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INTERVIEWインタビュー

MMAでの学びを
病院移転・マネジメントに生かす

MMA1期生 小松本 悟 × MMA1期生 佐藤 大介 特別オンライン座談会

小松本 悟
MMA卒業 1期生
小松本 悟
Komatsumoto Satoru
東京都出身。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学研修医を経て、1984年米国ペンシルバニア大学脳血管研究所留学。1986年帰国後、慶応義塾大学神経内科医長。1990年足利赤十字病院着任。1994年同病院副院長に就任。2005年東京医科歯科大学医療管理政策学修士取得。2008年足利赤十字病院院長に就任。2010年慶応義塾大学医学部客員教授。2013年獨協医科大学臨床教授。2016年栃木県病院協会会長就任。2017年日本病院会副会長就任。2019年アジア病院連盟会長就任。2020年国際病院連名理事就任。現在、足利赤十字病院名誉院長並びに藤田医科大学特命教授。
佐藤 大介
MMA卒業 1期生
佐藤 大介
Sato Daisuke
北海道出身。慶應義塾大学総合政策学部卒業、2006年東京医科歯科大学医療管理政策学修士取得後、同大学院で医療政策情報学博士(医学)取得。2012年東京大学医学部附属病院 企画情報運営部/企画経営部 助教。2017年厚生労働省 国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部 主任研究官。2018年厚生労働省 国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部 主任研究官(併)保健医療経済評価研究センター 主任研究官。2019年千葉大学医学部附属病院 次世代医療構想センター 副センター長/特任准教授。2022年4月より藤田医科大学専門職大学院設置準備室室長を併任。

2004年大学院医歯学総合研究科修士課程医歯科学専攻に設置された医療管理政策学(MMA)コースは今年で19年目を迎え、沢山の修了生が医療のフィールドで活躍しています。今回は、MMAの1期生である足利赤十字病院名誉院長の小松本悟先生と千葉大学医学部附属病院 次世代医療構想センター特任准教授の佐藤大介先生にお話を伺いました。

小松本先生は、足利赤十字病院の副院長、佐藤先生は、慶應義塾大学在籍中にMMA1期生の募集を見て、小松本先生は1年コースの医療管理学コース、佐藤先生は2年コースの医療政策学コースを受験・入学されました。小松本先生はMMAで修士号を取得後、2008年足利赤十字病院院長に就任。院長として、JCIの認証取得や病院マネジメントにおいてご活躍されるとともに、日本病院会副会長、アジア病院協会の会長や国際病院連盟の理事などをお務めになられており、現在は、足利赤十字病院の名誉院長および藤田医科大学の特命教授をされています。また、先日は令和4年度の瑞宝中綬章を受章されました。佐藤先生は、MMAで修士号を取得後、博士課程に進学し、東京医科歯科大学大学院において博士号を取得された後、東京大学医学部附属病院企画情報運営部の助教を経て、厚生労働省・国立保健医療科学院において、NDB等の医療ビッグデータを用いた解析に従事され、現在は、千葉大学医学部附属病院 次世代医療構想センターの副センター長/特任准教授をされています。また、2022年から藤田医科大学専門職大学院設置準備室の室長に就任し、小松本先生と一緒に藤田医科大学において病院経営学管理学専攻の設立の準備をしています。

まず初めに受験の動機を教えてください。

小松本:1994年から足利赤十字病院の副院長になり、2003年ころから今後の病院のマネジメントの方向性について考えるようになりました。当時の病院は、山の裾野に立っており、アクセスは悪いし、建物に関しては、動線も悪く、全面移転の話も上がっていました。病床稼働率も90%がやっとで大変行き詰っていました。そのため、病院のマネジメントや病院の建築を勉強したいと考えていました。今でも覚えていますが、2003年12月の中旬、朝の7時台のテレビのニュースで、東京医科歯科大学のMMAコースの設置構想を知りました。それで、9時過ぎに大学に電話で問い合わせました。その後、1月に募集要項を受け取り、受験しました。受験の動機は、事前面談の際、足利赤十字病院に必要なものとMMAの教育が符合しているなと思ったからです。また、勤めながら通学できるところも魅力の一つでした。私に限らず、現場のマネジメント職が1年間病院を休んで通学することは難しいと思います。

