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INTERVIEWインタビュー

公衆衛生医師業務に活きる
MMAの学びとつながり

MMA12期生 後藤 真理子 特別オンライン座談会

小松本 悟
MMA卒業 12期生
後藤 真理子
Goto Mariko
東京都出身。大学卒業後、内科医として勤務。2004年に公衆衛生医師として東京都に入都。2010年より管理職として、主に感染症対策や健康増進施策、子育て支援施策の推進にあたる。MMA入学時は、荒川区健康部健康推進課長。2016年東京医科歯科大学医療管理政策学修士取得後、2017年より渋谷区健康推進部地域保健課長を経て、2022年4月より千代田区保健福祉部健康推進課長。

今回は、MMAの12期生(医療政策学コース)であり、東京都で公衆衛生医師として活躍する後藤真理子さんにお話を伺いました。後藤さんは、大学卒業後、内科医として診療に携わるなかで、医療政策を通して、住民と社会の健康増進と幸福度向上を目指したいと考えるようになり、公衆衛生医師として東京都に入都しました。

MMA在籍当時は、荒川区健康部健康推進課長として、区民のヘルスプロモーションを牽引し、修士号を取得後、渋谷区の子育てネウボラの立ち上げを担い、現在は、千代田区保健福祉部健康推進課長として新型コロナウイルス感染症対応、健康増進、子育て支援に関することなどに取り組んでいます。

まず初めに、公衆衛生医師として東京都を選んだ理由をお聞かせください

東京都を選んだのは、都には先駆的な政策が多く他の自治体のモデルにもなっており、その先進的な施策に携わりたいと考えたためです。一方で、東京都も地方自治体の一つであり、都民の生活に寄り添った施策に関わることが魅力でした。

後藤さんはMMAに入学時にすでに東京都で医療政策を推進するお立場にあったかと思うのですが、MMA受験の動機を教えていただけますか?

東京都で色々な医療政策に関わっているなかで、都の方針や課題、住民のニーズをとらえて施策を企画・実施・評価していくために医療政策を系統的に学びたいと思いました。また、世界に目を向け、諸外国を踏まえてより良い政策を実行したいと考えていました。その時に、MMAの修了生である知人から話を聞き、魅力的な講義内容と、もう一度学生生活をすることに惹かれ、受験を決めました。仕事をしながら通学できることも決め手の一つでした。

すでに行政で医療政策に携わっていた中で、MMAでの学びはどのように感じられましたか?(コース担当岡田先生より)

医学部教育では、医師の先生方の講義を受けることが多いですが、MMAは四大学連合にて、東京工業大学、一橋大学、東京外国語大学の先生方の講義を受けることができたのが新鮮でした。法律、医療経済、ICT、死生観など、それぞれの分野の第一人者から学べたのは、大変有益でした。MMAで様々なことを学んだおかげで、多角的に物事をとらえることができていると感じています。特に、新型コロナウイルス感染症(以降、コロナ)の対応や危機管理については、講義で学んだリスクマトリックスの考え方を判断基準にしています。また、講義で統計学を学んだことで、自信をもって事業評価やニーズ調査の統計分析を行えるようになりました。行政は、ぶれずにスピード感をもって施策を進めることが重要です。統計結果を示すことにより、多方面からの調整についても、譲れないベースラインを理解していただくことができています。

MMA在籍当時は非常に多忙な日々を送られていたとお聞きしましたが

当時は、部下が80人くらいいました。一人ひとりに説明をして理解を求め、定時に帰る生活をしていました。行政は、議会対応が最優先であるため、時間通りに通えないことも多々ありましたが、同期に支えられて頑張ることができました。

同期にはどんな方がいらっしゃいましたか?

同期はメディアの方、医療系企業の経営者、製薬会社の方、基幹病院のコーディネーターや私と同じく医師の方などがいました。大学病院の感染症専門医の方もいらしたので、今でも相談させていただいています。色々な分野で活躍している方と知り合うことができ、良い人脈ができました。困った時に助けられたこともあり、感謝しています。MMAの講義は、グループワークなどディスカッションが多いので、様々な立場の人の意見をきく貴重な場でもありました。行政の仕事では、関係機関や多職種との調整が必須であるため、MMAで多くの人とディスカッションし、考え方を聞けたのも良い経験になりました。なかには、東京都の保健医療計画や地域医療構想を議論する場もあり、想定外の発見があった良い思い出です。同期は、モチベーションの高い人たちでお互いに刺激しあえる関係です。

MMAは、1年目の12月末までは、講義が中心で、その後から修了までは、課題研究を行います。後藤さんの課題研究のテーマを教えていただけますか?(コース担当伏見先生より)

私の研究テーマは、自治体における公衆衛生医師の役割でした。公衆衛生医師が東京都には100人以上在籍しており、その利点や存在意義と価値を研究しました。全国の自治体との組織や役割の比較を行い、さらに各分野において専門的視点をお持ちの方にインタビューをさせていただき、どう行政の医師が見られているか、何を期待されているか、何に注力すべきかについて意見交換をしました。東京都における公衆衛生医師の状況を把握し、自分自身で整理をして、今後何を目指すべきかを考えることができて良かったと思います。また、首長の方や東京都医師会副会長ともお話をさせていただき、そこでも人脈が広がりました。

修了後、MMAで学んだことが業務に活かされていると感じるときは?

