倫理審査委員会

平成20年度
第3回難治疾患研究所倫理審査委員会議事要旨

日 時: 平成20年10月27日(火) 15:00〜18:30
場 所: 難治疾患研究所 会議室
出 席: 木村、稲澤、岡澤、古川(以上、内部委員)、加藤、徳永、原田(以上、外部委
      員)、稲葉(外部委員、書面による審査意見提出)

議事

1. 前回(平成20年度第2回)委員会議事要旨について
 前回議事要旨は各委員にメール配布され確認された後に研究所HP上に掲載されている旨、委員長より紹介があった。

2. 委員長裁定(平成20年10月1日付申請)結果の確認
「ヒト臍帯血有核細胞から肝細胞への分化誘導と肝細胞移植治療に向けて」(平成13年8月13日承認)について、実験に用いるヒト臍帯血有核細胞の入手先として理研細胞バンクを追加すること、研究期間を平成20年12月31日までとすることの2点について研究計画の変更申請があったが、ごく軽微な研究計画の変更であるため、これを委員長裁定として承認することが妥当と判定した(平成20年10月7日付)。 本件について委員長より経緯および委員長裁定とした根拠について報告があり、申請内容を確認した上でこれを承認した。

3. 審議

1. 第1号(受付第6号案件)
「東京医科歯科大学難治疾患研究所・大学院研究施設バイオリソース支援室における平成13年3月29日公示のヒトゲノム・遺伝子解析研究の関する三省倫理指針の前に樹立されたヒト由来細胞株の取り扱いについて」
実施責任者:稲澤譲治教授 (分子細胞遺伝)
 本件は研究所内に設置されたバイオリソース支援室で取り扱う細胞株の要件に係るものである。ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(平成13年3月29日公示、平成16年12月28日改正)においては、平成13年3月29日公示以前に収集されたヒト由来試料の取り扱いについては、一定の要件のもとに当該研究機関の倫理審査委員会による承認に依存するとされている。このような観点から、 (独)医薬品基盤研究所や(独)理化学研究所のバイオリソースセンターなどの公的機関においては、「資料提供者個人を特定できない細胞」であることをもってヒトゲノム・遺伝子解析指針の適応とならず、研究に利用することが出来るとされている。また、これと類似するが、平成13年の指針公示前に樹立された細胞株について、研究所バイオリソース支援室への寄託申請がある。このような細胞株の取り扱いについて、資料をもとに研究代表者から説明があり、種々討議の結果、以下の条件で研究計画を承認することが妥当であると判定した。
1.バイオリソース支援室運営委員会において、当該細胞株の樹立における同意の有無、当該細胞株が論文等で発表され公知となっているかについて審議すること。
2.上記審議の結果、寄託申請が適切であると判断された場合には、寄託を引き受けることが可能である
3. 毎年1回以上、倫理審査委員会委員長宛に寄託細胞の申請状況および上記審議内容について書面で報告すること

2. 第2号(受付第1号案件)
「ゲノム網羅的解析情報を基盤とするオーダーメイドがん医療」
実施責任者:稲澤譲治教授 (分子細胞遺伝)
 本件は、ナショナルプロジェクトとして実施されたバイオバンクジャパン試料の網羅的解析結果を基盤として、多施設共同研究により、その検証と応用研究を実施するものである。研究概要、多施設による分担研究課題、およびこれまでの研究経過とその成果について稲澤教授より説明があり、共同研究機関における研究計画の倫理審査状況、 知財管理および個人情報管理の状況等について種々質疑応答を行った。ついで、協議の結果、以下の条件で研究計画を承認することが妥当であると判定とした。
1.各共同研究機関における倫理審査委員会による研究計画の承認を受けること

3. 第3号(受付第2号案件)
「神経変性疾患ヒト脳の病理、タンパク、および遺伝子発現の解析」
実施責任者:岡澤均教授 (神経病理)  本件研究は本学医学部病理部との共同研究である。病理解剖において、試料を研究に用いることに同意された試料を用いて遺伝子発現レベル、タンパクレベルでの研究を実施するものである。研究の概要について岡澤教授より説明があった後、病理解剖への同意書の内容、共同研究施設の範囲と倫理審査状況などに関する質疑を行った。 協議の結果、以下の条件のもとで本件研究を承認することが妥当であると判定した。なお、研究計画書における字句修正については、委員長がその適正性を確認することとした。(なお、修正した研究計画書が平成20年11月28日に委員長宛に提出され、その適正性を委員長が確認した)
1.研究計画書に遺伝子発現解析を加えることとして修正すること。また、字句の誤りを修正すること。
2.研究利用への同意があるものについてのみ研究対象とすること
3.共同研究施設(本学医学部病院)の倫理審査委員会において、本共同研究計画の承認を受けること。

