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2024年度 採択課題の研究成果
研究代表者:神戸大学 大学院医学研究科 教授 古屋敷 智之
難治研受入教員:神経炎症修復学 教授 七田 崇
研究課題:慢性ストレスによるミクログリアのクロマチン構造変化の同定
研究成果:本研究ではマウスの社会的ストレスモデルを用い、慢性ストレスに伴うミクログリアのクロマチン構造変化とその役割について解析を進めている。令和6年度には、急性および慢性ストレス負荷後にマウスの各脳領域から単離したミクログリアや末梢血中の炎症性細胞に対して、シングルセル・マルチオーム解析を実施した。また、炎症を起点とする神経回路の再編メカニズムを明らかにするために、全脳イメージングによる神経活動の可視化と機械学習を用いて、ストレス負荷やストレス感受性に選択的に応答する神経回路を同定した。さらに、化学遺伝学的手法も用い、慢性ストレスが引き起こす情動変容において、嗅皮質-外側中隔経路などの新規神経回路の重要性を示した(Okuda Y et al. Neuropsychopharmacology 2025)。今後は、慢性ストレスによるミクログリアのクロマチン構造変化と神経回路の再編との関連性が明らかになることが期待される。
研究代表者:玉川大学 大学院脳科学研究所 教授 高岸 治人
難治研受入教員:ゲノム機能多様性 教授 高地 雄太
研究課題:ゲノムワイド関連解析による向社会行動を支える未知の遺伝子の特定
研究成果:本研究では、向社会行動に関連する遺伝因子とストレスなどの環境因子の関係を明らかにすることを目的とする。今年度は、玉川大学で過去10年間にわたり収集された、20代から60代までの向社会行動データを有する成人約500名のDNAの質的評価を行った。そのうち、SNPアレイによる解析に使用可能と判断された144名分のジェノタイピングを、Asian Arrayを用いて実施した。さらに、Genotype imputationを行った上で、ポリジェニックリスクスコア解析を実施する予定である。
研究代表者:東京大学 大学院薬学系研究科 教授 富田 泰輔
難治研受入教員:病態生理化学 教授 佐々木 雄彦
研究課題:アルツハイマー病リスク遺伝子INPP5Dの病的役割解明
研究成果:本共同研究では、アルツハイマー病(AD)リスク遺伝子INPP5Dの病的役割解明を目的として、本学際領域展開ハブで作出したInpp5d(flox/flox)マウスをベースに、ミクログリア特異的Inpp5d欠損ADモデルマウスを作出し解析した。その結果、Inpp5d欠損により脳内アミロイド蓄積量は変化しなかったが、アミロイド斑に対するミクログリアの集簇が亢進し、アミロイド斑周囲の神経変性が顕著に抑制されることを明らかにした。この成果により、ミクログリアがAβの神経傷害性発揮において重要な役割を果たすことが示され、INPP5Dを介したミクログリア機能制御の新たなメカニズムが解明された。これらの知見は、INPP5Dを標的とした新規AD治療法開発の基盤となる重要な成果である。
研究代表者:東北大学 医学系研究科 准教授 前川 素子
難治研受入教員:恒常性医学 教授 豊島 文子
研究課題:妊娠期低栄養ストレスが産子の精神疾患を誘導する分子基盤の解明
研究成果:本研究では、妊娠期の低栄養ストレスが産仔の精神疾患を誘導する機構について、エピゲノムと母体代謝の観点から解析することを目的とする。本年度は、妊娠初期の低栄養ストレス負荷モデルにおいて、産仔の脳内エピゲノムが変化することを見出した。また、低栄養ストレスが母体の肝臓と小腸のリモデリングに及ぼす影響を解析した。今後は、産仔の脳エピゲノムの変化と母体臓器リモデリングの関連を検証する予定である。
研究代表者:九州大学 生体防御医学研究所 教授 増田 隆博
難治研受入教員:神経炎症修復学 教授 七田 崇
研究課題:脳常在性ミエロイド細胞が脳機能を調節するメカニズムの解析
研究成果:本研究では、ストレス暴露に伴う脳常在性ミエロイド細胞の器質的変容を明確にするべく、各種ストレス暴露マウスモデルを用いて高深度マルチオミクス解析による網羅的プロファイリングを試みた。その結果、胎生・幼若期ストレス暴露マウスモデルおよび成体期ストレス付加マウスモデルを用いた解析により、脳実質内に存在するミクログリアの変化に加え、脳境界マクロファージを含む脳境界領域における組織・細胞レベルの多様な機能的に変容が観察された。今後は、これら組織・細胞レベルの変容の生理学的な意義の解明に迫りたい。
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