次世代研究者育成ユニット一覧

第四期生

新規2本鎖核酸医薬技術の開発

吉岡 耕太郎

大学院医歯学総合研究科脳神経病態学分野・特任講師

核酸医薬は次世代の分子標的薬として爆発的に開発が進んでいますが、低い標的組織送達性と重篤な毒性という課題を解決できていません。一方で、申請者は薬物送達(DDS)機能を核酸分子内に内包したオーバーハング2本鎖核酸(ODO)技術を考案し、核酸化学修飾の変化によりキャリアー分子結合能・安定性・細胞内乖離性を自由自在に制御可能であることを明らかにしました。そこで、このODO技術を基盤に、標的臓器・細胞に即した新規2本鎖核酸医薬創薬プラットフォームを創生し、優れた標的臓器送達及び無毒性の達成を目指します。

循環細胞外小胞を標的とした慢性腎臓病・腎性老化の分子病態解明

萬代 新太郎

大学院医歯学総合研究科腎臓内科学分野・テニュアトラック准教授

慢性腎臓病(chronic kidney disease,CKD)の世界の有病者数は8億人を超えました。中でも高齢者の約3人に1人が発症し,心血管病やサルコペニア(加齢や癌などの疾患による骨格筋量・筋力の低下)など全身臓器の機能低下に連鎖しながら個体の老化を招きます。現在この現象の分子病態は未解明で,有効な治療法が存在しません。本研究によって,CKDの新機軸の治療戦略構築と,老化を制御し健康寿命を延伸可能な先進医療の実現を目指します。

新規オートファジーの異常に起因する超早期発症型炎症性腸疾患の病態解析及び創薬研究

仁部 洋一

高等研究府病態細胞生物学研究室・プロジェクト助教

超早期発症型炎症性腸疾患の患者において、新規オートファジー実行分子AAG3の遺伝子変異が見出され、新規オートファジーの変調によるヒト疾患が実際に存在することが初めて明らかとなりました。本研究では、新規オートファジーの生理機能の解明や炎症性腸疾患の病態解明を通じて得た知見をValueとして、超早期発症型炎症性腸疾患の治療をMissionとします。

造血異常による恒常性破綻メカニズムとその抑制機構の解明

金山 剛士

難治疾患研究所生体防御学分野・准教授

造血は赤血球や血小板、様々な免疫細胞を産生することで生命や恒常性の維持に必須の役割を担っています。加齢や炎症、投薬等による生体ストレスが造血系に与える影響や、これらの生体ストレスから造血系を保護する機構については未だ多くが解明されていません。本研究では、ストレス下における造血系の破綻メカニズムや造血系を介した恒常性維持機構を明らかに致します。

RBM20細胞質顆粒を標的とした拡張型心筋症治療戦略の開発

井原 健介

難治疾患研究所生体情報薬理学分野・特任助教

RBM20の変異は難治性心疾患である拡張型心筋症の原因となります。今まではその変異はRBM20の機能喪失により拡張型心筋症を引き起こすとされてきましたが、我々は変異型RBM20が顆粒構造を形成し機能獲得することにより拡張型心筋症を生じることを報告してきました。本研究ではRBM20顆粒の性質を明らかにし、その顆粒を治療標的とする新規治療戦略の開発を目指します。

哺乳類腸呼吸現象に着目した臓器リパーパシング研究

米山 鷹介

総合研究院創生医学コンソーシアム臓器発生・創生ユニット

ドジョウなどの一部の水棲生物は、低酸素環境に適応するために、肛門近傍の腸を介した酸素換気を行う腸呼吸を副呼吸様式として有していることが知られています。最近私たちは、マウスやブタにおいてもこの腸呼吸が可能であり、さらに低酸素血症からのレスキューにも活用できることを発見しました。本研究では、なぜ哺乳類においても腸呼吸が機能的に発動するのか、という問いに迫るべく、哺乳類腸呼吸現象のメカニズムを細胞・分子レベルで明らかにすることを目指します。

高感度シングルセル解析を活用したヒト好塩基球の分化・成熟機構の解明

三宅 健介

総合研究院・テニュアトラック准教授

好塩基球は、末梢血白血球中に0.5%ほどしか存在しない非常に希少な血球細胞です。最近になって好塩基球が慢性アレルギー炎症における司令塔の役割を担うことがわかってきましたが、好塩基球の分化・成熟過程に関しては数多くの謎が残されています。そこで、本研究ではいまだ謎の多いヒト好塩基球の分化・成熟過程を、高感度シングルセル解析を活用することで解き明かし、好塩基球成熟のアレルギー病態における役割の理解を目指します。

