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「脳機能の源 −シナプス小胞の全貌が明らかに」


 東京医科歯科大学大学院21世紀COEプログラム「脳の機能統合とその失調」(COE拠点リーダー・水澤英洋教授)の高森茂雄COE特任講師の研究グループは、ドイツ・マックスプランク生物物理化学研究所のラインハルト・ヤーン教授らとの国際共同研究によって、脳内における情報伝達に重要な役割を担う「シナプス小胞」を構成する主要なタンパク質と脂質の種類および数量を精密に分析し、小胞の三次元構造モデルを構築しました。
 これは、シナプス小胞の全体像を分子レベルで解き明かした世界で初めての成果です。この成果により、脳機能の根幹に関わる現象のみならず、全ての真核細胞に備わっている膜輸送の動作原理の解明に向けての大きな進展が期待されます。この研究成果は、米国科学誌Cellの11月17日号に発表されました。
    
(右)水澤 英洋 教授
本学大学院医歯学総合研究科脳神経病態学分野
(左)高森 茂雄 COE特任講師
本学大学院医歯学総合研究科脳神経病態学分野


ポイント
  • シナプス小胞の分子レベルでの三次元構造モデルを構築
  • 真核細胞内の膜輸送の動作原理解明に光

研究の背景

 ヒトの脳には数百億個もの神経細胞がありますが、これらの神経細胞はシナプスと呼ばれる接合装置を介してネットワークをつくり、脳の複雑な働きを実現しています。多くのシナプスでは、片側の細胞内にあるシナプス小胞と呼ばれる直径40ナノメートルほどの袋から細胞間に神経伝達物質が放出され、それが受け手の細胞を刺激することによりシグナルが伝達されます。しかしながら、シナプス小胞において、様々な機能性タンパク質や脂質がどのぐらい存在してどのような構成になっているのか、また神経伝達物質の貯蔵・放出がどのように行われるのかは詳細に分かっていませんでした。


研究成果の概要

 シナプス小胞は、膜の成分である脂質に加えて、神経伝達物質の貯蔵を担うタンパク質、生体膜の融合を司るタンパク質など、多種多様な機能性タンパク質から成り立っています。今回の研究では、まず質量分析機を用いてラットの神経細胞の小胞上に存在する全てのタンパク質と脂質を網羅的に同定しました。さらに、さまざまな分析手法を多角的に組み合わせて、1つのシナプス小胞に存在する主要な構成成分の数量を厳密に調べました。そして、それぞれの分子の三次元構造を推定し、分子動力学的な手法を援用することにより、シナプス小胞の精巧な三次元構造モデルを構築することに成功しました。


発見の意義

 これまでの研究では個々の生体分子の構造の解明などが行われてきましたが、今回の研究は細胞小器官という機能単位の構造が分子レベルで明らかにされた、という意味で画期的なものです。
 具体的な成果としては、本研究によりラットの神経細胞のシナプス小胞を構成する全ての分子とその数量が明らかになりました。また、精密な三次元構造モデルを構築したことにより、電子顕微鏡の解像度をもってしても可視化できなかったシナプス小胞の微細構造の全貌が初めて明らかになりました。これらの成果は、シナプスにおける神経伝達物質の貯蔵・放出の分子機構の更なる解明に貢献するものと考えられます。また、神経細胞に限らず、真核細胞の内部には細胞小器官があり,細胞の機能はこれらの細胞小器官が担っています。細胞小器官の間では輸送小胞を介して物質輸送が行われていますが、シナプス小胞は輸送小胞の代表格として盛んに研究されてきました。今回、シナプス小胞の構造が明らかになったことで、細胞機能の根幹である「輸送小胞を介した物質輸送」の動作原理の解明が進むことも期待されます。


問い合わせ先

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
脳神経病態学分野
高森 茂雄 (たかもり しげお)
TEL 03-5803-4716 FAX 03-5803-4716
e-mail: taknuro@tmd.ac.jp
研究室ホームページ http://www.tmd.ac.jp/med/nuro/


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