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「タンパク分解酵素カテプシンKが免疫を活性化することを発見」
−骨と免疫の両方を治療する新しい関節リウマチ治療薬の開発−


 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子情報伝達学の高柳広教授らのグループは、破骨細胞に特異的と考えられてきたタンパク質分解酵素カテプシンKが、免疫を活性化する作用をもつことを発見しました。さらに新しいカテプシンK阻害薬を開発し、関節リウマチ・多発性硬化症などの自己免疫疾患に有効であることを動物実験で証明しました。この研究成果は米科学誌Science の2月1日号に掲載されました。         
高柳 広 教授
本学大学院医歯学総合研究科
分子情報伝達学分野
ポイント
  • 骨を分解する酵素と考えられてきたカテプシン K が、免疫担当細胞の樹状細胞で働き、免疫の活性化に重要な役割を担うことを発見しました。
  • 新たな経口投与可能なカテプシンK特異的阻害薬を開発しました。高齢化社会で問題となるロコモーティブシンドローム=運動器症候群のうち、破骨細胞が関与する骨量減少性疾患である骨粗鬆症、関節リウマチ、多発性骨髄腫、癌骨転移、歯周病、変形性関節症、Paget病などに効果を発揮すると予想されます。カテプシンKが免疫活性化作用をもつことが明らかになったため、このカテプシンK阻害剤は、自己免疫疾患にも効果があると考えられます。
  • 特に、関節リウマチは免疫系が異常に活性化した結果、骨が破壊される疾患ですが、従来の薬剤は、免疫に作用する薬剤が主流でした。カテプシン K 阻害薬は、骨と免疫への両方の治療効果を持つため、非常に強い治療効果が期待できます。

研究の背景

 高齢化社会が進行する中、骨粗鬆症、関節リウマチ、変形性関節症などのロコモーティブシンドローム(運動器症候群)の治療法の開発が急務となっています。骨代謝は、骨を作る骨芽細胞と壊す破骨細胞のバランスで調節されており、多くの骨の量が減る疾患では破骨細胞の活性が過剰になることが原因になっています。このため、破骨細胞を抑制する薬剤は運動器症候群の治療に有効であると考えられています。
 関節リウマチでは、免疫異常が破骨細胞による骨吸収を活性化して骨破壊を引き起こします。カテプシンKは破骨細胞が骨を分解する時の酵素の中で最も重要な酵素であるため、本研究では新しい経口投与が可能なカテプシンK阻害剤を開発し、関節リウマチモデルを用いて治療実験を行いました。


研究成果の概要

 化合物スクリーニングにより、日本ケミファ社と共同で、新たなカテプシンK阻害薬NC-2300を開発しました。この阻害剤は経口投与が可能な低分子化合物で、「ロコモーティブシンドローム」=運動器症候群のうち、破骨細胞が関与する骨量減少性疾患である骨粗鬆症、関節リウマチ、多発性骨髄腫、癌骨転移、歯周病、変形性関節症、Paget病などに効果をもつと考えられます。
 治療実験において、新しいカテプシンK阻害剤NC-2300は予想通り、関節リウマチモデルの骨破壊に治療効果を示しましたが、予想外の結果として、関節リウマチモデルにおける炎症を抑制することが明らかとなりました。そして、カテプシンKが樹状細胞を活性化するToll様受容体(TLR)9 シグナルの信号伝達に関与することが明らかになりました。このため、さまざまな自己免疫疾患に対して、カテプシンK 阻害薬が効果を持つ可能性があります。ここでは、関節リウマチ以外に、多発性硬化症の動物モデルの治療に有効であることを動物実験で示しました。
 特に、カテプシンK阻害剤は関節リウマチで侵される免疫と骨を同時に治療できる新しい治療薬となることが期待されます。本研究は、骨と免疫の相互作用や共通メカニズムを研究する境界領域である「骨免疫学」の成果といえます。


問合せ先

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
分子情報伝達学分野 高柳 広
TEL 03-5803-5471 FAX 03-5803-0192
e-mail: taka.csi@tmd.ac.jp
研究室ホームページ http://osteoimmunology.com/


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