倫理審査委員会

平成20年度
第2回難治疾患研究所倫理審査委員会議事要旨

日 時: 平成20年5月13日(火) 15:00〜18:30
場 所: 難治疾患研究所 会議室
出 席: 木村、稲澤、岡澤、古川(以上、内部委員)、加藤、神奈木、徳永、原田(以
      上、外部委員)、稲葉(外部委員、書面による審査意見提出)
オブザーバー:小笹、小門(以上、生命倫理研究センター)

議事

1. 前回(平成19年度第2回)委員会議事要旨について
前回議事要旨は各委員にメール配布され確認された後に研究所HP上に掲載されている旨、委員長より紹介があった。

2. 迅速審査(平成20年度第1回倫理審査委員会)結果の確認
「染色体異常症を疑う遺伝疾患の潜在的ゲノム構造異常の探索と疾患遺伝子の同定、ならびに遺伝子診断法の開発」(平成18年7月6日承認)について、分担研究者および共同研究施設の追加申請があったため、迅速審査を実施し、これを承認することが妥当と判定した(平成20年4月3日付)。本件について申請内容を確認し、これを承認した。
なお、すでに承認された研究計画の軽微な変更(研究実施者の変更、共同研究機関の変更等)については、特に問題ない場合は委員長判断で承認することを可とすることしして今後取り扱うことを確認した。

3. 審議

1. 第1号(受付第4号案件)
「全身性エリテマトーデスの疾患感受性とヒトCD72遺伝子多型との関連解析」
実施責任者:鍔田武志教授 (疾患生命科学研究部・免疫、難治疾患研究所・免疫疾患)
 本件は健常者の末梢血を用いたヒトCD72多型の機能解析研究である。
 研究の概要について鍔田教授より説明があり、被験者の選択方法、予想される対象被験者数、試料採取の手順、同意取得の方法、同意書の保管、個人情報の保護などについて、稲葉委員よりの書面意見を含めて、種々の質疑応答を行った。ついで、協議の結果、以下の条件を満たした上で研究計画を承認することが妥当であると判定とした。なお、研究計画書の修正・変更については、委員長がその内容を確認するものとした。(委員会終了後、修正・変更された研究計画書が提出され、その内容を委員長が確認した)
1.同意書の1通は試料提供者、もう1通は個人情報管理者が保管すること
2.被験者は成人に限ること
3.研究計画書の誤字を修正すること(「有為」→「有意」)
4.研究補助者の所属・身分について最新の状況に修正すること

2. 第2号(受付第2号案件)
「がんの統合的ゲノム解析と個性診断法の開発」
実施責任者:稲澤譲治教授 (分子細胞遺伝)
 本件は以前に承認された研究計画「ゲノムマイクロアレイのよる癌関連遺伝子の同定と遺伝子解析法の開発」(平成16年3月26日承認)の実施内容と同一であるが、研究期間の延長、研究実施者、研究補助者の変更、研究経費の追加、変更、 研究課題の変更を含めた申請である。研究概要およびこれまでの研究経過とその成果について稲澤教授より説明があり、共同研究機関における研究計画の倫理審査状況、知財管理および個人情報管理の状況等について種々質疑応答を行った。ついで、協議の結果、以下の条件で研究計画を承認することが妥当であると判定とした。
1.共同研究機関における倫理審査委員会による承認を受けること

 なお、本件申請に係る共同研究機関・施設には本学医学部、歯学部、医学部付属病院および歯学部付属病院が含まれる。現行では、学内の各施設(部局)に独立した倫理審査委員会があり、それぞれにおいて研究計画の審査を実施しているが、今後このような学内共同研究案件については、一本化した倫理審査委員会で審査するなどの方法が望まれる。 また、研究倫理に関する教育は学部、大学院修士、大学院博士課程のそれぞれにおいて授業の一環として行われているが、研究に携わる者が定期的に講習を受けるなどの教育体制が必要である。これらのことを含めて、本学の生命倫理研究センターでも今後の審査・教育体制について検討願いたい。 これらの要望について、オブザーバー参加の小笹助教、小門研究員と意見交換した。

