第5期次世代研究者育成ユニット一覧

免疫チェックポイント分子の制御による慢性腎臓病の新規治療法開発

森 雄太郎

大学院医歯学総合研究科 腎臓内科学分野 テニュアトラック助教

慢性腎臓病(CKD)は、体内の老廃物と不要な水分を濾過し尿として排泄する腎臓の機能が、年単位の経過で悪化していく致死性疾患です。国民の8人に1人が罹患している新たな国民病であるにも関わらず、病態解明や創薬は十分には進んでいません。本研究では、CKDを進行させている腎臓の老化細胞が、癌細胞と同じように免疫系を狂わせることで慢性炎症を維持しているという仮説を立て、その証明を試みるとともに、新規の治療法の開発を目指します。

ドライバー変異を伴わない肝細胞がん発症機構の解明

岡本 好海

難治疾患研究所 発生再生生物学分野 助教

がん発症には、がん原遺伝子またはがん抑制遺伝子のゲノム変異(ドライバー遺伝子変異)が蓄積することが重要であると考えられています(多段階発がん説)。しかしながら、大規模がんゲノムデータベースを調査すると、10%程度のがん組織では明確なドライバー変異は生じていません。私は、ゲノム変異を伴わない発がん機構が存在するのではないかと考えています。本研究では、マウス肝細胞への一過的な遺伝子導入手法を用いて、ドライバー変異を伴わない肝細胞がん発症機構の再現とその分子機構の解明を試みます。

cAMP/PKA シグナル活性化によるLRBA 欠損症の治療法開発

原 悠

東京医科歯科大学病院 血液浄化療法部 特任助教

LRBAは免疫系のブレーキである免疫チェックポイント分子の発現維持に必要であるため、LRBA欠損症では免疫恒常性の破綻による重度の免疫不全症を呈します。しかし、LRBA変異によってLRBAが欠損するメカニズムや欠損したLRBAの発現を回復させる方法は未解明です。LRBAが腎臓における尿濃縮に必須の分子であることを明らかにした我々の知見を活かし、LRBA欠損症の病態解明と新規治療戦略の開発を目指します。

クローン病における小腸粘膜治癒阻害要因の解明と新規治療開発

河本 亜美

東京医科歯科大学病院 光学医療診療部 助教

消化管の難病であるクローン病の小腸病変は大腸と比較し早期で発見されにくく、予後不良因子です。さらに小腸病変の治療効果に関わる因子は不明です。我々は以前に大腸と比較し小腸では粘膜治癒が得られにくく、より高い薬物血中濃度を必要とすることを明らかにしました。本研究ではクローン病における小腸病変には大腸病変よりも治癒しにくい生物学的な因子が存在すると仮説を立てて検証を行い、クローン病患者の予後改善を目指します。

ヒト腸上皮細胞の「胎児化リプログラミング」に着目した炎症性腸疾患の病態解析および新規治療法の開拓

藤井 悟

大学院医歯学総合研究科 消化器病態学分野 プロジェクト助教

腸管の最表層は1層の腸上皮細胞に覆われ、その再生能力は非常に高く、上皮細胞層が破綻したとしても速やかに再生し元の状態へと回復します。一方、腸上皮の再生機構が慢性的に破綻した状態と言えるのが炎症性腸疾患(クローン病と潰瘍性大腸炎)であり、再生機構が破綻してしまう原因は未だ不明です。当研究では、 腸上皮の再生機構に着目し、炎症性腸疾患の病態解明および新規治療法の開発を目指します。

エピゲノム解析と臨床・疫学研究から解き明かす、歯周病の次世代への影響

吉田 澄子

大学院医歯学総合研究科 歯周病学分野 学振特別研究員(PD)

胎児期から生後早期の環境が、その後の生涯の健康に対して大きく影響することが知られています。母体の歯周病罹患が早産・低体重児出産のリスクとなることがわかっていますが、その後成長した子どもに対してどのような影響があるのかは報告がほとんどありません。本研究では、母体の歯周病の胎盤と母乳を介した子どもへの影響(エピゲノム制御)の全容解明と、基礎研究・臨床研究・疫学研究の融合による強固なエビデンスの確立を目指します。

精密組成制御に基づく抗菌性バイオセラミックスの開発と新機能開拓

島袋 将弥

生体材料工学研究所 無機生体材料学分野 助教

申請者は無機系バイオマテリアル(バイオセラミックス)研究を通じて、骨領域感染症の予防に有用な新材料の開発を目指します。骨組織再生と感染予防とを目指した抗菌性バイオセラミックス開発では、依然として濃度依存的な毒性発現と時間依存的な効果消失という課題が残っています。そこで本提案研究では、申請者が考案した抗菌性付与技術を活用し、従来の課題を解決しうる全く新しい抗菌性バイオセラミックス開発に挑戦します。

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