トップインタビュー 森田育男

森田育男

研究担当理事
大学院医歯学総合研究科 分子細胞機能学分野教授

先生の「座右の銘」がありましたら教えて下さい。

ブルームにも書きましたが、「義」です。儒教における「義」は「利」の反意語であり、キリスト教では「罪」の反意語です。「利己」のために生きるのではなく、すべての事柄に誠実に向かい合い、公のために生きる。これが私のモットーであり、研究もそうでなければならないと考えています。

先生ご自身のワーク・ライフ・バランスはどのようなご様子ですか?

私はワーク・ライフ・バランス(WLB)という言葉自体が好きではありません。ワークとライフを切り離しているようですし、また、自分自身が認識しているWLBの中身と、家族など周りが認識している中身は違うこともあります。実際に今の日本でWLBを実行するのは難しいこともありますね。

いろいろな立場の人がいるとは思いますが、私は准教授時代から有休、代休を取ったことがほとんどありません。研究所に勤めていた20代は夜1時過ぎまで研究を行い、朝8時にはまた研究をしていました。その意味からいえば、WLBとしては最悪かもしれません。

しかし、私のところは、共稼ぎですので、その間でも子供を保育園に送って行ったり、保育園に問題があったので父母会を作り、その会長として、保育園と交渉したりもしました。その意味から、WLBは時間ではなく、内容だと思います。

少子高齢化の時代ですが、この時代における女性研究者・女性医師の役割について、先生のお考えをお聞かせ下さい。

私の分野には「わくわく保育園」に子供を預けている研究者がいます。また、寄附講座の教授も女性でしたし、21世紀COEの特任教授も女性で、2人とも今では別の大学、研究所で頑張っています。私自身は、女性、男性を全く区別していません。

しかし、もう5年前のことですが、共同研究をしている女性医師から、いつ子供を産んだらいいでしょうかという質問を受けました。このように、現実には出産、子育てが女性にのみ重くのしかかっていることは間違いのないところだと思います。その意味から、女性は自分の権利(産前産後休暇、育児休暇など)を主張すべきだと思いますし、また大学はそれをバックアップすべきだと考えています。それは女性だけでなく、介護する人でも同じです。

しかし、最終的には、その人が研究者、医師として重要な役割を持っているかは個人の普段の努力・態度によることは間違いのないところだと思います。

2020年までに学内の女性研究者の比率を20%に上げる方策について、どんな方策があったらよいとお考えですか?

私の分野では、女性研究者の比率は常勤、非常勤、大学院生トータルで、この5年間平均でおよそ50%です。だからと言って、私が女性を中心に採用したわけではありません。単に、優秀だったからです。私に言わせると、小手先の方策は女性にとってかえってマイナスになります。

例えば、国でも各委員会に女性20%枠などを設けていますが、これではかえって優秀な女性をつぶしてしまいます。その意味から、今回、国が女性研究者に限った競争的資金を配分しましたが、これを継続するといった地道な努力が必要だと思います。

女性研究者・女性医師に向けて、メッセージを頂けますでしょうか。

本学のミッションである「知と癒しの匠を創造する」は自らにも当てはまるということを、本学の全教職員、特に女性研究者・女性医師に分っていただけたらと思います。

出産や育児で休む教職員に対しては、自分の若いころはこうだったとか、自分の権利ばかり主張してなどとは言わず、日本の将来を担うのだからという大きな心で、自分の身近に、やさしく接することが大切ですし、また、出産や育児で休む教職員は、周りの方々に対する感謝の気持ちを持っていただけたらと思います。

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