「はばたく次世代」女性研究者支援プログラム採択者一覧

旧東京医科歯科大学は医療系に特化した唯一の指定国立大学として「世界屈指のヘルスケア・サイエンス拠点の形成」を推進し、医学・歯学のグローバル人材を育成することで、我が国のみならず世界の人々の健康と社会の福祉に貢献することをビジョンとしています。本ビジョンを達成するために、旧東京医科歯科大学では学部生から独立研究者に至るまでシームレスかつロングスパンな人材育成プログラムを実施しています。本プログラムは、特に上位職以前の女性の若手研究者へのボトムアップ支援による基礎研究の加速を目的とし、イノベーティブな研究成果の創出や社会実装を促進する取り組みです。学内の女性研究者を対象に公募を実施した結果、2024年8月より10名の研究者を採択することになりました。

※本助成は、第一三共株式会社の「はばたく次世代」応援寄付プログラムの採択を受けて実施しております。

A)研究躍進コース

長期cAMPシグナル活性化を用いた脂肪酸クオリティ改善薬の開発と新たな臓器連関の解明

藤木 珠美

大学院医歯学総合研究科 茨城県腎臓疾患地域医療学講座 寄附講座助教

肥満症は糖尿病や慢性腎臓病などの生活習慣病の原因ですが、いまだに安全で有効な治療薬はありません。我々は、安全に長期間経口投与可能で、マウスにおいて抗肥満効果を発揮する低分子化合物を開発しました。この新規化合物を用いて白色脂肪組織をはじめとした全身の脂質クオリティの変化を解析し、生活習慣病の新規治療標的を明らかにします。

小脳の神経回路発達へのドーパミンの機能の解明と疾患治療への応用

中井 彩加

大学院医歯学総合研究科 認知神経生物学分野 助教

脳の発達は私たち動物の基盤を形作る重要な過程です。しかし、その仕組みは未だ多くの謎が残されています。本研究では、神経伝達物質として知られるドーパミンが脳の発達にどのような役割を果たしているかを解明します。マウス小脳の発達とドーパミンの関係を分子レベルから行動まで包括的に解析することで、発達期の小脳におけるドーパミンの役割を解明し、精神疾患治療への新たなアプローチを目指します。

がん組織特異的に組み上がる人工カプセルを用いた非小胞性細胞外RNAの網羅的探索

堀 真緒

生体材料工学研究所 有機生体材料学分野 助教

がんは我が国において2人に1人が罹患する「国民病」となっています。がん細胞からは様々な生体分子が放出され、浸潤・転移などの病態に関与することが報告されてきました。本研究では、そのような分子の中でも未解明な点の多い非小胞性細胞外RNAを網羅的に探索するためのツールとして、がん組織においてRNAを内包しながら組み上がる人工カプセルの開発に取り組みます。

3Dモデルから紐解くα線を用いた新規放射線治療の基礎的検討-最適な臨床応用に向けて-

野島 瞳

大学院医歯学総合研究科 歯科放射線診断・治療学分野 助教

頭頸部がんおよび皮膚がんに対しα線源を用いた全く新しい放射線治療が開発されました。本邦では、当院を含む3施設で臨床試験が開始され、現在製造販売承認の申請がなされている状態です。しかし、新規治療法であり、α線源による生物学的知見はまだ十分とは言えません。本研究では、腫瘍内微小環境を反映したマウス腫瘍の3Dモデルを使用し、臨床に即した検討を行うことで、より有効な治療法の確立を目指します。

B)研究展開コース

医学教育における情報・科学技術や人工知能に関する知識転移モデルの構築

加藤 寿寿華

総合研究院 生命倫理研究センター 特任研究員

昨今の新たな医療・科学技術の進歩に伴い、大学においても新しい科学技術を利用した研究・教育が増えつつあります。医療・教育の場での活用方法やその他ルールについて質的量的な解析を通して様々な視点から網羅的に検討するとともに、これらの養成方法の変化・推移にも着目する予定です。これらに関する知識転移モデルや個々人にあった教育モデルの構築を目指します。

要介護高齢者の在宅医療開始時の在宅連携体制と療養経過に関する研究:医療・介護・訪問看護レセプト連結データを活用した評価

坂野 朋未

大学院保健衛生学研究科 在宅・緩和ケア看護学分野 プロジェクト助教

在宅医療を必要とする高齢者が増えることが予測されます。病状が変化しやすい高齢者が安心して生活を続けるには、在宅においても適時適切な医療が必要となりますが、サービスの連携による影響は十分に調査されていません。本研究では、国保データベースと訪問看護請求情報を用いて、在宅医療開始時の訪問診療と訪問看護の連携とその後の在宅日数・入院など療養経過を評価し、在宅医療提供体制の構築に資する知見の創出を目指します。

Investigating the Relationship Between Periodontitis and Rheumatoid Arthritis Using High-Throughput Sequencing

Lin Peiya

大学院医歯学総合研究科 口腔生命医科学分野 特任研究員

Periodontitis not only affects oral health but is also closely related to systemic health. Rheumatoid arthritis (RA), a complex autoimmune disease, is characterized by joint inflammation, pain, and dysfunction. Recent studies suggest a potential link between periodontitis and RA, with periodontitis possibly exacerbating RA progression. However, the underlying mechanism remains unclear. This study aims to explore the effects of systemic inflammation and the oral-gut microbiota axis changes caused by chronic periodontitis on RA, providing valuable insights for future research and treatment strategies.

加齢による心臓-骨格筋連関の変容メカニズムの解明

栗木 麻央

大学院医歯学総合研究科 病態代謝解析学分野 助教

加齢による筋量の低下をサルコペニアと呼びます。サルコペニアでは、心不全を合併しやすい事が知られていますが、そのメカニズムは不明です。私は、骨格筋と心臓の各臓器における加齢性変化が、液性因子などを介し互いに影響し合い、両疾患の病態を増悪させているのではと考えました。本研究では、加齢性変化の特徴としての線維化を引き起こす線維芽細胞とそれを制御するマクロファージに着目し、この仮説を検証します。

静水圧刺激による前駆細胞の分化制御メカニズムの解明

杉本 明日菜

病院 小児歯科 助教

前駆細胞は、組織が傷ついた際、迅速に目的の細胞へと分化することで、組織の修復や再生を支えています。前駆細胞の分化にはメカニカルストレスが深く関与していますが、その詳細は依然として多くの不明点が残されています。本研究では、さまざまな前駆細胞を対象に、メカニカルストレスである静水圧刺激が分化に与える影響と、その分子メカニズムの解明を目指します。

異種動物生体環境を利用したヒト膵臓の樹立

遠藤 有希子

高等研究府 幹細胞治療研究室 特別研究員

1型糖尿病患者における膵島移植は2020年に保険収載された低侵襲な細胞移植療法ですが、その実施例は数例と限られています。特に脳死ドナーの少ない日本では脳死臓器提供以外の移植臓器の確保が喫緊の課題です。本研究では、臓器欠損着床前胚にヒト多能性幹細胞を注入する胚盤胞補完法を応用し、注入する細胞の性質や注入する発生段階を調整することで、異種動物体内にヒト膵臓を作出し、ドナー臓器として用いることを目指しています。

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