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INTERVIEWインタビュー

MMAでの学びと社会実装
~医療ビジネスを通じて~ 前編

MMA12期生 大山 功倫 × MMA12期生 園田 愛 特別オンライン座談会

大山功倫
MMA卒業 12期生
大山 功倫
Ohyama Katsunori
大阪府出身。2016年東京医科歯科大学医療管理政策学修士取得。その後、東京医科歯科大大学院歯学総合研究科博士課程に進学。MMA入学時は英国系製薬企業に勤務しており、卒業後、2021年2月スペシャリティケア事業担当執行役員、2023年4月スペシャリティケア営業担当取締役に就任。
園田愛
MMA卒業 12期生
園田 愛
Sonoda Ai
福岡県出身。2015年東京医科歯科大学医療管理政策学修士取得。大学卒業後は、医療経営コンサルティングに従事後、株式会社リクルート事業開発室を経て、2009年株式会社インテグリティ・ヘルスケア創業。同時に医療法人社団鉄祐会を共同創業。2011年より東日本大震災の被災地に赴き、医療機関開設および大規模復興事業を現地統括。MBA、MMA取得後、2016年よりヘルステック事業を開始。

第4回は、MMA12期生で医療管理学コースを2015年に卒業した株式会社インテグリティ・ヘルスケア代表取締役社長の園田愛さんと同じくMMA12期生で医療政策学コースを2016年に卒業した英国系製薬企業取締役の大山功倫さんにお話を伺いました。

園田さんも大山さんも大学では経営学を専攻。卒業後、企業に就職。園田さんは、ヘルスケアのベンチャーと医療法人を立ち上げ、創業者として経営に関わる中、MMAに入学。大山さんは、現在お勤めの製薬会社でブランドマネージャーとして活躍していた時に、MMAに入学されました。MMAの学びがお二人のキャリアの中で、どのように活かされているのかを中心にインタビューを行いました。(聞き手:MMA担当教員 新城大輔准教授)

お二人がMMAに興味を持ったきっかけを教えてください。

大山:MMAに入学した当時は、製薬会社のマーケティング部門の一員で、ブランドマネージャーをしていました。ブランドマネージャーはブランドの製品すべての責任者でブランドを統括するリーダーとしての役割を担います。私が勤めている会社は海外に拠点を持ち、グローバルに展開しており、アメリカやヨーロッパなど各国のマーケティングの担当者と会議をしていました。その中で、薬の販売実績が人口に比例していないということに気が付きました。例えばイギリスの人口は日本の半分くらいですが、薬の売り上げは、4分の1くらいでした。さらには医療費も人口一人当たりに対して少ないということが分かりました。一方で、アメリカの人口は日本の人口の約3倍なのですが、薬はもっと売れていて、医療費も多い。これは、何なんだろうという純粋な疑問が出てきました。会議の中で話しているうちに医療提供体制がそれぞれの国で違う、薬価も違う、患者さんの医療へのアクセスも違うということが分かってきました。特に、私の勤める会社の本社があるイギリスは、日本とは医療の仕組みが根本的に違いました。国によっては、患者さんは、医療や薬へのアクセスも大変な状況であることを知りました。海外の同僚からよく「日本は恵まれているよ」と言われていたのですが、その意味を分からないままに薬のブランド戦略を立てるのはどうだろうかと思い、日本を含めて世界の医療の仕組みを正しく理解したいと思ったのが医療政策に興味を持ったきっかけです。世界の医療制度を理解した上で、日本がいかに恵まれているかという意味を知りたかったのです。
 MMAを選んだのは、医療制度を学べるところを探していた時に河原和夫先生(2000年ー2022年 MMA 担当教員)と出会ったことです。河原先生がWebに公開された論文や講演会の資料を読みあさりました。医療と政治の絡みなどを解説されていたものもあって、わかりやすくかつ面白かった。この先生のもとで医療政策を学びたいと思うようになり、東京医科歯科大のMMAを選びました。

