感染予防

感染予防と口腔ケア~新型コロナウイルス感染症を遠ざけるポイント

2021.01.20

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第3波では、家庭内感染の割合が多くなり第2波のときの約2倍と言われています。また感染者数の増大に伴い、自宅療養者数も急激に増えています。こうした事情から、現在いかにして家庭内感染を防ぐかがコロナ対策での課題のひとつとなっていますが、自宅で口腔ケアするとき、感染拡大防止のためにどのようなことに気を付ければよいでしょうか。

回答:東京医科歯科大学歯学部附属病院

口腔ケアの必要性

まず、口腔ケアはCOVID-19予防に有効であることを強調したいと思います。口の中の細菌、特に歯周病原細菌を減らすことで、かぜやインフルエンザのウイルスが細胞へ付着することを阻害できることが明らかになっています。COVID-19の原因であるSARS-CoV-2ウイルスもインフルエンザウイルスと同じ付着様式であるため、適切な口腔ケアはCOVID-19予防に有効です。

また、口腔ケアは新型コロナウイルスによる肺炎の重症化の予防にもなります。新型コロナウイルスによる肺炎は、細菌性肺炎との合併で重症化することが指摘されています。特に高齢になるとお口の働きが悪くなる口腔機能低下症という状態になる方もいます。そうなると知らないうちに唾液を誤嚥してしまう不顕性誤嚥が起きやすく誤嚥性肺炎のリスクが高くなります。一方、要介護高齢者に対し口腔ケアを行ったところ誤嚥性肺炎にかかるリスクを減らすことができたという研究もあります(米山武義,鴨田博司,老年歯学16-13,2001)。ですので、口腔ケアで口の中を清潔に保つことはCOVID-19重症化の予防に役に立つと考えられます。

家庭内感染を防ぐには?

上記のように口腔ケアはCOVID-19対策として有用なものですが、歯磨きの実施には注意が必要です。というのは、COVID-19に感染すると唾液中にもウイルスが混入するからです。歯磨き時はどうしても、自分の唾液に触れたり、唾液の飛沫を飛ばしてしまいます。昼食後、複数人が職場の洗面所に集まり歯を磨いたことがきっかけで発生したと思われるクラスターも報告されています。

家庭内感染を防ぐためにも「3密や飛沫を避ける」というCOVID-19対策の原則は、自宅での口腔ケア実施時も徹底しましょう。具体的には、洗面所は換気を良くし一人ずつ歯を磨くことですが、歯を磨くとき歯ブラシを持たない方の手で口を覆ったり、口の中のものを吐き出すときに顔をシンクに近づけて低い位置で行うことが飛沫拡散防止になります。飛んでしまった飛沫については、アルコールを含むウエットティッシュで鏡やシンク周りを拭いておけば、次の人も安心して使用できます。使用後の歯ブラシやコップなども他の家族のものと接触しないように個別にしまっておきましょう。口を拭くタオル、歯磨き粉も一人ひとり用意しましょう。取り外し式の義歯は寝ているときは外していると思います。このときも、他の家族の手に触れないよう配慮することをお勧めします。コロナで落ち着かない昨今、せっかく我が家は家族水入らずでくつろげる場所なのに・・・とうんざりに思われるかもしれません。しかし、かけがえのないくつろげる場所だからこそコロナが落ち着くまでは万全な体制で守りを固めましょう。

マスクで虫歯が増える?

