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影近弘之
大学院疾患生命科学研究部・生命情報科学教育部長
分子設計分野教授
女性研究者支援対策会議運営委員
先生の「座右の銘」がありましたら教えて下さい。
研究室を卒業する学生に贈る言葉としてよく用いているのが、「和して同ぜず」です。人と協調すると同時に、自分の意見をしっかり持つという意味で使っています。自分の個性を大切にしてほしい一方で、ただそれだけではなく、社会や周りの人々との協調性を持つ、そのバランスが大事ではないかと思っています。
先生ご自身の「ワークライフバランス」はどのようなご様子ですか?
私の専門は有機化学、医薬化学です。基礎研究ですから、自分の裁量で、ある程度自由に行うことができます。ですので、自分の生活(ライフ)と仕事(ワーク)とのバランスは、上手く取ってきたように思っています。私の妻も同業で、他大学で理系の研究室を主宰しています。
家庭を持つのが遅かったこともあって、研究や教育の合間に時間をやりくりし、生活を楽しむように心がけています。これまで忙しいときでもお互いに助け合ってなんとか切り抜けてきたように思います。
趣味は、水泳や卓球、野球でしょうか。以前の職場では、近隣に運動施設があったので、研究や仕事の合間によく運動をしていました。最近は、近場にそういった施設がないこともあって、運動するチャンスはなかなかありません(ただの言い訳だと言われてますけど)。
それで、生体材料工学研究所で年に一度開催しているソフトボール大会は楽しみにしています。研究所の分野を8チームに分けて、男女混合で競い合う大会なのですが、第一回大会では私の分野が優勝しました。今年も、優勝を狙って、学生と練習に励んでいます。疾患生命科学研究部・生命情報科学教育部でも、学生同士や教員との交流が出来るようなイベントや大会をぜひ開催したいと考えています。
少子高齢化の時代ですが、この時代における女性研究者・女性医師の役割について、先生のお考えをお聞かせ下さい。
研究者の場合に限らせていただきますが、それぞれ様々なものの見方や考え、能力を持っています。研究者でも学生でも、女性には女性特有の見方や発想、研究を進めていく上での粘り強さなどがあると思います。
最近は、化学や薬学の分野でも多くの女性研究者が活躍していますが、その経験をもとに、女性の個性や特性を活かせるような環境や仕組みを作っていければ良いと感じています。
ただ、男女を問わないと思うのですが、最近の学生を見ていると、アカデミック志望が減ってきている気がします。学生や若い世代の人が、自分たちの背中を見て、研究という仕事、教員という仕事に魅力を感じてもらえるよう頑張らないといけないと思っています。
2020年までに学内の女性研究者の比率を20%に上げる方策について、どんな方策があったらよいとお考えですか?
方策というと難しいのですが、疾患生命科学研究部は小さな部局で、教員公募なども限られてはいますけれども、公募の際には「女性研究者の積極的な応募を期待します」と明記して、女性の採用を促進するようにしています。
また、当研究部は生体材料工学研究所、難治疾患研究所の両附置研究所と密に連携しており、様々なイベントやプログラムを一緒に行っていますが、女性も参加しやすい内容のイベントやプログラムを考えています。
女性研究者・女性医師に向けて、メッセージを頂けますでしょうか。
本学の「女性支援」活動を見ても、以前よりは女性研究者が活動しやすくなりつつあると思います。一方で、「研究者」という仕事の内容や形態は、私たちがもう少し若い頃とは随分変わってきたと感じています。社会や環境が変化する中で、それぞれの個性を活かした研究ができる環境作りが必要です。
女性にとっては「女性支援」が、また若い世代の人には「若手支援」が、真に社会やそのニーズに適したサポートとなり、幅広い視野をもった研究、教育者を育成していくことが大切です。男女を問いませんが、研究を楽しみ、そして挑戦していく、そのような研究者、サイエンティストになっていただきたいと思います。