲げてきました。この間、複数のプロジェクトで顕著な進展を遂げることができました。

最も大きな成果は、滑膜に由来する間葉系幹細胞(滑膜幹細胞)を用いた膝関節疾患の治療開発です。膝半月板の温存治療は基礎研究から臨床研究を経て、現在では多施設治験へと進展しています。また、変形性膝関節症に対する滑膜幹細胞注射は治験から自費診療といった複数の方向で展開し、多くの患者さんに低侵襲な治療を提供できる段階に達しました。さらに、変形性膝関節症に対する多血小板血漿(PRP)注射は治験と自費診療を通じて、膝関節疾患に対する再生医療の総合的な展開を推進しています。

消化器系疾患に対する再生医療の研究でも着実な進展を見せています。潰瘍性大腸炎に対する腸管再生治療は臨床研究の段階に達し、腸上皮細胞の体外培養技術(オルガノイド)の開発にも成功しました。この知見をもとに確立した腸上皮細胞の胎児化技術は、再生医療の新たな展開につながるものと期待されています。

当センターが開発・確立したウイルス・マイコプラズマ検査システムは、すでに複数の製品として上市され、再生医療の安全性評価に広く活用されています。この成果は、基礎研究を着実に社会実装につなげた実例といえます。

2024年10月、本学は東京科学大学として新たなスタートを切りました。この節目に私は再生医療研究センターのリーダーとして研究者、医療従事者、そして産業界のパートナーと共に、再生医療の未来を切り開く決意を新たにしています。これまで培ってきた臨床応用の経験と知見を活かし、学内の様々な再生医療研究プロジェクトをリードすることで、本学の再生医療研究のさらなる発展させていきます。

私たちは「患者さんに届く再生医療の実現」という理念のもと、安全性と有効性を最優先に考えながら、革新的な治療法の開発に邁進してまいります。皆様には引き続きのご支援とご指導を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。