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INTERVIEWインタビュー

病院経営管理と周辺領域の
学びを実践に生かす

MMA20期生 神田 淳 × MMA20期生 佐藤 文哉 特別オンライン座談会

神田 淳
MMA卒業 20期生
神田 淳
Kanda Jun
東京都出身。2024年3月東京科学大学医療管理政策学修士取得。現在、学校法人東邦大学法人本部経営企画部に所属し、付属病院やクリニックの経営分析および事業戦略立案に従事。大学付属病院の医事課勤務から、現部署への異動に伴い医療経営の専門知識を深めるためMMAへ進学。修了後、現在のポジションで医療機関の持続可能な経営に向けた施策策定を推進している。
佐藤 文哉
MMA卒業 20期生
佐藤 文哉
Sato Fumiya
1998年東京慈恵会医科大学出身。2024年3月東京科学大学医療管理政策学修士取得。現在、医療法人財団慈生会 野村病院の病院長兼内科・総合診療部門長を務め、内科全般、特に感染症を専門とする。MMA入学時は副院長であり、在学中に院長に就任。また、杏林大学医学部臨床教育講師も兼任し、医学生、研修医の指導も行っている。高齢者救急や感染症診療、院内感染対策、病院管理など多面的に医療の質向上に尽力している。

まず初めに、MMAの志望動機を教えて下さい。

佐藤:入学前は、現在の病院(野村病院)で副院長をしていました。願書締切の1か月前くらいに理事長から呼ばれて、「東京医科歯科大に医療管理学の修士のコース(MMA)があるから、先生行ってみない?」と言われました。そこで初めて、東京医科歯科大にMMAがあることとそこで病院管理や医療経済の学びができることを知り、まさに今自分と病院にとって必要なことだと思い受験しました。

神田:私は、大学付属病院の医事課で診療報酬請求に関わっており、DPC調査研究班代表の伏見先生(MMAコース担当)のことはよく存じていましたが、MMAのことは知りませんでした。MMAのことは、MMAの卒業生である方が私の勤務する大学病院のアドバイザーとして来られていた時に伺いました。その後、経営企画部に異動になり、大学が経営する3病院と2つのクリニックの経営分析を命じられ、MMAの受験を決めました。

入学後の仕事との両立についてお聞かせください。

佐藤:受験での面接のときに、病院での診療業務との両立を聞かれたときは、「頑張ります」と答えたのですが、始まると18時から21時まで講義があり、ハードでした。大学は、勤務先の病院から比較的通いやすい場所にありました。それでも、大学での講義を受けるためには、17時には病院を出る必要があり、職場の同僚には事前に説明をしました。職場の同僚が本当に快く送りだしてくれたことは今でもありがたく思っています。あとは、ウェブでの講義もあり、その際は、講義に集中するため自宅から受講していました。自宅では、主に子供の部屋を使わせてもらっていました。家族にもずいぶん気を遣わせていたのではないかと思いますが、快く応援してくれたのはありがたいことでした。

神田:職場の上司も同僚も快く後押ししてくれ、勤務時間について始業を前倒しした時差出勤にシフトを変更してもらうことができました。毎日、朝早くから勤務して16時半には終業しお茶の水の大学に向かっていました。そもそもMMAを志したのは、他の医療経営の大学院と比較して授業内容が充実していると思ったことだったので、覚悟はできていました。1つの講義が終了後、レポート提出が課されているものも多かったので、毎日の講義に加え、週末のレポート作成とかなりタイトなスケジュールでしたが、得られるものが十二分にありました。私たちの期は、ウェブでの講義も多かったのですが、親睦会も沢山開催していました。親睦会では、同期や先輩の方とコミュニケーションをとることができ非常に良かったです。修論の執筆にあたっても意見交換したり、アドバイスをいただけたのは、非常にありがたかったです。

MMAでの学びは現在の職場でどのように生かされていますか?