佐藤:私は当時大学4年生でした。大学へは、医師や医療の専門職ではない形で医療に関わりたいと強く思って総合政策学部に進学しました。大学での専門は、政策だけにとどまらず、ITや経営学も学びました。同窓生には、有名なIT企業の創業者や、病児保育を手掛けているNPO法人の代表者がいたり、多くの著名な経営者がいます。私は医療分野でできることを探していたところ、友達が新聞に掲載されていたMMA設置の記事を教えてくれました。当時、就職先は決まっていたのですが、これは是非チャレンジしてみたいと思って受験しました。入学後、私のような新卒を想定してなかったが、入学試験では、私の熱意が高く評価されたことを知り嬉しく思いました。

入学当時の状況を教えてください。

小松本:私は、病院経営や病院建築設備に特に興味があり、独学で勉強してきました。当時は学問として確立されてなかった分野で、MMAの講義を聞くことで、これまでの経験を論理的に整理でき、現場で活かすこともできました。実際には、現場で通用するのかと疑問に感じたことも当時ありましたが、その疑問が動機となり、いろいろなセミナーに参加したり、調べたりすることもありました。このように、学んだことを現場で実践し、納得いかないことはさらに追及していく過程の中で、病院経営は学問として成立するのだなと思いました。

足利市から毎日通われていたのですよね?

小松本:通学は大変でした。それより、足利赤十字病院の全面移転の計画に向けて、MMAで学び、もっとマネジメント能力を上げて病院の経営に貢献したいという使命感の方が強かったです。また、周りの職員の理解と協力があり、在学時は午後3時40分の電車に乗るために、会議を朝の7時に設定してもらったり、遅くとも午後3時までに終わるようにしてもらったり、配慮してもらったことが大変ありがたかったです。だからMMAの講義は1日も休まず、毎日指定席のように一番前の真ん中に座って講義を受講していました。私をバックアップしてくれている人に報いるために頑張れたと言っても過言ではありません。

コース担当:伏見先生より
MMAの学生は普通の大学院の学生とくらべて熱意が全然違いました。小松本先生のように、最前列中央に座っていた方も毎年いますし、講義でのディスカッションも非常に活発でした。だから、普通の講義と違って、つい、裏話や他では言えないような話をしてしまいます。

終了後、MMAの同窓生との関わりはありますか?

小松本:私は、日本病院会副会長の仕事もするようになり、厚生労働省とか経済産業省にMMAの出身者がいて、MMAの同窓生ということで話がはずみ、交渉がスムーズに進むようになりました。同窓生とのつながりもMMAの利点の一つだと思います。佐藤先生ともまた一緒に仕事をできるようになり、頂いたご縁は計り知れないです。

講師陣との交流はありますか?

小松本:MMA終了後に、新病院の基本設計などがどんどん具体化していきました。MMAの時に講義をしていただいた先生がいらっしゃる会社に私の病院の設計を担当いただきました。その設計会社でも全室個室の病院建築の実績がないと言われて、一緒に協力して全室個室の病院を創りました。そしてエネルギーシステムも最先端のものとし次世代型グリーンホスピタルとして多くの賞を受賞しました。第1回カーボンニュートラル大賞受賞(建築設備技術者協会、2013年)、第23回医療福祉建築賞受賞(日本医療福祉建築協会、2014年)、経済産業大臣賞受賞(経済産業省、2015年)、IFHE国際医療福祉建築賞2016の1位最優秀賞(国際病院設備学会(IFHE)、2016年)などたくさんの賞をいただきました。もちろん、経営面でも新病院は2011年新築開院以来、病床稼働率100%が続いています。最近はコロナの重症患者も受け入れていますが、クラスターの発生も抑制できています。

病床稼働率100%。素晴らしいですね。佐藤先生は、足利赤十字病院に訪問されたことはありますか?

