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「アナフィラキシー(急性アレルギー)・ショックをひきおこす未知の仕組みを発見」
−新たな診断・治療・予防法の開発へ−


 東京医科歯科大学・大学院医歯学総合研究科・免疫アレルギー学の烏山一(からすやま はじめ)教授の研究グループは、同・生命倫理研究センターならびに東京大学・大学院医学系研究科・細胞情報学の研究グループとの共同研究で、これまで知られていなかったアナフィラキシー・ショック(ペニシリン・ショックが有名)の新たな発症機構を発見しました。この研究は、文部科学省研究費補助金の支援でおこなわれたもので、その研究成果は、米国科学誌Immunityの2008年3月13日付オンライン版で発表されました。       
烏山 一 教授
本学大学院医歯学総合研究科
免疫アレルギー学分野
ポイント
  • 死に至ることもある危険な急性アレルギー反応であるアナフィラキシーをひきおこす新たな仕組みを発見しました。
  • 従来、アナフィラキシーをひきおこす主役は肥満細胞、IgE、ヒスタミンであると考えられていましたが、今回これとはまったく別に、好塩基球、IgG、血小板活性化因子死に至ることもある危険な急性アレルギー反応であるアナフィラキシーをひきおこすが主役を演じる新たな仕組みがあることがわかりました。
  • 今回の発見は、アナフィラキシー・ショックの的確な診断法、適切な治療ならびに予防法の新たな開発に役立つものと考えられます。

研究の背景

 アナフィラキシーは、食物(ピーナッツやソバ)やハチ毒、薬物(ペニシリン)などが原因(アレルゲン)となっておこる急性のアレルギー反応です。蕁麻疹(じんましん)などの皮膚症状のほか、急速に血圧低下や呼吸困難、意識障害などがおこって、生命を脅かすような危険な状態(アナフィラキシー・ショック)に陥ってしまうことがあるので、迅速な診断と治療が必要です。従来、アナフィラキシーは、アレルゲンが抗体の一種であるIgEに結合して、それにより活性化した肥満細胞からヒスタミンが分泌されることでひきおこされると考えられてきました。しかし、IgEや肥満細胞がいない動物でもアナフィラキシーがおこることから、まったく別の仕組みがあるのではと予想されていましたが、その実体は不明でした。


研究成果の概要

 今回の研究によって、IgEとは異なる種類の抗体であるIgGによってもアナフィラキシーがひきおこされ、しかもその場合、アレルゲンの刺激によって活性化するのは肥満細胞ではなく、血液中を流れる好塩基球と呼ばれる細胞であることをつきとめました。実験動物で、あらかじめ好塩基球を取り除いておくと、アナフィラキシーによるショック死を防ぐことができました。好塩基球は、血液中の白血球のわずか0.5%を占めるに過ぎない最少細胞集団ですが、アレルゲンによって活性化すると、ヒスタミンの1,000倍以上の非常に強い作用をもつ物質(血小板活性化因子)を放出して、アナフィラキシー・ショックをひきおこすことがわかりました。すなわち、従来から知られていた肥満細胞・IgE・ヒスタミンが関与するアナフィラキシー発症機構とは全く別に、好塩基球・IgG・血小板活性化因子が主役を演じる新たな発症機構が存在することが明らかとなりました。
 これまで知られていなかったアナフィラキシーの仕組みが明らかになったことで、アナフィラキシー・ショックの新たな診断・治療・予防法の開発が進むものと期待されます。


問い合わせ先

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
免疫アレルギー学分野
烏山 一 (からすやま はじめ)
TEL 03-5803-5162
e-mail: karasuyama.mbch@tmd.ac.jp
研究室ホームページ http://www.tmd.ac.jp/med/mbch/Immunology


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