神田:私は、経営企画部で付属病院の経営分析を主にしていますが、MMA卒業生ということで、説得力を持って発言できていると思います。医療政策の5年、10年先を見据えて、視座を高く持って病院経営に貢献することができるということが私の強みだと思っています。学内でも私の発言に耳を傾けてくれる人が入学前に比べて増えました。

佐藤:入学前は副院長であった私がMMAに入学を進められたのは、理事長は、私をいずれ病院長に就く人だと想定されていたと思っています。入学前に病院長の拝命時期はわかっておりませんでしたが、図らずも在学中の11月に病院長を拝命しました。業務内容が変わる中、大学院の課題をこなしながら、病院長を務めるのは体力的にも精神的にも大変辛かった時もありました。MMAでの学びを通して、日本の医療政策における課題や今後取り組む方策を理解することができました。この知見は、病院長としての意思決定や病院運営に役立っています。

MMAでの学びの内容で印象深く残っていることを教えてください。

佐藤:講義を受けていく中で、同級生との共同作業やディスカッションがあったり、一緒に発表したり、大学卒業後20数年ぶりに課題に取り組むいい経験になりました。講義の時は、なるべく質問をするように心がけました。学びなおしの重要性を感じ取った1年でした。その中でも、コミュニケーションの授業でシナリオを作って実演したことは、良い経験でした。他のグループの同級生のシナリオの完成度の高さに圧倒され大いに刺激を受け、グループワークの重要性を学びました。

神田:「医療とコミュニケーション」ですね。グループに分かれてロールプレイをするのですが、私と佐藤さんがグループを組みました。佐藤さんとは病院の経営に関する共通の課題が沢山ありました。講義の時間外にも打合せをしました。このことがきっかけで佐藤さんと良くコミュニケーションが取れるようになったと思っています。
また、DPCデータ分析に関する講義もあり、統計学に基づく分析方法や統計ソフトのRの使い方も学びました。今後機会があれば勉強を続け、業務に活かしていきたいと思っています。
講義のほとんどは、自分の関心のあることで、面白く、楽しく受講できました。東京外語大学の先生が担当の歴史は今まで知る機会がなかったですし、医療の法律も学ぶことができました。専門外の講義は難しくレポートが大変でしたがどの講義も興味深く楽しく学べました。

お二人は医療管理学コースでしたが、医療政策学コースの方との違いは何か感じられましたか?

佐藤:必須の科目は異なっていましたが、2つのコースは同じ授業を受ける機会が多くありました。医療政策学の人達が受けている講義で医療管理学コースの人が少ない科目もありましたし、その逆もありました。医療政策に関しては行政とのかかわりもあり、難しい内容もありましたが、病院管理をしていくうえで参考になることが沢山ありました。医療政策コースの人達とは講義内でもかかわりはもちろんありましたが、講義外での集まりも企画しました。医師院生とディスカッションしたいと誘われた政策学の人たちと日曜日にセミナーを開いたこともありました。終末期医療や意思決定など、医師以外の人には馴染みのないことを政策学の視点から研究をしていました。

現在の業務でMMAの学びをどのように生かしていますか?

佐藤:職員からの質問に管理者として、学びをフィードバックしています。医療中心の考え方から、人的資源の配分、病院と受診者との関係なども病院の管理運営には重要であることを気づかされた1年でした。特に、医療経済や法律はMMAで地固めができたと思います。それでも、日々の業務の上では、人を動かしていくことの難しさを痛感しています。

神田:それについては私も同感です。私の持論として、ある程度の規模の病院は、事務長だけでなく病院のトップである病院長は、人を動かすという観点で、医療マネジメントを学んだ人が配置されるべきだろうと思っています。医師がマネジメントを学ぶという点について佐藤さんはどのように感じられていますか?

佐藤:MMAの入学前は、マネジメントは病院長に求められる分野ではないかと思っていました。MMAに入学してくる医師は、自分の病院のことだけでなく、医療全体のこと、行政のことを考えている人が来ていました。その人達と話をする中で、医師も医療管理、医療政策を学ぶことは大事ではないかと思い始めました。職種関係なく医療に関わる人が医療管理や医療政策を学ぶことは、良い機会だと思っています。

