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「新たな骨粗しょう症治療薬の開発に光」
−TNFaのペプチドアンタゴニストが骨吸収を抑制することを発見−


 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科硬組織薬理学分野の青木和広助手、大谷啓一教授らのグループは、米国Yale大学のRoland Baron教授らのグループと共同し、骨粗しょう症モデル動物などを用いて腫瘍壊死因子(TNFa)のペプチドアンタゴニストが骨吸収抑制効果を示すことを発見しました。このことにより、骨粗しょう症の治療、さらに関節リウマチや歯周病における炎症性の骨吸収の治療に用いられる安全かつ低価格なペプチド製剤の可能性が示されました。この成果は米国の医学雑誌 Journal of Clinical Investigation の6月号に、同誌の電子ジャーナルには5月4日に掲載されました。     
青木 和広 助手
本学大学院医歯学総合研究科硬組織薬理学分野
大谷 啓一 教授
本学大学院医歯学総合研究科硬組織薬理学分野
ポイント
  • TNFaのペプチドアンタゴニトが、骨粗しょう症における骨吸収を抑制することを発見
  • 骨吸収の抑制に加えて炎症を抑制する効果も持つことから、炎症性の骨吸収をともなう関節リウマチや歯周病に対しても有効
  • 小分子のペプチド製剤であることから安全かつ低価格な治療薬になると期待

研究の背景

 骨粗しょう症の治療においては、骨吸収を抑制することが重要です.また関節リウマチや歯周病においても激しい炎症にともない骨吸収が生じることから、やはり骨吸収の抑制が必要になります。これまでに幾つかの薬剤が開発されていますが、まだ十分とはいえません。強力な新薬として抗TNFa抗体や抗RANKL抗体などの生物製剤が期待されていますが、これらはタンパク質ですので抗原抗体反応による重篤な副作用のおそれがあります。またこれらの生物製剤はリコンビナント技術により作製されるため、どうしても高価なものになってしまいます。そこでこれらの問題を解決するために、少数のアミノ酸で構成されたペプチド製剤に着目して研究を行いました。


研究成果の概要

 TNFaは炎症を引き起こす生体内の物質ですが、WP9QY (W9)ペプチドと呼ばれる9つのアミノ酸からなる分子は、TNFaの炎症作用を抑制することが知られていました。我々はこのW9ペプチドが骨吸収を抑制することを発見し、その詳細なメカニズムを解明しました。すなわちW9ペプチドは、骨を吸収する細胞である破骨細胞が形成される際に必須の分子であるRANKLに結合して、RANKLの受容体であるRANKの構造変化を引き起こし、RANKLの作用により活性化する骨吸収能を阻害することが分かりました。したがってW9ペプチドはTNFaのアンタゴニストとしてだけでなく、RANKLのアンタゴニストとしても作用しており、このことにより骨吸収と炎症の両者を抑制する機能を持つことが示されました。


発見の意義

 本研究により、TNFaのペプチドアンタゴニストであるW9ペプチドの骨吸収抑制作用が明らかとなりました。このことにより、これまであまり進展が見られなかったペプチド製剤に大きな可能性が生まれました。また、いままで二種類の薬剤を併用しなければ難しかった2つのサイトカインを一剤で阻害するという本ペプチドの興味深い作用機序が明らかとなり、今後のペプチド製剤の開発に新たな方向性が与えられるものと思われます。今後、炎症性サイトカインであるTNFaの阻害作用と破骨細胞活性を直接阻害するRANKLアンタゴニストしての作用を合わせ持つW9ペプチドが、関節リウマチや歯周病における炎症性骨吸収を阻害する薬剤の開発において多大な貢献をすることが期待されます。


問い合わせ先

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
硬組織薬理学分野
青木 和広 (あおき かずひろ)
TEL 03-5803-5461 FAX 03-5803-0190
e-mail: kazu.hpha@tmd.ac.jp
研究室ホームページ http://www.tmd.ac.jp/grad/hpha/hpha-J


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