COVID-19拡大以降、マスク姿はすっかり日常になりましたが、そのマスクの弊害としてむし歯になったり、口臭が悪化したりするのではないか、などのことが話題になっているようです。実際そのようなことは起こるのでしょうか。口の中の唾液量が減り乾燥するとむし歯、口臭の原因になりますが、マスクで口を覆うことは逆に口の中の湿度を保つことに役立つでしょうから、マスクそのものがむし歯や口臭の原因になるというのは根拠がありません。しかし、with コロナでの生活様式により口の中が乾燥し易くなっている可能性は考えられます。例えば、マスクをつけ感染に警戒している状況では意識しないと水を飲む機会が減るかもしれません。また、三密を避けることで人と話す機会が減少すると口の回りの筋肉が衰えることが考えられます。このような口腔機能の低下は唾液分泌の減少を招くものです。さらに、ストレスでも唾液の分泌量が減ることがわかっていますが、with コロナの先の見えない状況でストレスを感じ、唾液の分泌量が少なくなっている人が増えているのかもしれません。感染拡大により歯科受診を控えざるをえない状況もお口の状態に悪影響を与えているでしょう。

COVID-19から身を守りつつお口の健康も守る。そのためにも、マスクはしっかり着用、口が乾いたなと思ったらこまめに水分補給、そして口腔ケア。以上を徹底してコロナ禍を乗り切りましょう。

田中雄二郎学長メッセージ

新型コロナウイルス感染に正面から取り組む
―大学基金へのご協力のお願い―

全世界が新型コロナウイルス感染という危機に直面しています。これは世界の4 人に1 人が感染し、5000 万人が死亡したスペイン風邪以来の大規模パンデミックとも言われており、大きく世の中を変えることになると思います。
大学自体も、卒業式、入学式が相次いで中止となり、教育はe-ラーニング、研究もコロナウイルス感染関連以外は最低限となり危機的状況です。
もともと、本学は「知と癒しの匠みを創造し人々の幸福に貢献する」という理念を掲げています。
この理念に基づき、東京に位置する医系国立大学としてこの危機に正面から取り組むのは使命だと考えて行動を開始しました。

新型コロナウイルス感染克服を最優先に

新型コロナウイルス感染克服への取り組みを最優先課題としました。
大学病院は高度先進医療を優先すべきだという議論もあります。しかし感染爆発の状況に至れば、そのような姿勢は社会的に許容されないだろうと考え、3月初旬から準備を開始しました。
診療面では、医学部附属病院がこの前面に立ち、集中治療室全体を陰圧化するなどの改装や、病院前に検体採取用テントを設置するなどのハード面の改修を行いました。また、新たに20台の人工呼吸器を購入し、ECMO(人工肺)5台、人工呼吸器82台の体制を敷いて多くの重症患者様の治療に当たっています。
ソフト面では、多くの研究者たちの応援のもと院内感染ゼロを維持するため入院患者様およびコロナウイルス対応職員の院内PCR検査体制を実施しています。また、コロナウイルス感染拡大防止の観点から医学部および歯学部附属病院の通常診療も大幅縮小し、患者様にはご迷惑をおかけしつつ、そのスタッフたちがコロナウイルス対応スタッフの応援に回っています。

このような本学の取り組みの結果、全国でも有数の新型コロナウイルス感染者の治療に当たることができ、その社会貢献を評価して頂き、防護服の寄附や弁当の差し入れなどを頂戴することが出来ました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

しかしながら、病院の改装、医療機器、防護服、検査試薬など諸費用は莫大なものになっており、より良い診療、教育、研究を維持向上させるために、皆様のご支援を重ねてお願い申し上げる次第です。お寄せ頂いたご厚意には必ず報いることが出来ますよう使途も明らかとして、一層の社会貢献に努めて参りたいと思います。
宜しく、ご理解、ご支援のほどお願い申し上げます。

東京医科歯科大学 学長 田中雄二郎

新型コロナウイルス対策基金にご協力ください

東京医科歯科大学は、新型コロナウイルス感染症に正面から立ち向かっています。そのため、病院の改装、医療機器、防護服、検査試薬など諸費用は莫大なものになっており、より良い診療、教育、研究を維持向上させるためには、皆様のご支援が必要です。お寄せ頂いたご厚意には必ず報いるよう、一層の社会貢献に努めて参りたいと思います。宜しく、ご理解、ご支援のほどお願い申し上げます。