第五期生

免疫チェックポイント分子の制御による慢性腎臓病の新規治療法開発

森 雄太郎

大学院医歯学総合研究科 腎臓内科学分野 テニュアトラック助教

慢性腎臓病(CKD)は、体内の老廃物と不要な水分を濾過し尿として排泄する腎臓の機能が、年単位の経過で悪化していく致死性疾患です。国民の8人に1人が罹患している新たな国民病であるにも関わらず、病態解明や創薬は十分には進んでいません。本研究では、CKDを進行させている腎臓の老化細胞が、癌細胞と同じように免疫系を狂わせることで慢性炎症を維持しているという仮説を立て、その証明を試みるとともに、新規の治療法の開発を目指します。

ドライバー変異を伴わない肝細胞がん発症機構の解明

岡本 好海

難治疾患研究所 発生再生生物学分野 助教

がん発症には、がん原遺伝子またはがん抑制遺伝子のゲノム変異(ドライバー遺伝子変異)が蓄積することが重要であると考えられています(多段階発がん説)。しかしながら、大規模がんゲノムデータベースを調査すると、10%程度のがん組織では明確なドライバー変異は生じていません。私は、ゲノム変異を伴わない発がん機構が存在するのではないかと考えています。本研究では、マウス肝細胞への一過的な遺伝子導入手法を用いて、ドライバー変異を伴わない肝細胞がん発症機構の再現とその分子機構の解明を試みます。

cAMP/PKA シグナル活性化によるLRBA 欠損症の治療法開発

原 悠

病院 血液浄化療法部 特任助教

LRBAは免疫系のブレーキである免疫チェックポイント分子の発現維持に必要であるため、LRBA欠損症では免疫恒常性の破綻による重度の免疫不全症を呈します。しかし、LRBA変異によってLRBAが欠損するメカニズムや欠損したLRBAの発現を回復させる方法は未解明です。LRBAが腎臓における尿濃縮に必須の分子であることを明らかにした我々の知見を活かし、LRBA欠損症の病態解明と新規治療戦略の開発を目指します。

クローン病における小腸粘膜治癒阻害要因の解明と新規治療開発

河本 亜美

病院 光学医療診療部 助教

消化管の難病であるクローン病の小腸病変は大腸と比較し早期で発見されにくく、予後不良因子です。さらに小腸病変の治療効果に関わる因子は不明です。我々は以前に大腸と比較し小腸では粘膜治癒が得られにくく、より高い薬物血中濃度を必要とすることを明らかにしました。本研究ではクローン病における小腸病変には大腸病変よりも治癒しにくい生物学的な因子が存在すると仮説を立てて検証を行い、クローン病患者の予後改善を目指します。

ヒト腸上皮細胞の「胎児化リプログラミング」に着目した炎症性腸疾患の病態解析および新規治療法の開拓

藤井 悟

大学院医歯学総合研究科 消化器病態学分野 プロジェクト助教

腸管の最表層は1層の腸上皮細胞に覆われ、その再生能力は非常に高く、上皮細胞層が破綻したとしても速やかに再生し元の状態へと回復します。一方、腸上皮の再生機構が慢性的に破綻した状態と言えるのが炎症性腸疾患(クローン病と潰瘍性大腸炎)であり、再生機構が破綻してしまう原因は未だ不明です。当研究では、 腸上皮の再生機構に着目し、炎症性腸疾患の病態解明および新規治療法の開発を目指します。

エピゲノム解析と臨床・疫学研究から解き明かす、歯周病の次世代への影響

吉田 澄子

大学院医歯学総合研究科 歯周病学分野 学振特別研究員(PD)

胎児期から生後早期の環境が、その後の生涯の健康に対して大きく影響することが知られています。母体の歯周病罹患が早産・低体重児出産のリスクとなることがわかっていますが、その後成長した子どもに対してどのような影響があるのかは報告がほとんどありません。本研究では、母体の歯周病の胎盤と母乳を介した子どもへの影響(エピゲノム制御)の全容解明と、基礎研究・臨床研究・疫学研究の融合による強固なエビデンスの確立を目指します。

