スペイン語の指針
スペイン語といえば、スペインのことを思い浮かべる方が多いと思いますが、実は中南米・カリブの多くの国でも話されていて、むしろそちらの方に話者が多い言語です。アメリカ合衆国でも、いわゆるヒスパニックと呼ばれる人々の間でスペイン語が話されています。アメリカ大陸のスペイン語圏を「イスパノアメリカ」と呼び、イスパノアメリカとブラジルすなわちポルトガル語圏からなる「イベロアメリカ」、そこにハイチ、マルティニークなどフランス語圏を加えた「ラテンアメリカ」と区別します。
スパノアメリカの国々は、もともとこの大陸に住んでいた先住民の文化と、植民地時代の宗主国スペインをはじめとするヨーロッパ文化の混合から生まれた、複雑な文化をもった国々だと言えます。また、ヨーロッパ以外からも、奴隷として連れて来られたアフリカ系住民や、日本も含めたアジア・中東からの移民など、様々な起源をもち、なおかつ独立国としてのナショナル・アイデンティティを探る過程で、多様性に満ちた社会を形作ってきました。日本で中南米諸国がニュースになるのは、麻薬や暴力、犯罪や貧困など、悪いことばかりですが、その一方で経済的には工業化も進み、いわゆる新興国や、途上国ながらポテンシャルの高い国々として注目を集めています。
スペインについて、皆さんはヨーロッパの南西部の国とお考えでしょうし、実際その認識は正しいのですが、実はジブラルタル海峡を挟んで北アフリカと向かい合っていることからもわかるように、中東から北アフリカへと連なる、アラビア文化の影響を非常に強く受けた地域です。スペインには今でも様々なアラビア様式の建築や文化が残されていますし、スペイン語にはアラビア語起源の言葉がしばしば登場します。
一般的に、サッカーや音楽や踊りを通じてスペイン語に興味を持つ人が多いようです。他にも文化面では、西洋近代小説の先駆けともいわれる『ドン・キホーテ』を著したセルバンテスや、2010年にノーベル文学賞を受賞したバルガス・ジョサ、そして20世紀後半を代表する世界的ベストセラーといっても過言ではない『百年の孤独』のガルシア・マルケスなど、優れた文学作品も数多く生み出されています。映画界でも多くの名作、そして名監督・名俳優を輩出しています。ハリウッドでも活躍しているペネロペ・クルスやハビエル・バルデムといったスペインの俳優は、名前を聞いてぴんと来なくても、皆さん顔を見ればああこの人か、と見覚えがあるかもかもしれません。ちなみに2009年のアカデミー賞外国語映画賞を受賞したのは、アルゼンチン映画『瞳の奥の秘密』でした。
大学でスペイン語を勉強しておくことは、もし皆さんが将来スペイン語圏、あるいはスペイン語話者の人々と交流を持つことになった場合、重要な基礎知識となってくれることでしょう。東京医科歯科大学は南米チリに「東京医科歯科大学ラテンアメリカ共同研究拠点」を設立するなど、ラテンアメリカとの関係を強めていますし、日本国内の医療現場でも、日系人をはじめとするスペイン語話者の人々と、関係性を築いていくための一助となるかもしれません。
授業方針は、文法的には動詞の活用(直接法の人称変化)を一通り学び、日本語や英語とは異なるスペイン語の構文的特徴を理解してもらうことを一番の目標とします。それと同時に、ごく短く簡単な文章や会話、テレビ番組や映画のセリフ、あるいはうたの歌詞の聞き取りなどを行っていきたいと思っています。スペイン語は1年次に週2コマが必修となっています。スペイン語a/cで文法を学ぶのと並行して、スペイン語b/dでは興味に応じて、応用あるいは文法を補完するような授業を行っていきます。
開講科目
教養部ホームページ「学生生活」の中にある「教務関係」内のシラバスを参照して下さい。
http://www.tmd.ac.jp/artsci/campuslife.html
学習の手引き
- 辞書
基本的に小さいものでもいいので、必ず買って、授業に持参してください。
小型のものでは、小学館『プログレッシブスペイン語辞典』、『ポケットプログレッシブ辞典』など。白水社からも二点ほど出ていますが、私の好みは図解入りの『パスポート初級スペイン語辞典』です(ただしちょっとやさしめ)。中型の辞書では小学館『西和中辞典』がお勧めですが、白水社『現代スペイン語辞典』などもいいでしょう。私自身は西英のOxford Spanish Dictionaryをパソコンに入れて愛用しています。
- 『小学館西和中辞典 』 小学館
- 『クラウン和西辞典』 三省堂
- 『クラウン西和辞典』 三省堂
- 『現代スペイン語辞典』 白水社
- 『和西辞典』 白水社
- 『Oxford Spanish Dictionary』
- 『Diccionario de la lenguaespanola』 Real Academia
- 『Nueva gramatica. Manual』 Real Academia
- 『Nueva gramatica』 Real Academia
- 『Brevediccionarioetimologico』 Gomez de Silva FCE
- 『Spanish Vocabulary: An Etymological Approach』 Brodsky Univ. Texas P.
- 『Diccionario de Uso del Espanol』 Maria Moliner
- 参考書・学習書等
- 『スペイン語会話クイックレファレンス』 デルセーロ・小池 第三書館
- 『入門を終えたら接続法を使って話そう』 吉川恵美子 NHK
- 『改訂 スペイン語の入門』 瓜谷良平 白水社
- 『詳解スペイン語』 小林一宏他 上智大学出版
- 『旅の指さし会話帳 スペイン』 情報センター出版局
- 『旅の指さし会話帳 メキシコ』 情報センター出版局
- 『旅の指さし会話帳 JAPAN スペイン語』 情報センター出版局
- 『暮らしの日本語指さし会話帳スペイン語』 情報センター出版局
- 『旅の指さし会話帳 アルゼンチン』 情報センター出版局
- 『旅の指さし会話帳 キューバ』 情報センター出版局
- 『旅の指さし会話帳 ペルー』 情報センター出版局
- 『暮らしの日本語指さし会話帳ポルトガル語』 情報センター出版局
- 『旅の指さし会話帳 ブラジル』 情報センター出版局
- 『Viajeros』 東大出版会
- 『スペイン語作文の方法 構文編』 小池和良 第三書館
- 『スペイン語作文の方法 表現編』 小池和良 第三書館
- 『中級スペイン語文法』 中岡省治 白水社
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