1 精神疾患の病態解明と新規治療法の開発

 ・GABAの脳形成因子としての役割

神経伝達物質はその受容体に結合することで、脳や中枢神経を構成する神経細胞を興奮または抑制します。脳がその機能を正常に発揮するためにはこの働きが精密に保たれることが重要であることが知られていますが、近年ではさらに、神経伝達物質の働きは成熟した脳の機能の制御だけではなく、脳が成熟する過程においても重要であることが明らかになってきました。わたしたちは現在、ガンマアミノ酪酸(GABA)と呼ばれる神経伝達物質が脳の発達・形成に果たす役割について解析を試みています。
GABAは、脳の発達に伴ってその機能が興奮性から抑制性へ変化するという興味深い特性を持ち、GABAに対する分解酵素を欠損している患者さんが重篤な発達異常を示すことから、GABAもまた脳の形成過程において重要な働きを持っている可能性が考えられています。現在わたしたちはこのGABAが過剰になるモデルとして、GABAの細胞外濃度を調節するタンパク質であるGABA輸送体を欠損させた遺伝子組換えマウスを作製して解析をすることを試みています。この研究は、脳形成因子としてのGABAの役割について新しい発見が期待される他に、自閉症や統合失調症などの脳の発達の異常が原因のひとつだと考えられている疾患のメカニズムの解明や治療法の開発に役立つことが期待されています。

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