園田:私は大学では、経営学を学びました。卒業後10年くらい病院の経営コンサルティングに従事しました。この間医療について学び、その後事業会社で医療系事業に携わり、今の会社を立ち上げました。最初に取り組んだのは在宅医療でした。当時、これからもっと必要だといわれていながらも仕組みとしてはまだ未成熟であった在宅医療が、日本中どこでも当たり前にある社会になることを目指して、在宅医療のクリニックを東京都文京区に作りました。その1年くらい後に東日本大震災が起きました。私は現地に移住し復興に必要な医療機関開設と復興活動に取り組みました。3年後に戻った時には、東京のクリニックは仲間の尽力により組織規模が大きくなっていました。それに伴い、創業時の組織運営のやり方を変えていくべき時期にありました。そこで、成長した医療法人の円滑な運営に向けた組織づくりに取り組むことを次の目標にしました。その時、改めて医療経営について学びたいとの思いが強くなり、仕事をしながら学べる場所を探しました。MMAは職場と同じ文京区にあるので立地もありがたかったです。

仕事との両立はうまくできましたか?

大山:同僚には何も言わず黙っていきました。授業の開始時間に間に合うように大学に行くことが大変でした。夕方は特に時差の関係で仕事が多く、その時間に抜けてMMAの教室に入ることがとても大変でした。

園田:法人には理解はしていただいていましたけれども、現場が動いてる中で抜ける申し訳なさなんかもあって、時間のやりくりには苦労はありました。しかし私の卒業後に同じ法人からMMAに入学した人も出てきて、頑張って通ってよかったと思いました。

仕事が忙しいときにMMAで学び続けるモチベーションは?

園田:MMAに通っていた時は忙しかったけれども、楽しい思い出しかないです。

大山:園田さんとは同級生で、園田さんは1年間の医療管理学コース、私は2年間の医療政策学コースだったので、卒業年度は、園田さんの方が1年早いのですが、講義は同じで、ホワイトボードを使ったワークショップなどでよくディスカッションをしていました。少人数なので同じグループになることも何度もありました。議論は授業中に終わらず、終了後場所を変えて話し続けることも。講義が月曜日から金曜日までが一単元のことが多く、最終講義の金曜日には講師を交えて授業後に集まったり。講師は各界を代表する名物的な人も多く、直接議論を交えることができたのは面白かったです。

印象に残っている講義やイベントなどを教えてください

園田:一橋大学とのコラボレーションの講義も魅力の一つだと思います。各分野の論客である先生方が、自分たちの講義に来てくれて、直接話すこともできました。中医協(中央社会保険医療協議会)の中心的な委員を務める先生からは、まさに、その当時、国が抱えていた課題の解説が聞けたりもしました。

大山:表面にでてくるニュースの根底にある思いや意図などを聞くことができ貴重でした。

園田:手術室の見学もさせていただきました。私は、急性期医療の現場に触れることは少なかったのですが、現場で説明していただくことで、急性期の病院の医療安全対策など非常に理解が進みました。どの講義にも当てはまるのですが、体系立てた学びと共に、その時々の、実践的な、今、先生が関心を持っていることを伝えてくださることも多く、教科書の勉強ではなく、教科書になる前の情報や現在起きている課題を提示されて、「一緒に考えよう」と言ってくれた先生もいました。

大山:園田さんと同意見で、それぞれの話をその領域のスペシャリストから聞けることが魅力でした。製薬会社に勤めているとあまり接点がなかった公衆衛生の先生であったり、厚生労働省の先生であったり、いろんなところからスペシャリストが講義に来られていて、学びや気づきが多かったです。一橋大学とのコラボレーションの講義は私も楽しかったです。

