出生前検査をお考えの妊婦さんとそのパートナーの方へ
ご妊娠、おめでとうございます。妊娠・出産は喜びや期待とともに、お腹の中の赤ちゃんが順調に育ってくれるか、無事に生まれてくれるかなど不安や心配なお気持ちになることもあるかと思います。
赤ちゃんが健康であってほしいと願うのは自然なことです。しかし、実際には100人の赤ちゃんがいれば、そのうち3〜5人は病気を持って生まれてくることが知られています。この「病気」には治療を必要としないものから生まれてすぐに治療が必要なものまで様々です。
出生前検査はお腹の中の赤ちゃんの状態をより正確に知るために行う検査です。妊婦健診で実施する超音波検査も赤ちゃんの成長などを確認する大切な検査で、これも広い意味では出生前検査といえます。当院ではこの超音波検査をより時間をかけて丁寧に行う専門外来を妊娠中期に実施しています(胎児スクリーニング超音波検査)。ここでは赤ちゃんの成長ぶりだけでなく、身体の構造上の問題(病気)がわかることがあります。
そのほかの出生前検査として、当院では以下のものがあります。
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非侵襲性出生前遺伝学的検査(NIPT)
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母体血清マーカー検査(クアトロテスト)
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羊水検査
上記の1と2は妊婦さんの採血検査です。「非確定的検査」と言って、赤ちゃんの病気について診断をすることはできません。それぞれ対象疾患が決まっており(NIPT:21トリソミー、18トリソミー、13トリソミー、クアトロテスト:21トリソミー、18トリソミー、神経管開存症)、お腹の中の赤ちゃんが対象疾患を持つ可能性が高そうかどうかを調べるものです。
3は子宮内まで穿刺針を挿入し、採取した羊水を使用して検査を行うものです。1、2と異なり診断ができますが、穿刺が必要であり約1/300の確率で流産のリスクがあります。
これら1〜3の検査では赤ちゃんの染色体が変化したことによって起こる体質(病気)を調べます。赤ちゃんの病気にはさまざまな原因がありますが、染色体の変化によるものは病気全体の1/4を占めています。また検査には実施に適した週数があります。
当院では上記1〜3の出生前検査については「遺伝子診療科」で実施しています。
遺伝子診療科では検査でわかることや検査の方法、限界などを理解していただいた上で、検査がご夫婦にとって必要かどうか、検査の結果をどのように考えていくかなどを臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーと話し合います(これを遺伝カウンセリングと言います)。話し合った結果、検査を受けない選択もできますし、赤ちゃんの病気の詳細をお知りになりたい場合は小児科医に相談することもできます。
出生前検査は全ての妊婦さんが受けなければいけない検査ではありません。赤ちゃんの病気がわかった場合、ご両親の心の準備や出産・育児の準備などができる、出生後速やかに必要な治療を導入できるといったメリットもありますが、不安や心配が生じることもあります。
当院では赤ちゃんの養育者である妊婦さんとそのパートナーが、検査について理解するだけではなく、お互いの考えや気持ちを共有しておくことが大切だと考えています。そういった場の1つとして遺伝カウンセリングを実施しています。