プログラム概要

→ 組織体系

事業の概要

平成19年度からの「がんプロフェッショナル養成プラン」により、がん専門外科医を含めてがん専門医療人については中期的には確保の目処が立ったものと考えられる。しかし、養成された人材が医療現場において効果的・効率的にがん医療に貢献するためには、技術応用についての管理が必要と考えられる。特に、がん治療についての質向上および質保障の枠組みが提供されることが望まれる。このため、がん治療としての各種低侵襲がん治療方法の習得、がん臨床研究の推進とその質向上に貢献できるがん専門薬剤師の養成、これに加えてがん治療に必要な機器の開発に従事出来る人材養成を図ることとした。本プランは従来の養成プランの延長として策定されているため、従来の養成プログラムは継続し、その発展系として大学院プログラムの中でさらに追加して習得できるよう設計されている。

事業実施の必要性(課題及び対応策)

<課題>
全国的に見れば、がん専門医療従事者の養成数は目標を達成したものと考えられるが、その質はいまだ十分なものではない。すなわち、質から量への移行が必要と考えられる。

① 3D内視鏡、IMRT・定位照射、レーザー気管支鏡などの先端的治療技術の導入による低侵襲がん治療(低侵襲の外科治療、放射線治療、光力学的治療)を習得するためには単にがん専門医だけでなく、綿密な研修プログラムが必要である。
② 質の高いがん化学療法の実現には先進的な教育を受けたがん専門薬剤師の関与が不可欠である。
③ がん治療の質を評価すべき臨床研究の専門教育を受けた人材も不足しており、得られたエビデンスの実践応用についても十分な教育がなされてはいない。
④ がん地域連携についても、質向上のためにはツールである連携パスの策定、地域連携のコーディネート、医療資源の配置などが専門教育として必要である。
⑤ 医療従事者のスキルアップが実現できたとしても、関連する医療機器の発展が伴わなければ、質の向上は期待できないが、がんに特化した医工連携が十分に機能しているとは言い難い。
⑥ がん診療を包括的総合的に管理する専門家が不足しているため、それぞれの領域の専門性が十分に患者の治療に反映されていない。
⑦ がん登録、がん地域医療連携、がんに関する医事の事務専門家が不足しており、がん診療現場での効率および質が担保されていない。

<対応策>
① 先端的低侵襲がん治療については、早期肺癌に対する気管支鏡レーザー治療、胸腔・腹腔・後腹膜における鏡視下手術(特に3D内視鏡)、IMRT、定位照射、小線源による低侵襲放射線治療についての専門家実践教育を東京医科歯科大学および東京医科大学で行う。
② がん専門薬剤師の養成のために、東京薬科大学の6年制薬学部に併設される博士課程に養成課程を設置し、連携大学の付属病院での実地研修を行う。
③ がん治療法の開発、比較検討、がん治療へのEBM実践を実現するために、臨床研究方法論、エビデンスに基づく診療実践についての教育を東京医科歯科大学で行う。
④ がん地域医療を発展させるために、地域がん医療のネットワーク化に関する包括的な教育を秋田大学および弘前大学で行う。
⑤ がんに関連する医工連携研究者養成のため、東京工業大学の大学院にがん医工連携コースを開設し、理工系と医学系の連携で教育を行う。
⑥ 臨床腫瘍学講座を中心として総合腫瘍医の養成を、東京医科歯科大学・・・で行う。
⑦ がん診療に特化した事務職員のインテンシブ教育を、東京医科歯科大学で行う。

事業の成果及び効果(達成目標)

先端的低侵襲治療専門医および総合腫瘍医の養成は、博士課程4年の期間だけで完結するには不十分と考えられるが、基本的な技術を習得しこの領域での専門家となる修練の準備期間と位置づける。臨床研究、エビデンスに基づく診療実践の教育は、それぞれの専門領域において臨床研究の実施およびEBMの実践が可能なレベルを到達目標とする。がん地域連携は、養成終了後にがんの地域医療連携に従事できることを目標とする。がん専門薬剤師の養成は、資格取得を目的とし、病院薬剤師としてがん化学療法を担当できることを目標とする。がん医工連携研究者の養成では、がん関連機器の開発に携わる能力の取得を目標とする。
これらの成果として、がん治療(内視鏡手術、放射線治療、化学療法)の質向上、がん地域医療の質向上、がん事務業務の効率化およびがん治療機器の質向上が望める。

大学間連携の考え方(大学ごとの役割分担や連携のメリット等)

基本的ながん専門医療従事者向け教育科目は可能な限り共有する。首都圏の大学間は、単位互換のスクーリングを前提とし、秋田大学・弘前大学と東京医科歯科大学間は遠隔授業を採用する。
実地研修が必要ながん専門薬剤師養成では、連携大学の付属病院で実施する。
大学間では、他校からのコースへの養成者を優先的に受け入れることにより、グループ全体として養成コースの共有化を図る。

事業の運営体制

連携大学共有のSNSを立ち上げ、本プランに関わる全情報の共有を図る。
上記SNSとリンクしたe-learning教材の共有および利用を図る。
各大学のコーディネーターから構成される運営協議会を組織し、定期的に開催する。
各大学には、コーディネーターの下に担当者会議を組織し、運営に当たる。

事業の評価体制

各大学は毎年運営上の評価、達成度の評価を実施する。
プランとして年1回報告連絡会を開催し、全体として内部評価を行う。
運営協議会は各大学に対して改善などの助言を行うとともに、養成計画の改訂を行う。
最終年度に、外部評価を実施する。

補助期間終了後の事業継続に関する検討状況

提案する養成コースはすべて継続が必要と考えられるため、プラン終了後は別段の理由がない限り各大学の負担で事業継続するものとする。なお、大学院に属する養成コースだけでなく、付属病院の研修コースとして継続を予定しているものもある。