left
 
 
「日本におけるバイオテクノロジー分野の基本特許の寿命は劇的に短い」


 東京医科歯科大学知的財産本部の橋本一憲特任准教授らのグループは、日米欧三極におけるバイオテクノロジー分野のパイオニア発明に対する特許保護の現状の研究を行った結果、日本では、特許庁による厳格な審査により、欧米と比較して審査期間が長期化し、特許の寿命(存続期間)が顕著に短くなっていることを明らかにしました。また、この厳格な審査は、欧米と比較して、より大きな権利範囲の減縮を導いていることをも見出しました。このような状況は、バイオテクノロジー企業の国際ビジネスに影響を与えるばかりか、新規発明公開の代償として一定期間の特許保護を与える特許制度の根幹をも緩めることから、新たな特許戦略の構築の必要性と行政的・立法的措置の必要性の提言を行いました。本研究は、本学における評価担当技術員制度(本学学生を知財本部で雇用し知財のOJT教育を行うプロジェクト:文部科学省科学技術振興調整費「ライフサイエンス分野知財評価員養成制度」による支援)の一環として行われたものです。この研究成果は米国の科学雑誌Nature Biotechnologyの5月号に掲載されました。


研究成果の背景

 バイオビジネスのグローバル化の進展とともに、バイオ企業においては、国際的に特許を取得する必要性が高まってきており、このため各国における特許保護政策の国際的な調和が叫ばれています。この要請は、特許が、バイオ企業のビジネスを支えるパイオニア発明を対象としている場合、より強いものとなります。しかしながら、各国におけるバイオテクノロジー分野のパイオニア発明の特許保護の現状は、これまで十分に研究されてきませんでした。そこで、橋本一憲特任准教授らのグループは、日米欧三極におけるパイオニア発明に対する特許保護の現状を、DNAチップ技術を中心に、種々のカテゴリーのバイオテクノロジー技術に関して、調査・分析しました。


研究成果の概要

 オックスフォードジーンテクノロジー(OGT)社とアフィメトリックス社のDNAチップに関する基本特許は、欧米では既に1990年代半ばに付与されており、DNAチップ業界を支配してきました。一方、日本では、DNAチップの発明から18年もの歳月を費やして、近年ようやく両社の特許が成立しました。このため日本における両社の基本特許の存続期間は、欧米に比して半分以下(26%〜42%)になっていました。両特許の出願経過の詳細な分析を行ったところ、特許期間の短縮化の主要な原因が、日本特許庁による厳格な審査にあることが判明しました。この厳格な審査により、特許成立までに特許庁と出願人との間で激しい攻防が繰り広げられ、審査期間の長期化と権利範囲の減縮がもたらされていました。さらに、日米欧三極で特許が成立している、組み換えタンパク質生産技術、アンチセンス技術、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術、遺伝子導入技術、リボザイム技術に関するパイオニア発明について調査を進めた結果、これらのパイオニア発明においても、DNAチップの場合と同様に、欧米と比較して、日本で特許審査が長期化し、特許期間が短縮化されていることが判明しました。このような状況は、バイオテクノロジー企業の国際ビジネスに影響を与えるばかりか、新規発明公開の代償として一定期間の特許保護を与える特許制度の根幹をも緩めることになります。このため、バイオテクノロジー分野におけるパイオニア発明の特許保護方針の国際調和や審査期間を短縮化するための措置の策定、さらには審査期間が長期化した場合における特許期間の延長制度の導入などの行政的・立法的措置を採ることが急務であると言えます。本研究成果は、バイオテクノロジー分野における特許保護政策の適正化や特許出願人の国際特許戦略の構築に貢献しうるものと考えられます。


問い合わせ先

東京医科歯科大学知的財産本部
橋本 一憲 (はしもと かずのり)
e-mail: hashimoto.tlo@tmd.ac.jp
TEL 03-5803-4730 FAX 03-5803-0285
ホームページ http://www.tmd.ac.jp/tlo/


right
space
copyrightこのサイトについてお問い合わせプライバシーポリシー
東京医科歯科大学
e_name Sitemap
   
go to english page
retop 大学案内 教育研究組織 附属病院 採用・公募 学内専用情報
spacer