Research


「貼るだけ人工膵臓」による糖尿病プレシジョン・メディシン

グルコースと可逆的に結合するボロン酸を適切な高分子ゲルネットワーク中に導入すると, グルコース濃度変化に応答した解離平衡シフトに伴うイオン浸透圧変化によって可逆的な含水率変化が誘起される。これと同期してゲル表面に生成する「スキン層」と呼ばれる薄い脱水収縮層が, 血糖値に応じたインスリン放出の制御機構として働く。機械やタンパク質を一切用いない完全合成型「貼るだけ人工膵臓」の実用化研究を進めている。

ボロン酸による分子認識を応用した診断および治療技術

シアル酸 (Neu5Ac)は細胞の糖鎖末端に多く存在し, その動態は, 発生, 分化, 疾病等の細胞現象と関連している。特に, がん細胞表面においては普遍的に過剰発現する。シアル酸は正常組織にも存在するため, これを標的とした薬剤治療を安全に行うためには腫瘍環境特異的な活性化の機序が必要となる。我々は, これをボロン酸で解決している。さらに, がん幹細胞標的治療, がん免疫治療, ホウ素中性子捕捉療法, エレクトロニクスと融合した細胞外微粒子捕捉・診断デバイス技術等へと展開を図っている。

ボロン酸含有保護基を応用した環境応答的な開裂反応化学の開発と応用

ボロン酸は, 低分子でありながら多様な生体分子と相互作用し, その強度と選択性は合成化学的に可変である。本テーマでは, ボロン酸を用いた保護基の化学を発展させ, 水中での可逆的な分子認識能を付与した新たな開裂反応系の開発を行っている。新たなドラッグデリバリーシステムへの展開を見据えた基礎研究である。

在宅で, 手軽かつ確実に多剤服薬管理を達成するための次世代マイクロニードル技術

処方された薬剤を, 誰でも正確かつ簡便に, 苦痛なく服用する過程に大きなアンメットニーズが存在する。服薬の課題を克服する新たな経皮型DDSを開発し, 安全・安心な在宅医療の提供に貢献する。この技術は, 患者のQOL向上に留まらず, 医療従事者にとっても大きな福音となる。