新テニュアトラック教員採用者一覧

2024年4月1日付採用

三宅 健介

統合研究機構・テニュアトラック准教授

好塩基球は、血中を循環する白血球の中に1%ほどしか存在しない非常に希少な免疫細胞です。好塩基球の存在は140年以上前から知られていましたが、その生体内での機能については最近になるまでほとんど明らかになっていませんでした。しかし最近になってマウスを用いた研究により、マウスの好塩基球がアレルギーや寄生虫感染に対する防御などの様々な免疫反応に重要であることが明らかになってきました。ヒトにおいても、好塩基球はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患患者の炎症局所にも存在することが分かっています。しかし、実際に炎症の現場にいるヒト好塩基球がどのような役割を果たしているのかはほとんどわかっていません。私はこれまでの研究で、高感度1細胞RNAシーケンス解析という手法を用いることで、マウス好塩基球が分化・成熟してくる経路や、マウスアレルギーモデルにおける好塩基球の役割を明らかにしてきました。テニュア期間の研究では、高感度1細胞解析技術をヒト好塩基球に対して適用することで、ヒト好塩基球の分化・成熟経路や、アトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー疾患における役割を解き明かします。これにより、好塩基球を起点とした新たな治療戦略の創出につながることが期待されます。

リサーチマップ https://researchmap.jp/7000025581

萬代 新太郎

大学院医歯学総合研究科 腎臓内科学分野・テニュアトラック准教授

慢性腎臓病(chronic kidney disease、CKD)は静かに発症、進行し、本邦の1,300万人、世界の8億人(高齢者では約3人に1人)が罹患するとされます。進行すると透析が必要になることと、心血管病やサルコペニア(骨格筋の萎縮と運動機能の低下)など全身臓器の機能低下に連鎖することがアンメットメディカルニーズです。
私たちの血液には、小型の細胞外小胞(small extracellular vesicles、EV)が非常に高濃度で循環しています。EVは生体のほぼすべての細胞から分泌される40-150 nmの微粒子で、中にRNAやタンパク質、脂質を内包します。しかしながら健康状態と疾患状態で、EVがどのような役割を担うのかは十分に分かっていません。
本研究は、オミクス(EVの内包物)、一細胞解析(細胞間/臓器間相互作用)、超解像顕微鏡(EVの分泌機構)、超高感度冷却CCDカメラ(EVの動態)、臨床検体(生物学的指標)など、あらゆる研究戦略を駆使した基礎臨床一体型の研究を行います。“透析に代わる薬”を開発し、老化を制御し健康寿命を延伸可能な先進医療の実現を目指します。

リサーチマップ https://researchmap.jp/7000025580/?lang=ja

伊藤 沙紀子

大学院保健衛生学研究科・テニュアトラック准教授

「全世界の65歳以上人口が5歳未満人口を上回る」という現代において、介護は全人類に共通する課題です。加齢によるADL変化を予測することで、事前に介護の必要度合いの変化を見据えて、適切なタイミングで最適な介護プランに切り替えることができれば、高齢者自身や周囲の人の負担を軽減できます。家族や介護従事者は、その時に必要なケアに加え、将来を見据えて高齢者の生活環境を整えることができます。
本研究では、看護学と情報学という異なる研究分野を融合して、大規模データを用いて地域高齢者のADL低下と医療介護サービスとの関連を明らかにし、その知見を基に最適な医療介護サービスの組合せを特定します。さらに、ケアプラン支援ツールの開発に繋げます。
私はこれまで国内外の研究者とともに医療介護レセプト等の大規模データを活用した医療介護サービスの評価や、低・中所得国における携帯端末を用いた疾病管理システムの開発など様々な研究経験を積んできました。この度、本学のテニュアトラック准教授として独立した研究を展開する機会をいただくことになりました。これまでの研究を学祭的かつ国際的に発展させて、科学的根拠に基づいた最適なケアプランの実現を図り、既存のケアプランの枠組みを新しく開拓します。