MMAで学んでよかったことを教えてください

大山:MMAのカリキュラムが私には合っていました。1年目は、座学中心で、2年目は、自分で好きな研究ができます。園田さんたち、医療管理学コースの人は、1年目で論文も書かないといけないので、大変そうでしたけど。あれがよかったですね。1年目で基本的なことを学び、2年目は自らが考えた課題に取り組む。勉強になってよかったです。2年目に私は、各国の医療提供体制の違いを調べて分析を行い、今後の日本の医療体制の提言に取り組みました。自ら調査を行うことで各国の医療体制がよく理解ができました。
 1年目の講義が終わってみると、もう少し、費用対効果分析をやりたかったかなと思って、それで、博士課程に進学しました。その後、指導教員のアドバイスのもと、色々自分で勉強して、ある程度、薬の費用対効果分析ができるようになりました。研究の楽しさが分かってきました。自分で課題を探して勉強するのは大切でその気づきをMMAでは与えてもらえたのがすごく良かったです。
 MMAでは、基礎的なところが相当知れたと思っています。基礎的なことを学んだうえで、そこからは自分で学びなさいって言ってくださっているような講義のスタイルが私には合っていました。2年目の研究の期間を経て、元来、勉強が嫌いなタイプの私が勉強するようになりました。夜、そして空いた時間に勉強することが習慣化できるようになったのはMMAのおかげだと思っています。

MMAでの講義でのワークショップが良かったといわれていましたが、もう少し詳しく聞かせてください。

大山:みんなでホワイトボードを使って一つのテーマに沿って議論しました。園田さんは、皆のまとめ役をよくされていて、適切なフレームワークを出してくるんですよ。「じゃぁ、これで、ロジックツリー書きましょう」とか。さすが経営者だと思いました。鍛えられ方が違うと。最後は、みんなの言いたい放題の発言をまとめていました。このあたりの、会議の運営能力が高い人が沢山いて、すごく勉強にもなりましたし、習得もできました。同級生は、それぞれの領域からのエキスパートが来てるので意見が多岐にわたっていて、鋭い意見がいくつもあって、みんなでYESっていうのはあんまりないんですよね。反論がいっぱいあって。いろんな考え方をしている人がいて勉強になりましたね。

園田:最終目的は違っても、共通項としてみんな医療の世界を良くしたいという思いで学びにきているので、学びには貪欲な姿勢なんですよね。また、この場に対する貢献心もあるので、面白い議論ができたのだと思います。MMAでの発言はリスクフリーなんでしょうね。皆さんとのびのびと議論させていただいたようにと思います。私たちの期には、ジャーナリストの方もいて、その方の「伝える力」もすごかった。医療コミュニケーションの講義では、伝えるために小道具を準備してくださいました。

MMAの講義スタイルは、入学当初からイメージできていましたか

園田:良い意味でちょっと違っていました。私はどちらかというと、大学での勉強なので、教科書的な、つまり1冊の本があって、第1章、第2章、第3章ときて第4章で終わりのような学びのイメージがあったのですが、実は、全然違って、「テーマをどんどんもらう」みたいな感覚がありました。教科書を学ぶのとは違う、何か生き物と対峙しているみたいな、そんな感覚を覚えました。

大山:同じです。基本的には紙のプリントが配られるのですが、それがテキストじゃない、生きたものっていう感じがしました。プリントは、その年のMMAのために先生方が作ったものであって、すごい良かったですね。それと今までは、「分からないことは分からなくてもいいからそのままにしておこう」みたいな感じの性格だったのが変わったんですよね。医療の世界に私はいるのだから、医療に関する知識は自分がちゃんと知っておかないといけないという自覚みたいなものが芽生えて結構調べるようになりました。分からないことがでてきても、自分で知識を補完していく力がついたのは、MMAのおかげかなと思っています。

園田:学びと自分たちの実践をつないで、理解を深めていたように感じます。

大山:それから、ディスカッションをするから、全然知らない知識のまま入ったら面白くないじゃないですか。やっぱり色々わかった上で、みんなで議論するからハイレベルな話ができるし、深く話もできるので、予習していました。それがよかった。それはみんなよくわかっていて、他のみんなもよく勉強してたと思います。

後編は、社会の中でのMMAの意義をMMA担当教員である岡田就将教授を交えてお話いただきます。

聞き手:
新城 大輔
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
医歯学系専攻 環境社会医歯学講座
医療政策情報学分野 准教授

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