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「癌をおさえる仕組みが臓器障害を引き起こす」
― 臓器を守る治療の新しい標的 ―


 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科・病態代謝解析学分野の畑 裕(はた ゆたか)教授と池田光伸(いけだ みつのぶ)助教の研究グループは、これまで発がんを抑制する善玉分子と考えられていたRASSF6という蛋白が、同じように発がんを抑制するHippoシグナル伝達系という仕組みと協働して機能するメカニズムを明らかにしました。発がんを抑制するこのメカニズムは、過度な細胞死により臓器障害的に働くと考えられます。したがって、RASSF6とRASSF6の関連分子は、細胞死を伴う様々な疾患の新しい治療標的になることが期待されます。この研究は文部科学省科学研究費補助金、公益信託荒木記念医学・生化学研究振興基金の支援のもとでおこなわれたもので、その研究成果は、国際科学誌Science Signaling(サイエンス・シグナリング)に、2009年9月29日付オンライン版で発表されました。  
畑 裕 教授
大学院医歯学総合研究科・病態代謝解析学分野
池田 光伸 助教
大学院医歯学総合研究科・病態代謝解析学分野
 
ポイント
  • RASSF6という蛋白が炎症や薬物によって引き起こされる細胞死に重要な役割を果たす仕組みを明らかにしました。
  • 発癌を抑える仕組みが細胞死を起こし、臓器障害を引き起こす可能性を明らかにしました。
  • 今回明らかにされた臓器障害的に働く仕組みは、今後、肝炎、腎炎などの治療薬開発の新しい標的になることが期待されます。
研究成果の概要と意義

 ヒトではRASSFと総称される一群の蛋白の発現が低下すると、肺がんなどの癌がおこります。RASSFは発がんを抑制する善玉分子と考えられています。一方でハエからヒトまで種を超えて保存されているHippoシグナル伝達系という仕組みも、同じように発がんを抑制することが知られています。ところが、ハエではRASSFがHippoシグナル伝達系を阻害することが観察されています。発がんを抑制するRASSFが、同じように発がんを抑制するHippoシグナル伝達系を阻害するのは、つじつまがあいません。今回、私達は、ヒトのRASSFのひとつRASSF6に着目し、RASSF6が一方的にHippoシグナル伝達系を阻害するのではなく、お互いに牽制しあって安定状態を保っていることを明らかにしました。この発見をもとに、私達は、細胞外から刺激が入るとRASSF6とHippoシグナル伝達系は互いの束縛から解放されて、それぞれの機能を発揮し、細胞死を起こしたり、細胞増殖を抑えたりするというモデルを提示しました。また、RASSF6が、炎症や毒物による細胞死に関わることも明らかにしました。したがって、細胞死によって臓器障害がおこる病気においては、むしろRASSF6の働きを抑えることが治療になると考えられます。また、RASSF6以外の複数のRASSFも同じような特性をもつと推定され、RASSFが多くの臓器に発現していることから、今後、さまざまの病気の治療標的になることが期待されます。

問い合わせ先

東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科・病態代謝解析学分野 教授
畑 裕 (はた ゆたか)
TEL 03-5803-5164
e-mail: yuhammch@tmd.ac.jp

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