3. 第3号(受付第3号案件)
「ヒトiPS細胞を用いた不整脈研究」
実施責任者:古川哲史教授 (生体情報薬理)
本件研究は学外研究施設との共同研究である。学外の共同研究者によって、健常者あるいは不整脈患者から樹立したiPS細胞を入手し、これを心筋細胞に分化させた上で電気生理学的な検討を行う研究である。研究の概要について古川教授より説明があった後、 iPS細胞の樹立における手続き、共同研究施設における倫理審査状況などに関する質疑を行った。協議の結果、以下の条件のもとで本件研究を承認することが妥当であると判定した。なお、倫理審査委員会に提出される資料の内容については、委員長がその適正性を確認することとした。
1.ヒトiPS細胞に係る研究は、文部科学省よりの通知「ヒトES細胞等からの生殖細胞の作成等に係る当面の対応」(平成20年3月3日付)に従うこと
2.共同研究施設における健常者由来のiPS細胞の樹立手続きに関する資料を倫理審査委員会に提出し、委員長の確認を受けること
3.上記の資料内容により、iPS細胞樹立に倫理的問題がないことが確認された範囲で、健常者由来のiPS細胞を用いること
4.患者由来のiPS細胞を用いた研究計画については、試料採取方法、同意取得方法および共同研究施設における倫理審査状況などの資料をそろえて、改めて倫理審査委員会に研究計画を提出し、その審査を受けること

4. 第4号(受付第5号案件)
「活性化T細胞療法に関するウイルス検査」
実施責任者:清水則夫准教授(フロンティア研究室ウイルス治療学)
本件は、すでに承認を受けて実施中の研究「活性化T細胞療法に関するウイルス検査」(平成18年7月6日付承認)について、共同研究機関、研究補助者、研究期間、研究場所の変更を行うものである。また、共同研究機関の変更に伴って、 研究内容およびインフォームドコンセントの内容を変更するものである。迅速審査の対象となり得る案件であるが、本審査委員会の時期と一致したため、本委員会において審査した。研究の概要について清水准教授より説明があった後、同意取得の方法、対象検体数、 解析結果の取り扱いなどについて質疑応答を行った。解析結果の取り扱い方法およびインフォームドコンセントの内容を中心として種々協議の結果、以下の条件で研究計画を承認することが妥当であると判定した。なお、研究計画書の修正、説明文書および共同研究計画書の内容は、その適正性を委員長が確認するものとした。
1.重要な解析結果(ウイルス量の増加など)が得られた場合は、主治医のみならず、被験者にも伝えることとして研究計画を修正すること
2.共同研究契約を締結する際には予想される検体数、検査結果の取り扱い方法(被験者への通知条件)を含めて記載すること
3.同意書の内容は担当医用としたものに一致させ、これを被検査者が保管、担当医は写しを保管するものとする
4.被験者への説明文書では、ウイルスの説明は詳細に渡っているが、ウイルス検査の意義、ウイルスが検出された試料を用いた治療がもたらす利益・不利益に関する項目が不十分であるため、これを適切に記載すること
5.研究計画書の誤字を訂正すること(準教授→准教授、研究機関→研究期間)

5. 第5号(受付第6号案件)
「ヒト末梢血からのiPS細胞の樹立と肝臓系細胞への分化誘導」
実施責任者:寺岡弘文教授(病態生化学)
 本件は、申請者らがこれまでに実施したマウスES細胞を用いた肝臓細胞への分化に関する研究およびマウスiPS細胞を用いた肝臓細胞への分化に関する研究基盤を背景として、ヒト末梢血からiPS細胞を樹立し、さらに肝臓細胞への分化・増幅手法を研究目的とするものである。 研究概要について寺岡教授より説明があった後、被験者の選択方法、匿名化の手法、個人情報の保護、予想される研究の進展範囲などについて種々の質疑応答を行った。協議の結果、以下の条件を満たした上で、研究を承認することが妥当であると判定した。 なお、加筆・修正された研究計画書の適正性については、これを委員長が確認することとした。
1.ヒトiPS細胞に係る研究は、文部科学省よりの通知「ヒトES細胞等からの生殖細胞の作成等に係る当面の対応」(平成20年3月3日付)に従うこと
2.ヒト試料は連結不可能匿名化して用いること
3.樹立したヒトiPS細胞の外部機関への提供は行わないこと
4.上記の条件に従って研究計画書を加筆・修正の上、倫理審査委員会に提出し、委員長の確認を得ること

6. 第6号(受付第7号案件)
「ゲノムインプリンティング異常によるヒト遺伝子疾患の解析」
実施責任者:石野史敏教授(エピジェネティクス)
 本件は、すでに承認されて実施中の研究「ゲノムインプリンティング異常によるヒト遺伝子疾患の解析」(平成16年8月25日付承認)に関連し、 研究実施者の変更、研究計画の部分変更および研究期間の延長を申請するものである。研究の概要およびこれまでの研究成果について 石野教授より説明があった後、追加研究対象とするiPS細胞の入手方法を含め、種々の質疑応答を行った。協議の結果、以下の条件で研究を承認することが妥当であると判定した。
1.研究に使用するiPS細胞、山中教授(京都大学)が樹立し、理研を通じて研究者に配布されるものに限ること
2.iPS細胞を対象とする研究は遺伝子発現解析研究に限ること