佐藤:私は、在学中に旧病院に3回ほど、お伺いさせていただきました。私は、医療現場での経験がなく、現場を見たこともほとんどありませんでした。小松本先生はそんな私に声をかけてくださって、病院では白衣を貸してくださり、小松本先生の外来の後ろに研修医のようについて見学させていただいたことや、病院の裏側を見せていただいたのは良い思い出です。そうしたことが、私のモチベーションを高め、「やっぱり病院の経営って面白い!」と思い、仕事としてその分野に進んでいきたいと思うようになりました。年が離れているにもかかわらず、同級生ということで、貴重な機会を提供してくださり、とても感謝しています。もちろん、新病院にも度々訪問させていただいています。院長室でお話をしたり、病院の動線を見せてもらったり、小松本先生とは定期的な交流をこの20年ほど続けています。足利赤十字病院での小松本先生のご苦労は計り知れないし、本当にどの病院にも参考になる情報だと当時から思っていました。

小松本先生が名誉院長を務める 足利赤十字病院

小松本先生に病院のマネジメントに関するお話をいくつかご紹介いただきたいと思います。

小松本:全室個室の他、病床稼働率を上げるために、診療科ごとの縦割りをなくし、混合病棟を導入しました。また、35床1看護単位にしました。1病棟に7から8診療科の患者さんが入院されています。この体制で10数年たっていますが、医療事故は1件もありません。また、看護師が複数の診療科の手技や疾患に関する知識を覚えることができるということで看護教育の面でもこの体制は好評で、今は、若い看護師の離職はほとんどありません。この体制を実行するために建築や設備にもこだわっています。例えば、動線を職員エリアと患者さんエリアに完全に分けました。スタッフ用エレベータや通路を別にし、エレベータを高速にして速やかな移動を実現しました。そのため、先生方やスタッフからの不満も出ていません。病院建築で全室個室は珍しいためか、毎週見学者が10年以上たった今でも絶えません。

MMAで学んだ知識が活かされている病院、見てみたいです。お二人は、MMAでは非常勤講師として登壇されたこともあるかともいますが、MMAの学生について感じられたことをお教えください。

(小松本悟先生:医療におけるリーダーシップ、佐藤大介先生:医療提供政策論における医療経済評価)

小松本:学生さんが大変熱心です。講義のあとに見学依頼のメールもきて、何人かは見学に来てくれています。

佐藤:多様なバックグラウンドを持つ学生が多いのが特長なので、思考実験等を講義に取り入れています。やはり深い議論ができることと、講義で得られた知識を卒業後にどう活かせるかという観点での質問が多いことが他大学にはないですね。課題レポートも、このテーマで1時間くらいディスカッションしたいと思える重要な指摘が多かったです。

最後に入学を検討されている方へのメッセージをお願いします。

小松本:MMAコースについては、今後、病院のマネジメントを担う方、あるいはいろんな機関で医療政策に関わっている人にはここでの学びは礎となり、現場で活かせる最新の知識を身に着けることができると思うので、ぜひ学んでいただきたいです。また、講師陣も現場で活躍している人が多く、魅力的だと思います。

佐藤:MMAは私にとっても礎です。卒業後はMMAから頂いたご縁で仕事をしてきましたし、小松本先生と出会って20年近く経ち一緒にお仕事ができるのは、素晴らしい人生だなと思います。また、MMAを終了した後、伏見先生にご指導いただいて、博士号を取得し、研究者としての道を歩むことができました。新城先生(今回の聞き手:MMA8期生)ともMMAでご縁をいただき同じ教員であるということで期を超えた付き合いをしています。大学卒業後、MMAに進学したことは私にとって良かったと思っていますし、修了後10年、20年と自分のキャリアとともにつながっていることが身をもって実感でき、入学当初思い描いていた以上の良さがあったと今思うところです。MMAでは多様なバックグラウンドを持つ人が集まっているので、一つの質問から議論が始まったりすることも珍しくなく、質問力を磨くことができます。ぜひ、MMAで楽しんで学んでいただければと思います。

お忙しい中、お時間をお取りいただきありがとうございました。

聞き手:
新城 大輔
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
医療政策情報学分野 准教授

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