ケミカルバイオロジーは化学と生命科学の融合によるポストゲノム時代の新しい研究領域で、ゲノム科学などと同様に21世紀の生命科学の基盤となる可能性を有している。また、ケミカルバイオロジーは有機化合物を基礎として生命科学研究を行うことから、治療薬や診断薬など有用な化合物開発に直結する産業政策上の重要領域であるともいえる。
それゆえ、米国ではバイオインフォマティクスや構造生物学などとともにNIHの将来戦略5本柱の1つとして推進され、ケミカルゲノミクスセンター(NIHCG)を中心にケミカルゲノミクスプロジェクトが2004年より開始された。ヨーロッパや中国でも化合物バンクやケミカルゲノミクスセンターが設立され、ケミカルバイオロジーに関する研究基盤の整備が進められている。また、ケミカルバイオロジー分野の研究者間の情報交換も活発化しており、学会設立、専門学術雑誌の発刊などが急速に進展しつつある。
これら海外の情勢に比べ、我が国では一部の研究者を除いてケミカルバイオロジーに関する理解が遅れ、学術交流の中心となるべき全国規模の学会・研究会も存在しなかった。このような状況を憂え、内外のケミカルバイオロジーに関する情報交換や学術交流を活性化するため、日本ケミカルバイオロジー研究会(Japanese Society for Chemical Biology)が、2005年4月21日創立された。今後は、我が国のケミカルバイオロジー研究の振興のため、年会や国際シンポジウムを開催していく予定である。 |