フランス語はほとんどの皆さんが大学に入って初めて学ぶ言語です。中学・高校で学んできた英語とはまた違ったヨーロッパ世界の言語を窓口としてより広い世界に触れていただきたいと思っています。
今日、日本の中でもフランスに関する情報は増えてきました。文学や映画、ファッションやグルメのみならず、最近ではサッカー、あるいはサルコジ大統領のメディアでのさまざまな発言でフランスを知る機会があった人もいるのではないでしょうか。
こうしたサッカーの選手たちや、また、ハンガリー系移民2世であるサルコジ大統領を見ても分かるように、フランスは純粋なフランス出身者だけによって作られている国ではありません。旧植民地であった北アフリカ(マグレブ)からの移民を多く抱えるフランスは、アフリカとも非常に近い世界です。イスラム教の問題、アフリカの貧困の問題といった問題はフランス社会と密接な関連をもち、フランスのニュースを読めば、アフリカが随分と近いことに驚かされると思います。多くのアフリカの人たちがフランス語を話しながらフランスという国に住み、そうした人たちを含んだ社会が現在のフランスの社会を形作っています。また、フランスの作家や思想家、映画人、芸術家といわれる人の中でフランス人ではない人たちが数多くいます。フランスの血がフランスを作るのではなくではなく、フランスという国に住んで、フランス語で表現する人たちがフランスを作ってきました。その中には今述べたアフリカだけではなく、東欧や、ヴェトナムやハイチ出身の人たちもいます。
もちろん、フランスの中にこうした「他者」を排斥しようとする動きがあります。選挙で、移民排斥を掲げる右翼が大幅に得票を伸ばしたこともありました。フランスもまた失業問題や犯罪等多くの国内問題を抱え、その中で、外の人を憎しみの対象とする動きは常に起こっています。
フランスも決して理想の国ではありません。しかしそうした困難を抱えながらも、多くの歴史的経験を参照しながら、今、EU統合の中でフランスは自らの進むべき道を模索しています。フランス語を学ぶことで、こうした現代世界のさまざまな困難な問題を知り、自らの関心領域を広げていっていただきたいと思います。