精密組成制御に基づく抗菌性バイオセラミックスの開発と新機能開拓

島袋 将弥

生体材料工学研究所 無機生体材料学分野 助教

申請者は無機系バイオマテリアル(バイオセラミックス)研究を通じて、骨領域感染症の予防に有用な新材料の開発を目指します。骨組織再生と感染予防とを目指した抗菌性バイオセラミックス開発では、依然として濃度依存的な毒性発現と時間依存的な効果消失という課題が残っています。そこで本提案研究では、申請者が考案した抗菌性付与技術を活用し、従来の課題を解決しうる全く新しい抗菌性バイオセラミックス開発に挑戦します。

第六期生

単離尿細管マルチオミクスを用いた、多発性嚢胞腎におけるPKA-βカテニンシグナルの解明と新規治療開発

菊池 寛昭

病院 血液浄化療法部 助教

常染色体優性多発性嚢胞腎(autosomal dominant polycystic kidney disease : ADPKD)は最も頻度の多い遺伝性腎疾患であり、平均して60代で腎代替療法が必要となり、末期腎不全の原因の第4 位を占めますが、いまだ根本的な治療薬は存在しません。本研究では、細胞接着に関わるβカテニンの転写シグナルに着目し、嚢胞形成性ヒト腎オルガノイドを用いた空間特異的マルチオミクス解析で、ADPKDにおける嚢胞形成の機序を解明する事、新規治療法を開発する事を目指します。

脳内で自己集合するナノマシンを用いた神経変性疾患新規治療法の開発

堀 真緒

生体材料工学研究所 有機生体材料学分野 助教

アルツハイマー病やパーキンソン病をはじめとする神経変性疾患は有効な治療法のない難治性疾患です。多くの神経変性疾患の脳内ではタンパク質の凝集が認められ、その中でも特に凝集中間体は強い神経毒性を有していることが報告されています。本研究では、このような脳内の有害物質を取り込んで無毒化・排除するナノマシンの開発を通して、神経変性疾患の新規治療法の確立を目指します。

次世代社会の健康確保を目的とした物質胎盤透過メカニズムの解明

堀 武志

生体材料工学研究所 診断治療システム医工学分野 所内講師

妊婦に対する適切な薬物治療や食生活の指導は、胎児の健康的な成長を支える上で極めて重要です。しかし、妊婦が摂取する薬物や食品の量と、それらが胎児に移行する量との関係を正確に評価することは技術的に困難でした。この関係を解明することにより、より適切な薬物治療が可能となり、また、食品摂取に関する効果的な保健指導も行えるようになると考えられます。そこで、本研究では、申請者らが最近作製に成功したヒト胎盤細胞培養モデルを用いて、物質の胎児への移行量とその移行メカニズムの解明に挑戦します。

生殖腺の性転換を抑制するエピゲノム修飾の探索

柳井 翔吾

難治疾患研究所 病態生理化学分野 特別研究員PD

生殖腺には性の維持機構が必須であり、この機構が破綻すると精巣は卵巣に、またはその逆に分化転換してしまいます。細胞運命を規定するエピゲノム修飾は性の維持機構に重要であると予想されますが、その分子実態は未だ明らかにされていません。私は、自ら確立した薬剤による性転換誘導系を基盤技術として、性維持を担うエピゲノム修飾を探索します。

長期cAMPシグナル活性化を用いた抗肥満薬開発と脂肪酸クオリティの変化に着目した臓器連関の解明

藤木 珠美

大学院医歯学総合研究科 茨城県腎臓疾患地域医療学講座 寄附講座助教

肥満症は糖尿病や慢性腎臓病などの生活習慣病の原因ですが、いまだに安全で有効な治療薬はありません。我々は、安全に長期間経口投与可能で、マウスにおいて抗肥満効果を発揮する低分子化合物を開発しました。この新規化合物を用いて白色脂肪組織をはじめとした全身の脂質クオリティの変化を解析し、生活習慣病の新規治療標的を明らかにします。

筋オルガノイドを使用した筋幹細胞維持メカニズムの解明

栗木 麻央

大学院医歯学総合研究科 病態代謝解析学分野 助教

骨格筋は再生能が高い臓器です。筋幹細胞は、骨格筋が傷害を受けた際に活性化され、増殖し新たな筋線維へと分化する、筋再生に必須の細胞集団です。よって、筋幹細胞が幹細胞性を保ったまま組織中に保持されることが、骨格筋が再生能を維持するのに重要です。本研究では、筋幹細胞が、周辺ニッチに存在するマクロファージや間葉系間質細胞と協調し、その幹細胞性を維持するメカニズムを、筋オルガノイドを使用し解明します。

トップに戻る