研究所案内


プロジェクト概要

  •  ・グランドデザイン
  •  ・背景
  •  ・バイアブルマテリアルとは
  •  ・期待される成果
  •  ・これまでの経緯と進捗状況

  • グランドデザイン

      生体と一体化できる新しい医療デバイスを創製するための基盤材料として「バイアブルマテリアル」を提唱し、生材研の有する技術を結集かつ組織化することで、 組織修復および臓器再構築の根源的知識獲得と基盤的開発技術の確立を行い、「バイオ・マテリアル・システム」の3要素を統合したプラットフォームを形成する。 最終的には、開発した新規デバイスのin vitro およびin vivo の評価を医学部、歯学部および医療イノベーション推進センターと連携して実施し、臨床応用に必要な情報を収集・集積化することで実用化を目指す。

    背景

    医療機器の発展および再生医療の実用化のためには、人工的に作製した組織・デバイスを生体に埋植する治療技術が今後ますます重要となる。

    既存技術では、移植されたデバイスや組織と生体とが接触する界面で起こる無秩序なタンパク質吸着・細胞粘着を制御できないため異物反応が進行し、最終的には血栓形成・肥厚化組織によるカプセル化に至る。 この現象は埋植デバイスの機能低下をもたらすだけでなく、局所炎症の慢性化・細菌浸潤等による全身性疾患を誘起することが問題である。

    具体例
    ○歯科インプラント周囲炎 ○人工血管・心臓弁の閉塞
    ○脊椎固定器具感染症   ○腹膜透析チューブからの感染


    抜本的解決のため、生体との界面におけるシームレスな恒久的融合層の形成が不可欠である。それを可能にする過渡的媒介層を有する新素材を創製するために生物学と工学を融合した新しい材料「バイアブルマテリアル」を提唱する。
    本プロジェクトでは、これまでに開発が進んでいる「バイアブルマテリアル」を学術領域に発展させ、新しい医療デバイスの創出を目指す。

バイアブルマテリアルとは

「バイアブルマテリアル」とは、生体と長期に共存し、生体機能を代行し、情報を収集し、疾病を予防できる、新しい概念に基づく材料である。
従来の医療材料は、生体に埋植すると生体と接触する界面で無秩序なタンパク質吸着や細胞接着が起こり、炎症反応が進行する。最終的には、線維性の隔離 層(カプセル層)が形成され、医療材料と生体組織の間に明確な界面が生じる。カプセル層は、血管網が欠損しているため、内部に感染が生じても排除することができず、局所炎症の慢性化、最近浸潤などによる全身疾患を誘起すること が懸念されている。

一方、バイアブルマテリアルは、生体と接触する界面が精密設計されており、タンパク質吸着や細胞接着を分子レベルで制御可能である。これにより、炎症反応をコントロールし、過度の線維性組織層の形成を抑制する。また、血管組織を再構築しつつ、恒久的融合層を形成することで生体組織と一体化される。

期待される成果

バイアブルマテリアル研究の進展により、医療・歯科医療を支える材料技術の底上げが可能であり、治療工学のみならず、これに関連する多様な分野の研究を促進することができる。生体組織への人工物の移植がストレスなく実施できるのみならず、再生・治癒・成長する人工組織の提供が可能となり、さらにセンサーを複合化することで生体からの情報を高感度で継続的に取得すること、またその情報をフィードバックして生体機能を制御する新しい医療デバイスの開発も期待される。

これまでの経緯と進捗状況