4. 第4号(受付第3号案件)
「慢性閉塞性肺疾患(COPD)の病態関連遺伝子の解明」
実施責任者:村松正明教授(分子疫学)
 本件は、ナショナルプロジェクトとして実施されたバイオバンクジャパン試料解析によって得られたCOPD関連遺伝子候補に関する情報を基盤として、多施設共同研究にて今後収集する試料を用いて関連を検証しようとするものである。 研究の概要について池田仁子助教(研究実施者)から説明があった後、共同研究施設における研究体制およびそれぞれの施設における倫理審査状況と解析結果の取り扱いなどについて質疑応答を行った。ついで、種々協議の結果、以下の条件で研究計画を承認することが妥当であると判定した。
1.それぞれの共同研究施設の倫理審査委員会において、本共同研究計画の承認を受けること

5. 第5号(受付第7号案件)
「遺伝子多型情報と行動変容理論に基づく減塩介入の血圧値と行動に対する影響の評価」
実施責任者:村松正明教授(分子疫学)
 本件は、他研究機関(京都大学社会医学系大学院)との共同研究であり、既に当該研究機関における倫理審査委員会による研究計画の承認を受けたものについての研究申請である。本件は迅速審査の対象となるものであるが、申請が提出された時期との日程的な関連上、 倫理審査委員会による審査の対象としたものである。研究の概要について池田仁子助教(研究実施者)から説明を受けた後、解析対象遺伝子、介入研究デザインなどについて質疑応答を行った。協議の結果、研究を承認することが妥当であると判定した。

6. 第6号(受付第4号案件)
「ヒト関節炎部位におけるCIZの発現解析」
実施責任者:野田政樹教授(分子薬理学),br>  本件は、他研究施設(本学医学部整形外科)との共同研究によって、手術で得られた関節腔組織における遺伝子発現を解析するものである。研究の概要について中元哲也特任講師(研究実施者)より説明を受けた後、共同研究における研究分担内容、 共同研究施設における倫理審査状況などについて質疑応答を行った。協議の結果、以下の条件を満たした上で、研究を承認することが妥当であると判定した。
1.本学医学部の倫理審査委員会による研究計画の承認を受けること

7. 第7号(受付第5号案件)
「ヒト末梢血から肝関連細胞への分化誘導」
実施責任者:寺岡弘文教授(病態生化学)
 本件は、すでに承認されて実施中の研究「ヒト臍帯血有核細胞から肝細胞への分化誘導と肝細胞移植治療に向けて」(平成13年8月13日承認)に密接に関連するものであり、研究計画の部分変更と研究期限を設定するものである。 研究の概要およびこれまでの研究成果について寺岡教授より説明があった後、被験者の集め方、匿名化手法、同意書の内容などについて質疑応答を行った。協議の結果、以下の条件で研究を承認することが妥当であると判定した。
1.被験者はボランティアとし、本研究に直接携わらない者とすること
2.一度に3名以上を採血し、匿名化を担保すること

8. 第8号(受付第8号案件)
「肺癌細胞における細胞死機構の異常の探索」
実施責任者:清水重臣教授(病態細胞生物学)
 本件は、他研究機関(大阪大学医学部附属病院)との共同研究であり、既に当該研究機関における倫理審査委員会に研究計画を申請しているものである。研究の概要について清水教授から説明を受けた後、共同研究体制、共同研究機関での倫理審査状況などについて質疑応答を行った。協議の結果、以下の条件で研究を承認することが妥当であると判定した。
1.患者さんへの説明文書において、「検体の保存」についてより詳しい説明(研究終了後一定期間の保存、新たな研究計画への対応の有無)を追加すること
2.共同研究機関における倫理審査委員会による研究計画の承認をうけること