東京医科歯科大学の大野助教授(眼科学)と森田教授(分子細胞機能学)が中心となって進めてきた共同研究成果について、9月14日(水)、本学特別講堂において記者会見を行い、「脳のアルツハイマー病と目の加齢黄斑変性症の発症には共通のメカニズムがあり,その原因がアミロイドbという物質であることを世界で初めて明らかにした」と発表しました。 大野 京子 助教授本学大学院医歯学総合研究科眼科学分野 森田 育男 教授本学大学院医歯学総合研究科分子細胞機能学分野 ポイント 高齢者の主な失明原因である難病(欧米では成人の失明原因の第1位),加齢黄斑変性症の発症機構が明らかに 脳の痴呆性疾患であるアルツハイマー病と,目の疾患である加齢黄斑変性症に意外な共通の発症メカニズム 有効な治療方法のない加齢黄斑変性症の予防法や治療法開発への大きな一歩 研究成果の概要 網膜は,ものをみるときにカメラのフィルムのような重要な役割をする組織ですが,この網膜のなかでも最も重要な部分が,ものをみる中心となる黄斑(おうはん)です。加齢黄斑変性症はこの黄斑に生じる疾患で,先進国の高齢者の主な失明原因であり(欧米では原因の1位),厚生労働省により特定疾患に指定されています。米国での患者数は約200万人と言われており,わが国でも50歳以上の0.8%に本疾患がみられ,高齢化の進行とともに急増すると予測されています。本症には滲出型と萎縮型があり,大半を占める萎縮型には治療法はありません。滲出型にはいくつかの治療法が試みられていて,早期であれば症状の悪化を抑えられますが視力の回復を得ることは難しく,発見が遅れれば治療は更に困難になります。東京医科歯科大学では,大学院医歯学総合研究科眼科学分野大野京子助教授と同研究科分子細胞機能学分野森田育男教授および理化学研究所脳科学総合研究センター神経蛋白制御研究チーム岩田修永副チームリーダーらの共同研究により,加齢黄斑変性症の発症機構の解明さらには予防法や治療法の開発を目的に研究を進めてきました。 今回の研究では,アルツハイマー病患者の病因となる物質であるアミロイドβが加齢黄斑変性症患者の網膜にも蓄積していることに注目しました。まず視神経の新陳代謝を担っている網膜色素上皮細胞にアミロイドβを与えたところ,加齢黄斑変性症を引き起こす種々の因子が発現しました。さらにアミロイドβを蓄積するノックアウトマウスにおいて,ヒト加齢黄斑変性症に類似した網膜の異常が再現されることを見出しました。 この発見は,脳のアルツハイマー病と目の加齢黄斑変性症の発症には共通のメカニズムがあり,その原因がアミロイドβという物質であることを世界で初めて明らかにしたもので,米国の医学雑誌Journal of Clinical Investigationの10月号に発表されます。この発見は,加齢黄斑変性症の予防法や治療法開発のための大きな手がかりとなるものです。 問い合わせ先 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 眼科学分野 大野 京子 (おおの きょうこ) TEL 03-5803-5302 FAX 03-3472-0053 e-mail: k.ohno.oph@tmd.ac.jp 研究室ホームページ http://www.tmd.ac.jp/med/oph/ 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 分子細胞機能学分野 森田 育男 (もりた いくお) TEL 03-5803-5575 FAX 03-5803-0212 e-mail: morita.cell@tmd.ac.jp 研究室ホームページ http://www.tmd.ac.jp/dent/cell/cell-J