修了してから2年後にコロナによるパンデミックが発生し、危機管理政策が必要になりました。MMAで幅広く学んできたことにより、多角的視点から全体像を俯瞰し、必要な対策を、スピード感をもって進めることができたと思っています。療養者の支援、クラスター対応、ワクチン接種などは人材育成とDX化を進めながら行い、医療体制の整備については、病床確保とオンライン診療の拡充などを進めました。東京都は人口が多いので、感染者数も多く、全国から注目を集めているため、行政の迅速で的確な対応がより一層大切だと考えています。都民の皆さんに協力いただくためのエビデンスや、支援のためのシステムをスピーディに構築できたのは、MMAで系統立った幅広い医療政策を学んでいたことが大きかったと思います。また、コロナ禍において、管轄の医療機関に数多く訪問してきました。その中には、MMAの修了生もいらしたため、初対面にもかかわらず、スムースに話ができました。同窓生の繋がりがあるのも魅力の一つだと思います。

後藤さんが感じる医療政策分野において特に重要だと感じているものを教えてください。

重要と考えていることは2点あります。個人的な想いを入れると3点です。

まず、目の前のことを着実に進めながら、常に中長期的視点で先に見据えることが政策論の中では重要だと考えています。コロナ対応もそうですが、目の前のことに集中しすぎて方向性を見誤り、出口が見えなくなってはいけないと思います。2つ目は、方向性を決める時は様々な立場の人の意見を丁寧に聞き、そのうえで決定したことは強い意志を持って進めることです。立場の違いによって意見が異なることがあるため、社会として進むべき方向や方策の決定には多くの方の意見を聞く必要があると思います。ただし、すべての希望を取り入れることはできないので、決定後は理解と協力を得ながら全力で推進することが重要だと考えています。

最後に、想いとしては、行政の中で公衆衛生医師は、超少数職種であり、医学的見地からの企画・立案、事業運営、評価だけではなく、行政人としての事務能力や調整能力が必要だと考えています。そのうえで組織を運営することで医療政策を実現し、存在感を発揮できると思います。公衆衛生医師は全国の自治体の中で東京都に一番多く在籍しています。都にこれだけの医師が在籍している意義を示していきたいと思います。

今後の目標や抱負をお教えください

コロナ禍前に「渋谷区子育てネウボラ」というフィンランドを参考にした子育て支援制度の立ち上げを担当しました。少子化対策として子育て支援は、国も東京都も力を入れているところです。そこでネウボラに関するPR動画を作成し、首長の方や、フィンランド大使館の参事官と一緒に出演しました。

2020年のパンデミックの年は、コロナ対応に力を尽くしながら、ネウボラの新規事業の整備やネウボラのための庁舎建設を進めていました。この時に行政の広報誌で紹介されました。

最近は、コロナ禍における自殺率の上昇が課題になっており、救急医療機関等と連携した自殺未遂者支援に力を入れています。

このように幅広く住民を支援できるのが公衆衛生医師の魅力だと思います。公衆衛生は、社会全体の命と健康を守り、子育て世帯に伴走し、様々な理由で困難を抱える方を適切に支援するものと認識しており、そこに携わる一員として、時代のニーズをとらえて政策を推進していきたいと考えています。

最後に入学を検討されている方へのメッセージをお願いします。

特に行政での公衆衛生分野は、感染症対応、子育て支援、健康増進・介護予防など様々な年代や状況の住民支援の政策に関わる仕事であり、多角的に物事をとらえる力が重要です。そのために医療に限らず幅広い知識が必要になると思います。MMAでは、これらの知識を四大学連合によって各分野の第一人者の先生の講義を受けることで身に着けることができます。また、同期はモチベーションの高い人たちで、培われる人脈は何ものにも代え難いものです。視野を広げ、繋がりを構築できるMMAに通うことは財産になると思います。さまざまな分野で医療政策や医療管理に携わる方には是非学んでいただきたいです。

お忙しい中、お時間をお取りいただきありがとうございました。

聞き手:
新城 大輔
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
医歯学系専攻 環境社会医歯学講座
医療政策情報学分野 准教授

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