リサーチマップ https://researchmap.jp/sakiko_

2023年6月1日付採用

加藤 一希

大学院医歯学総合研究科 分子機構免疫学分野・テニュアトラック准教授

私たちのからだにはウイルスや細菌といった病原体を異物として認識し、排除する免疫機構が備わっています。免疫は自然免疫と獲得免疫に大別されますが、中でも自然免疫機構は受容体タンパク質を介して、宿主由来の「自己」分子は認識せず、病原体分子の持つ特徴を「非自己」として特異的に認識します。この「自己」と「非自己」の区別は厳密に制御される必要があり、この厳密性の破綻は自己免疫疾患の発症を引き起こします。
私はこれまでの研究キャリアにおいて、国内製薬企業での創薬研究、アメリカ留学での自然免疫研究や最先端のクライオ電子顕微鏡を用いた構造解析など様々な研究経験を積んできました。私がこの度立ち上げる分子機構免疫学分野では、これらの異なる研究分野を融合して、自然免疫応答における「自己」と「非自己」の認識機構の解明を目指します。さらに基礎研究によって見出された知見を、自己免疫疾患の治療薬の開発という応用研究までつなげます。

リサーチマップ https://researchmap.jp/katokazu

2022年10月1日付採用

楠山 譲二

大学院医歯学総合研究科 生体情報継承学分野・テニュアトラック准教授

2022年10月より、テニュアトラック准教授を拝命し、生体情報継承学分野という教室を新設の上、独立した研究を展開する機会をいただきました。私は、両親の生活習慣や特性が産まれる子にどのように伝わるか、に興味をもち、特に妊娠期のみに形成される特徴的臓器である胎盤の役割に注目してきました。本学では、胎盤が両親の生体情報を伝達する器官であるという着想のもと、これまでの遺伝学の常識を覆す「胎盤制御性の遺伝機構」の実証を目指します。更に胎盤機能を検査・診断・調節することで、次世代の疾病リスクを永続的に低減する新しい予防医療である、胎盤医学の創出に挑戦します。最終的に、高等生物はなぜ胎盤を生存戦略として用いるようになったのか、という有胎盤類の進化的優位性の解明に繋がることも期待しています。私はこれまで国内外の所属や研究テーマを変えながら、広範な実験技術と異なる視座を得てきました。この度、歯科臨床研修を行った本学に着任することになり、研究が人生にもたらす偶然を嬉しく思っています。自らが変わること、自らが変えること、その両者を畏れず、今の自分自身では想像できない研究展開と、本学に新たな息吹を届けることを愉しみたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

リサーチマップ https://researchmap.jp/JojiKusuyama

塩飽 裕紀

大学院医歯学総合研究科 精神行動医科学分野・テニュアトラック准教授

精神疾患は様々な治療法が開発されている一方で、十分な改善が得られない場合もあり、新しい病態の解明と治療戦略の創出が必要です。また、現在の医学で異常が検出されない症状は「精神症状」として扱われるため、精神疾患は未知の医学領域を内包している可能性があるという観点でも重要です。これまでに、統合失調症で未知のシナプス自己抗体を検出するシステムを構築してきた経験を生かして、テニュアトラックでは神経系と免疫系の相互作用に着目し、統合失調症をはじめとした様々な難治性精神疾患で新規のシナプス自己抗体を発見していきます。さらに、発見される自己抗体が病態を形成していることを、最先端の分子生物学的、神経科学的アプローチで明らかにすることで、これらの自己抗体が除去すべき治療ターゲットになることを示し、新規の治療戦略に結びつけるシーズを創出します。これにより、精神医学領域・神経内科学領域・免疫学領域にまたがる新しい疾病概念が創生され、当該領域に大きなインパクトがあります。さらに、シナプス自己抗体病態にとどまらず、様々な精神疾患のモデル動物保有しており、そこから見いだした分子病態を臨床サンプルでも検証し、精神疾患のバイオマーカ―の創出や病態解明につなげます。

リサーチマップ https://researchmap.jp/shwk

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