コース担当岡田先生より

岡田:MMAへの出願を考えている方に向けて、学びがどのように役立ったか、また新たな仲間や未知の世界に触れた経験について、ご感想をお聞かせください。

佐藤:医師であるため聞いたことのあるタイトルの講義もありましたが、ほとんどが今までの知識は表面上の知識であったことに気づかされました。MMAでの学びで、課題を掘り下げて考えることができたことは大きかったと思います。同期の学生は、医師以外に事務職、起業家、コメディカル(臨床検査技師、臨床工学技士)と多様な方が集まっており、情報交換もできました。また、医療関連の会社に勤めている方や研究者の方から、職場見学の申し出があり受けました。学生同士のつながりは、在学中はもちろん、卒業してからも大事にしていきたいと思っています。

神田:佐藤さんも言われた通り、集まったメンバーが多様で、いろんな視点で話が聞けたのは非常に面白かったし良かったと思いました。

岡田:同窓会もあるので、期を超えたつながりもできると思います。MMAは、良い仲間づくりができる場でもあると思います。

佐藤:講義をしてくださる先生の中にはMMAの卒業生もいて学生に共感してくださるのを感じていました。卒業して終わりではなく、その子弟関係をずっと持ち続けていければと思っています。

神田:良い人脈ができるのもMMAの良いところですね。4月の新入生歓迎会で新しい方とお話できるのも楽しみにしています。困ったときに相談できる関係性も大切だと思っています。私もMMAの期を超えたネットワークを幅広く作っていきたいです。

コース担当伏見先生より

伏見:MMAを選んだ決め手を率直にいただけますか。また、ここは改善してほしいということもあればお願いします。

佐藤:カリキュラムが充実しており、受講は大変でしたが、4月から12月の短い期間でハードなスケジュールではあったが、効率よく勉強したいという人にはピッタリだったと思います。また、国立大学法人なので学費がリーズナブルであったこともよかったです。

神田:平日夜に開校していることが私のライフスタイルにマッチしていました。在学期間中は、土日の日中は家族と過ごして、夜はレポートを書くという生活をしていました。私の所属していた医療管理学のコースでは1年の間に講義を受けながら修士論文も書かないといけなくて大変でした。1年目は講義、2年目は修士論文に専念できる2年間の医療政策学コースにしても良かったかもしれないと後から少し思いました。

伏見:医療経営関連の講義についてはいかがでしたか?

神田:一橋大学の先生が担当する講義では、医療経済と経営の総論を学べたので、時間があれば直接病院経営に関するケーススタディをしたかったです。

佐藤:医療経営でいえば、地方の病院の統合に関することを今回のMMAで学べたのは大きな収穫であったと思います。

伏見:先ほどもお話されていましたが、東京外大の先生と一橋大学の先生の授業の感想をもう少し詳しく教えて下さい。

佐藤:一橋大学の先生が担当された人的資源管理では、一人1枚ビジネスモデルキャンバスを作りました。医療機関のものはうまくできるか不安でしたが、自分の職場に当てはめて作るのが新鮮でした。職場に帰って、職員に「みんなもやってみない?自分の部署のビジネスモデルキャンバスを作ってみよう。」という働きかけをしました。法律と経済に関しては、普段の業務で馴染みがなく、難解なことも多くてレポート作成のたびに履修を後悔しましたが、レポートを作成することで理解が深まって良かったと思います。

神田:履修登録時は、どの講義も興味深く思えて、講義をとれるだけ履修しましたが、4大学(東京医科歯科大学*、東京工業大学*、一橋大学、東京外国語大学)でバラエティに富んだ講義を受講できるのは、MMA最大の強みではないかと思いました。MMAで学びたいと思う人は同じ意見の人が多いと思います。
*現東京科学大学

本日はお忙しい中、貴重なお話を伺いありがとうございました。MMAで得られた専門知識だけでなく、在学中に築かれた人脈や多様な視点の学びが、これからのお二人のキャリアを支える大きな力になることを実感いたしました。また、期を超えたネットワークが生み出す相乗効果によって、医療の質や経営の在り方がさらに高まっていくことを期待しています。今後も、卒業生同士や教員とのつながりを大切に、新たな挑戦をぜひ続けていただければと思います。今日は本当にありがとうございました。

聞き手:
新城 大輔
東京科学大学
大学院医歯学総合研究科
医歯学専攻 環境社会医歯学講座
医療政策情報学分野 准教授(当時)

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